――お二方って、世間的には遠い位置にいたと思われてた感じじゃないですか?
曽我部 でも、ぜんぜんそういうことなくって。音楽の大先輩だし、高校のときから聴いてたわけだから。直系ですよ。
小西 ピチカート・ファイヴをやってるころは、サニーデイ・サービスとか売れないでほしいよって思ってたけど(笑)。でも、いまは違うわけで。ただ、それって僕が一線から退いちゃってるってことなのかな? って思ったりするけど(笑)。昔はさ、誰かがいい作品を作ったりすると、嫉妬に狂うっていうかさ、<ふざけんなよ!>って感じになったんだけどさ……丸くなったんだな俺、って感じ(笑)。
曽我部 それって、DJもやってるからっていうのもありますか?
小西 うん、あるね。
曽我部 音楽を等しく聴くようになりますよね。僕も小西さんといっしょで、いいのを聴くとすごく悔しくなっちゃうというか、自分がいちばんいいものを作ってるって思ってたから。でも、DJをやるようになってからどんなものでも聴くようになった。
小西 昔さ、bounceの取材で<若いバンドを見てどう思いますか?>って訊かれて、<劇画を読んだ手塚治虫の気持ちだ>って答えたんだけどさ、自分でも笑っちゃって(笑)。俺はそんなにエライのか? って(笑)。 ――小西さんは、サニーデイ・サービスに〈ヤラレた感〉みたいなものってありました?
小西 いちばん悔しかったのは『MUGEN』っていうタイトルだね。なんで俺がつけなかったんだろうって、ホントに思った。
曽我部 僕もタイトルを思いついたとき、早く出さなきゃって思った。小西さんに先を越されたらイヤだと思って(笑)。
――お二方の音楽の聴きどころって、すごく似てませんか?
小西 あっ、似てるかも。
曽我部 僕は、音楽にはスウィートな部分が必ずあってほしいと思ってるんだけど、そういう部分とかかな。
小西 同時に、スウィートな音楽には必ずワイルドな部分があってほしいって思うクチでしょ?
曽我部 うんうん、そうそう。小西さんの書かれた本とか読んでても、すごく似てるなって思うときあるんですよね。ジャマイカ盤の音が好きだとか、自分が死んだらゲンスブールみたいに国葬とかされるのかな? されないだろうなとか。
小西 最近、自分が死んだら新聞には載るだろうなあって思うようになったの。そのとき必ず<おはロックの……>って書いてあるんじゃないかなって(笑)。
――ところで、“ギター”は曽我部恵一の作品であると同時に、小西康陽の作品でもあるんじゃないですか?
小西 そういう気持ちはあるな。僕さ、なんたってジェイムズ・テイラーのアップル盤って好きでさ。僕のレーベルから曽我部くんの作品が出るってことが、自分では勝手にそういう思い入れになってるんだよね。
曽我部 それはうれしいなあ。ホントにうれしいですよ。
小西 僕ねえ、曽我部くんのアルバムはホントに期待してる、ホント聴きたい。レディメイドってさ、最初は〈DJのためのレーベル〉って思ってたんだけどさ、曽我部くんの作品を出したりして、どんどん違う方向に行くんだろうなあって思ったりして、それはそれですごく楽しみ。曽我部くんが夏木マリさんに曲を書いたりするかも知れないわけじゃない? DJのためのレーベルじゃなくてさ、わけのわかんない(笑)レーベルになったらいいなあって思う。ホントわかんないよね。まさかこういう展開になるとは思ってなかった。
――ここからさらに拡がりをみせる予感をひしひしと感じますね。
曽我部 絶対そうだと思う。
レディメイド・インターナショナルからのリリース第1弾となったスプリット・アナログ盤
Mansfield×小西康陽 『record one』
小西康陽×Sunaga t' Experience 『record two』
Sunaga t' Experience×Mansfield 『re-cord three』