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第17回 ─ マライア・キャリー

どこのお宅にでもあるマライアの名作たちを、ちょっと違う角度から聴いてみましょう

連載
360°
公開
2002/12/09   14:00
更新
2002/12/12   14:13
ソース
『bounce』 238号(2002/11/25)
テキスト
文/出嶌孝次

Mariah Carey Columbia(1990)
ナラダ・マイケル・ウォルデン以下、彼の弟子スジにあたるウォルター・アファナシェフらが職人的技量で仕上げたアーバン・コンテンポラリーの残照? ここからのシングルが4曲連続で全米1位を獲得し、瞬く間にスターの座へ。徐々に熱を帯びていくデビュー曲“Vision Of Love”のゴスペル感覚が素晴らしい。

Emotions Columbia(1991)
当時旬だったクライヴィルズ&コールを起用し、エモーションズ“Best Of My Love”を焼き直した表題曲で2年目のジンクスもあっさり払拭。繊細なスロウ“Can't Let Go”はキース・スウェットの“Make It Last Forever”にそっくりだけど、ホントにイイ曲。キャロル・キングと共作した“If It's Over”も可憐。

MTV Unplugged EP Columbia(1992)
いまのところ唯一のライヴ・アルバムにして、エリック・クラプトンと並ぶ初期〈Unplugged〉の名盤。7曲を収録しており、秘蔵っ子トレイ・ロレンツをサイド・ヴォーカルに迎えたジャクソン5のカヴァー“I'll Be There”がシングル・カットされて全米1位を獲得。クワイアにはケリー・プライスの名前も!

Music Box Columbia(1993)
肌を白っぽく見せているジャケ同様、急激にカドの取れたポップ路線へと進んだ3作目。デイヴ・ホール作のヒップホップ・ソウル曲もあるが、中山美穂の珍カヴァーも懐かしい“Hero”など、やはり力点はバラードに。このアルバムがキャリア中で最大のセールスを上げている部分に彼女の幸と不幸が入り交じる。

Merry Christmas Columbia(1994)
アイドルの証明でもあるクリスマス・アルバム。前作の流れを受け継いだ歌い込み系の楽曲が並び、“Silent Night”などのスタンダードに加えてオリジナルも3曲収録。“All I Want For Christmas Is You”が日本ではTVドラマの主題歌になってヒットした。プライス姉妹が聴かせる重厚なコーラスにも注目。

Daydream Columbia(1995)
デイヴ・ホールの手による“Fantasy”やボーイズIIメンとの“One Sweet Day”などキャッチーな曲が目立つが、凝ったコーラス・アレンジが美しい“Always Be My Baby”におけるジャーメイン・デュプリの仕事ぶりはいま聴いても抜群。ベイビーフェイス作の“Melt Away”も繊細なタイムレス・メロディー。

Butterfly Columbia(1997)
華美なバラードと同時代的なR&Bテイストの曲が共存し始めた重要作。パフ・ダディによる“Honey”はもちろん、ボーン・サグズン・ハーモニーを迎え、彼らの流儀に則って囁くようなヴォーカルを聴かせる“Breakdown”、そしてミッシー・エリオットのペンによる情熱的なスロウ“Babydoll”とイイ曲が目白押し。

#1's Columbia(1998)
全米シングル・チャートでNo.1を獲得した13曲を収めたベスト・アルバム。そのほか、ブライアン・マックナイトやホイットニー・ヒューストン、ジャーメイン・デュプリとの共演曲も並べられた壮麗な一枚。ここからはブレンダK・スターのカヴァーとなる“I Still Believe”がシングル・ヒット。

Rainbow Columbia(1999)
直後に売れっ子になるDJクルー&ケン・デュロが手掛けた“Heartbreaker”2態に注目。賛否両論のジャケはともかく、この路線は絶対支持したい! スヌープを迎えたメロウな“Crybaby”など、随所に漂う西海岸フレイヴァーも重要なポイントか。フィル・コリンズ〈見つめてほしい〉の絶叫カヴァーもオモロいからOK。

Glitter Virgin(2001)
80'sカラーの遅すぎる導入と笑われたものの、キャミオ使いの“Loverboy”やシェレールのカヴァー、さらにはリック・ジェイムスまで担ぎ出すなど、ブラコン~ファンクに焦点を絞ったこの80's風味は、単に彼女の趣味でブームとは関係ない。“Funkin' For Jamaica”ネタでミスティカルが吠えまくる珍曲も最高。

Greatest Hits Columbia(2001)
2枚組のベスト・アルバム。シングル曲が網羅されているのはもちろん、ルーサー・ヴァンドロスとのデュエット“Endless Love”、〈見つめてほしい〉のウェストライフ入りヴァージョン、ベース・ミックスされた“All I Want For Christmas Is You”の3曲はここで聴くのが手っ取り早い。