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第1回 ─ 南風食堂(料理ユニット)

連載
音楽部屋訪問
公開
2001/11/15   03:00
更新
2002/08/27   14:10
テキスト
文/高橋百合香

「スティールオーケストラ」を聴くと、みじん切りがいつもより早くできる気がする。

緑豆タピオカぜんざい、甘酢でしめた茗荷寿司……。調理からスタイリングまで、全て自分達で手がける南風食堂の料理は完成度が高い。
花見や花火大会、各種イベント会場へのケータリングなどで、着実にファンを増やしつつある彼女達の料理。それは、この部屋で、こんな音楽を聴きながらつくりだされる。

──料理をつくるときに、音楽をかけますか?

「はい。その場の雰囲気や体力、気分に合わせて。料理って意外と肉体労働なので、流れている曲で楽になることも多いです。ジャンルはあまり問わないけれど今日だったら、<架空の映画に登場する安食堂に流れる音楽>というそそるテーマで編曲されたカマアイナの『安食堂の夜』なんかいいですね」(三原)

「3人で作る時はかけますね。1人の時は、何もかけないで、お肉が焼ける音とか、油がはねる音とか、料理している時の音をぼーっと聞いているときもあります。エクソダス・スティールバンドの『スティール・オーケストラ』は、みじん切りがいつもより早くできるような気がします」(小岩)

──音楽にまつわる、忘れられない思い出ってありますか?

「4月に代々木公園で行われた教授(坂本龍一)のシークレットライブの時に、芝生でごろごろした事かな。料理は作らなかったけれど、南風のみんなでのんびりできた貴重な時間でした。風があって、光に包まれて音楽を聴いたしあわせな一時。<食べる>こともその流れの中にあるな、と実感できたので」(片桐)

「渋谷のビルの屋上でイベントをやった時、特製タイカレーをつくったんです。風が吹いていて、星が出ていて、夜景が遠くまで見える中、小さなラジカセから流れるチープな音でスティーヴィー・ワンダーの『リボン・イン・ザ・スカイ』が流れてきて、人知れずちょっと感動してました」(三原)

──そもそも、どうして「料理ユニット」をやろうと思ったのですか?

「食べること、おいしいものの価値観が似ている3人が集まったので」(小岩)

「世の中には<気持ちのいいこと>と<小さな偶然/奇跡>がたくさん隠れている、というのが私の実感です。で、食いしん坊的に一番身近な<食>を媒介に、それらとコミニュケートしようと思ったんです。<おいしい>を中心に、場の空気や、人の気配、色や音や匂い、偶然などが複雑にからみあって生まれてくるものに、いつも助けられてます」(三原)

──いま一番の自信作やおすすめメニュー。また、それを食べるときにかけたい 曲を教えてください。

「エリンギのスープ&バターライスのホタテ風味。パティ・スミスの『レドンド・ビーチ』」(片桐)

「ぽーぽー。沖縄のお菓子で黒糖ホットケーキのようなもの。とても簡単でおいしい。ダンプの『That skinny Motherfucker With The High Voice?』は黒糖の甘さとよく合います」(小岩)


南風食堂(nanpuu shokudo)
小岩里佳、三原寛子、片桐直美(左から)の3人によるユニット。2000年2月活動開始。味はもちろんのこと、食感、色、音、空間を含めたよりよい「食」の場のプロデュースを目指す。メニュー開発、フード提供のほか、2001年は、『気持のいいカフェブック』(学研)の出版、「カフェ展」(7月・リトルモアギャラリー)、「アートイング東京2001」(9月・セゾンアートプログラム)、「ART CAFE」(11月・キリンプラザ大阪)への参加など大活躍中。