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第9回 ─ Chapter-009 FUSION CORE

連載
THE NEW ADVENTURE OF HIPHOP
公開
2001/11/25   20:00
更新
2003/04/04   14:56
ソース
『bounce』 227号(2001/11/25)
テキスト
文/高橋荒太郎

――ヒップホップ・アクトの個性を求めて、日本中を大冒険!!

心に花は咲いてるか!? 熱い漢たちの方舟がついに浮上する!!

【FUSION CORE】
95年に結成された、IQTENとMr.POWの2MCグループ。<ライム遊戯>などのコンテストで優勝して注目を集め、99年にデビュー。以降4枚のシングル・リリースを経て、今回ついに……

〈シーン〉なんて言葉を聞くこともなかった時代。そういう時代を生き抜き、現在まで活動を続けてきた2人。自分たちのイヴェントでのライヴ活動と並行しながら、いまではあまりおこなわれていない数々の〈コンテスト〉に出場し(もちろん優勝経験もある)、その名を上げてきたのがFUSION CORE。現場での活動は彼らの評価を高め、作品リリースへと繋げた。それが、99年の『コアの方舟』である。だが、それまでの活動キャリアと、周囲の彼らに対する評価からすると、リリースまでにかなり時間がかかっている。

「いろんなライヴに出て、お客さんを盛り上げるのが楽しくて。自分らの作品がCDになるなんてぜんぜん考えてなかった」(IQ TEN)。

その後、ふたたび長い時間が空いて、DEV LARGEが主宰するEL DORADOから“暴走機関車”をリリース。その前にはEL DORADOの一員として、全国ツアーも経験した。その現場でさらに鍛えぬかれ、2人はより多くのことを学んでいく。それまで、自分たちと作品に対する世間の認知を、自分たちの目の届く範囲でしか確認できなかったが、全国ツアーに出て「まったく反応がないと思ってた」(IQ TEN)

彼らは、大きな反響を目の当たりにする。なお、アルバムには、そんなライヴでの盛り上がりも収録されている。

「〈心に花は咲いてるか?〉って言ったら、ウァー!!って返ってきちゃって。“リーサル・ウェポン”も前からライヴでやってたんだけど、レスポンスがなかったから一時期やってなくて。でも、ツアーで周ってるときに、あるときから急に返ってくるようになった。だから、そういう状況がある、っていうのを(作品の中で)出したかった」(IQ TEN)。

反応を肌で感じると、作品作りに向けてのモチヴェーションも高まり、リリース間隔も短くなると思うのだが、「リリックとトラックがバシっとハマるのがなかった」(Mr. POW)というような作品への強いこだわりから、なかなか次の作品は完成しなかった。そして、“暴走機関車”から1年近くを経て、ようやくアルバム『SEXAPPEAL』が登場したのだ。アルバムには、『コアの方舟』に収録された曲や、アナログだけのリリースだった“暴走機関車”“Wake Up 2001”など過去の曲もすべて収録。そこにもまた、彼らなりのこだわりと理由が隠されている。

「新曲もあるけど、“サクラサク”を聴いてほしい。ヒップホップを聴かない人の目にも触れる場所に出られるまでになったし、『コアの方舟』を出したときに届かなかった人に聴いてほしい。俺らに抱くイメージとは違うと思うし、共感もできると思う。より大きく流通できるアルバムだからこそ絶対に入れたかった」(IQ TEN)。

彼らがそれまででいちばん〈練り〉、〈ハマった〉と自負する“サクラサク”。この曲に代表されるように、多くの曲は彼らの視点から見た、押しつけのないメッセージを感じさせ、言葉の〈意味〉よりも言葉が出てくる〈感情〉に重点を置いたような熱い曲ばかり。

「何でもないことを書くより、不満とか共感してくれるものを書いたほうがいいから。絵なら、いろんな絵をいろんなタッチで書きたい」(Mr. POW)。


99年にリリースされたFUSION COREのファースト・ミニ・アルバム『コアの方舟』(P ヴァイン)

「誰かに言うわけじゃなくて、ただ〈俺は金がない〉って言ったら、〈俺も金がない〉って、世の中には同じように思ってる人が何人かいるんですよ。それが俺らのメッセージ。昔は失恋したら音楽に励まされる状況もあったけど、今は元気になるために適当に聴く音楽が盛り上がってるので、一見そういうモノかな? と思わせておいて耳に入るところから伝えていく。家に帰って歌詞を読んで考えさせる、みたいな。他のジャンルの人の歌詞とか見ると深いと思うし。たとえばaikoとか……」(IQ TEN)。

「いいっすよねぇ(ニヤリ)」(Mr. POW)。

「(好きなのは)顔だろ?」(IQ TEN)。

「両方」(Mr.POW)。

FUSION COREは、作品を出すごとに彼らを取りまく環境が好転している。いや、むしろ環境が好転するごとに作品をリリースしているといったほうが良いのかもしれない。現在は、自分たちの手が及ばないところまで彼らのことを理解している強力な仲間──プロデューサーのNALやエンジニアもこなすKOGAWAら──も増え、人の意見にも耳を傾けるようになったという。

「やっとバンドみたいに、ほかの部分も合ってきた。ずっと俺らはヴォーカル2人のKinki Kidsみたいなもんだったんで(笑)」(IQ TEN)。

「やっとジャニーズJr.が育ってきたね」(Mr. POW)。

「“Do Or Die”はお互いの個性も出てきてるから、それはそれで活かそう、と。いままで光と陰だったら、そのふたつしかなかったけど、トラックもちょうど真ん中あたりだったし。“New Type”も、俺とPOWじゃやらない曲だったかもね」(IQ TEN)。

彼らの成長期はまだまだ続いている。

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