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第4回 ─ 来日したレディオ・ボーイことハーバートにニュニュッと密着!

連載
360°
公開
2001/11/25   19:00
更新
2002/09/19   15:55
ソース
『bounce』 227号(2001/11/25)
テキスト
文/大石 始

お店で買えない新作をばらまきにやってきた
レディオ・ボーイことマシュー・ハーバートを捕獲!!
どういうことなのよ、ねえマシュー先生!?

レディオ・ボーイ、吠える

 ビョークやマウス・オン・マーズの作品に参加する売れっ子クリエイター? REMからChild's View、コーネリアスのリミックスを手掛ける職人? どちらも当たってるけど、それは彼=マシュー・ハーバートの一部分でしかない。マクドナルドやGAPの紙袋を引きちぎり、TVモニターをトンカチで叩くその音を、めくるめくビートの洪水の中にすぐさまミックスしてしまうその爆笑(っていったら怒られる?)パフォーマンスで、2001年2月に続き再来日したハーバート。今回は<レディオ・ボーイ>としての来日だったが、いくつもの名義をどんなふうに使い分けてるのかしら?

 「レディオ・ボーイは僕の中でいちばん実験的なもので、ドクター・ロキットは同じ要素をダウン・ビートの中で表現するもの。で、ハーバート名義のものはハウスが出発点。最近はそこからちょっとずれて違うものになっちゃってるけど」。

<実験的>とはいっても、レディオ・ボーイはハーバートにとってまさにここ10年の総決算的ユニットだそう。口を開けばステージ、もしくはCDでのエンターテイナーっぷりとは別人のようなポリティカルな言葉がポンポンと飛び出してくる。

 「僕は音楽が大きなビジネスになってしまっていることに大きな不満をもってるんだ。アンダーグラウンドなエレクトロニック・ミュージックは、以前は企業的な音楽に対するアンチテーゼだったんだけど、それも企業的なものになってしまっている。今回はそういうものにプロテストしたかった。『The Mechanics Of Destruction』のディストリビュート方法(右図参照)そのものが今回のコンセプトのひとつなんだ」。

 同時に、「僕が願っているのは、音楽が世界情勢と対抗していること」とも話すハーバート。要するに彼はレベル・ミュージックとしてのダンス・ミュージックを取り戻そうとしているみたい。それは一聴してそのメッセージ性が伝わるレディオ・ボーイのみならず、時にはジャジー&ムーディーですらあるハーバート名義の音楽にも、オーディエンスに<なにか>を気づかせる要素が含まれている。だが、ハーバートは革命家になることよりも音楽の作り手であることを選んだ。

 「いまやってる音楽は自分を素直に表現できるスタイルで、なおかつオーディエンスとの対話によって成り立っている。たとえばギャラリーで実験音楽をやるのは簡単なことだけど、クラブの場合はみんな踊りに来てるわけで、そういうオーディエンスになにかを考えさせるのは僕にとってひとつのチャレンジなんだ。フロアのリアクションを見て僕もいろいろ考えさせられるし、ある意味バスの運転手みたいに、お客さんが車酔いしないように運転してあげているようなもんだね(笑)」。

 2002年の1月にリリースされる『Second Hands Sounds』は、過去にハーバートが手掛けたリミックスと、みずからの作品を新たにイジくり直したトラックで構成されている(含レア・トラックス!)。ブレイズからセルジュ・ゲンスブールにまで及ぶ楽曲たちは新たなるレベル魂を注入され、結局はハーバート以外のなにものでもない音に仕上がっている。……最後にどうしても気になっていたひとつの質問を投げかけた。あなたは音楽の力を信じているんですよね?

 「えっ、君は信じてないの?」

 もちろん信じてるよ。そう即答したけれど、ハーバート、君のほうがもっとピュアだ。そして君の音楽にはその力が溢れてるよ。

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