タワーレコード・ジャパンCEOであり、猛烈な日本音楽フリークでもあるキース・カフーンがお届けするコラム・コーナー。今回は日本ジャズ界の異端集団Date Cource Pentagon Royal Gardenの首謀者、菊地成孔氏にキースが迫ります。
Date Cource Pentagon Royal Garden(以下DCPRG)は、知性と感情の双方にアプローチすることができる、ジャズの新境地を切り開いたバンドだ。基本的に、彼らは10人編成(大友良英が02年12月に脱退)の大所帯からなるのだが、それをまとめ、先導しているのが、 〈スイング〉から 〈フリー〉までカテゴリーを問わずジャズを探求し続ける菊地成孔氏(sax)である。
菊地氏はバークレー音楽院で教育を受けていながら、一方で形而上学的な意味としての 〈マイルス・デイヴィス大学〉にも籍を置いていたという、特異な経歴の持ち主。つまり彼は、ただ過去に遡るだけでなく、エスニックかつファンキーで、場合によってはカオス的な音楽をも許容することによって、新しい活力を生み出そうとする、音楽開拓の提唱者なのである。
マイルス・デイヴィス同様、伝統に固執することなく、常に革新的試みを続けるDCPRGは、典型的なジャズファン達に許容されるというよりは、むしろジャズ以外の音楽をメインに聴いているリスナーたちから根強い支持を受けている。実際ジャズ・ファンの中には、彼らを近年急成長を見せている 〈ノンジャンル系〉のカテゴリーといっしょくたにしてしまっている人がいるようだ。このカテゴリーには、Rovo、Redrum、Mono、Blast Head、phat、東京ザヴィヌルバッハなどが当てはめられるが、実はその中の東京ザヴィヌルバッハは菊地氏のもう一つのユニットでもあるのだ。
それでも彼自身は、自らをジャズ・ミュージシャンであると考え、DCPRGのパフォーマンスでも、周到な計算と即興を織り交ぜた、ジャズ的アプローチを多く含んだ演奏を見せてくれている。
▼ DCPRGの主な作品をご紹介