開放感溢れる新作をリリースしたばかりのベル&セバスチャンをサラリと復習!

まずサウンドの陽気なテクスチャーとヴォーカルの存在感がアップしたあたりに、ちょっとビックリ。それこそトレヴァー・ホーンのプロデュース参加の影響だろう。とはいえ、それでもこのバンドが持ち続ける繊細なポップさは、ドラスティックな〈変化〉とは無縁のものなんだなぁという、微妙な安心感もある。つまりベル&セバスチャンの久々のリリースとなるニュー・アルバム『Dear Catastrophe Waitress』は、デビュー作『Tigermilk』の頃から一筋たりとも変わらない穏やかなシニシズムと、ポップさへの尋常ではない求道心を、愛しく味わえる作品だ。
もちろん、表面的な〈変化〉を挙げればきりがない。たとえば、2000年の前作『Fold Your Hands Child, You Walk Like A Peasant』発表後にスチュアート・デヴィッドが脱退し、2002年のサントラ『Storytelling』発表後には男性ファンも多かったイザベル・キャンベルが脱退、反対にボブ・キルデアが新加入している。そこでも何らかのバンド内の空気変換ケミストリーが起こっているに違いないし、加えて『If You're Feeling Sinister』(97年)ぐらいまでのスチュワート・マードックの個人会社的なバンドの雰囲気が、『The Boy With The Arab Strap』(99年)以降は徐々に薄れ、メンバーたちの作曲面などでの貢献度も高まってきたという流れがある。そう考えると、細部にこだわりまくった新作『Dear Catastrophe Waitress』の音に、これまでなかったような開放感が同時に存在するのも、ものすごく自然なことに思えてくる。
少なくとも、もはや〈アコースティックの魔術師〉風の枕詞はこのバンドには似合わない。けれど、セルアウト感のあるポップ・フィールドに色目を使った大脱皮でもなければ、無理な変革志向があるわけでもない。自然に自然に、グラスゴーの空気とレコーディング地のロンドンの空気を混ぜ合わせつつ、日々の関心のありかを綴ってみせた新作だ。この天衣無縫な自然さこそ、ベル&セバスチャンらしさそのもの。ぜんぜん変わってないじゃん!とうれしく呟きつつ、この開放感は、これまでの微笑よりもずっと大きな笑顔がよく似合ったりする。スチュワート、きっと笑ってる。ガハハと。
▼ベル&セバスチャンの作品を一部紹介。