待望のアルバムを放った静かなる闘志

KAYZABRO「DS455の〈DS〉の意味は〈DabStar〉……本当のスペルは〈Dabster〉だけど、専門的にひとつのことを掘り下げていく人、っていう意味と、道楽でする人、みたいな意味もあって。ひとつのことを掘り下げるし、楽しくて趣味でやってる、俺たちのスタイルだな、って。〈Star〉は(横浜)ベイスターズだったり、星だったり……」
思えば、DS455の活動キャリアは10年以上。タイトルがDS455そのものを代弁するように、長い彼らの歩みもタイトルそのままの歩みだったようだ(ちなみに〈455〉は横浜の市外局番045と、彼らの住む鶴見の市内局番5を合わせたもの)。
KAYZABRO「常に〈よーし、やってやるぜ!〉っていうテンションで来たわけじゃないし、売れるために、リリースしやすいために、自分たちのスタイルを変えることもなかった。みんなが普通に好きな曲を聴くのと同じで、好きな曲を作って(自分たちで)やる、っていう感じで」
DJ PMX「もともと日本語ラップ自体が評価されない時期もあったわけだから、売れる売れないを気にしたことはなかったですね。ただ、好きだったから。要は仕事にしちゃうと、嫌なことも増えるじゃないですか。それがいちばん嫌なんですよ。嫌なことは……嫌だから(笑)。趣味っていう考え方だったんで」
彼ら自身は至ってマイペースで、恨み節などは一切口にしなかったが、長い間DSが活動環境に恵まれることはなかった。それは、(メディア、リスナー、ショップを含む)日本のヒップホップ・シーンが、NYから影響を受けたものを軸に動いていたからだ。DSが西海岸のスタイルにインスパイアされ、それを独自のスタイルへと昇華させてきた(音楽的にも高度な)グループであったにもかかわらず、長い間DSの音楽は黙殺されてきた。そんな彼らの初のフル・アルバム『DabStar Clique』は、新曲ももちろん収録されているが、過去の曲を録り直したものが中心となって構成されている。
DJ PMX「シングルで出してる曲もいっぱい入ってるから、アルバムっていう意識じゃない、って言ったら変だけど、いままでやってきた集大成」
KAYZABRO「過去に出したものもまた録り直したりしてて、当時それを聴いてた人にも全然違う感じになってると思うし、新しいリスナーにも新鮮だとは思う。いろんな人が楽しめる内容になったんじゃないかな。(いままでの)全部、みたいな感じなんですよ。限りなくベストに近い」
集大成的な内容となったものだからこそ、曲順や曲間など細かな部分にまでのこだわりも感じられるし、既聴感よりもさらなる心地良さが先に来る新鮮な内容だ。
DJ PMX「車で聴けて、自分が聴いて飽きのこない流れで、始まりから終わりまで流れていく感じで。曲間をマスタリングの間に何度もやり直したり、コンマ何秒とかまで悩みましたよ(笑)。『BAY SIDE RIDAZ』の流れをフル・アルバムにしたようなスタイルをイメージしてたから、録った段階から“DabStar Clique”を最初に持ってこようと思ってた」
KAYZABRO「その曲のフィーチャリングをMACCHO(OZROSAURUS)に頼んだのは、俺たちの仲間っていう意味もあって(MACCHOはもともとDS455のメンバー)。ずっといっしょにやってきたわけだし、MACCHO以外にはないな、って感じで」
過去から現在までに至るDSの歴史はもちろん、その音楽的な進化までもがわかる『DabStar Clique』。2002年にリリースされた2枚の傑作シングルもそうだったように、彼らがリラックスして焦らずに、好きなことだけを追求してきた姿勢がそのまま反映された作品といえるだろう。これはひとつの区切りでもあり、新たなスタート地点でもある。だが、過去も未来も彼らのスタンスはきっと変わらないままだ。