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唯一無二の鬼才が逝去──ありがとう、高田渡

 シンガー・ソングライターの高田渡が北海道での公演中に心不全で倒れ、4月16日未明に釧路市内の病院で逝去した。享年56歳。

 岡林信康らと共に日本のフォーク界を代表する存在と目された高田は、69年に五つの赤い風船とのスプリット盤『高田渡/五つの赤い風船』でURCからデビュー。牧歌的でありながらもアイロニーとユーモアの入り交じった詞世界や、呟くような独特のヴォーカル、アメリカのルーツ・ミュージックなどを消化したサウンド志向は独特で、歌謡曲化していく〈四畳半フォーク〉勢とは一線を画するセンスで人気を集めた。71年には名曲“自転車にのって”などを収録した早川義夫プロデュースの名作『ごあいさつ』でメジャー・デビュー。ジャグ・バンドの武蔵野タンポポ団での活動を経て、代表作ともいえる『系図』(72年)、『石』(73年)などの傑作をリリースしていく。自身もライヴを盛んに行う一方、近年では自衛隊のイラク派遣に際して彼のプロテスト・ソング“自衛隊に入ろう”が、コザック前田と泉谷しげる、渋さ知らズの2組にカヴァーされ、その存在が改めてクローズアップされたのも記憶に新しい。また、2002年には彼の息子であるペダル・スティール奏者の高田漣がデビュー、2004年にはドキュメンタリー映画「タカダワタル的」が公開され、中川五郎やなぎら健壱らが参加したトリビュート・アルバム『高田渡トリビュート』もリリースされるなど、新しいリスナーを惹き付ける動きも盛んな矢先の出来事だった。

 4月28日にはその死を悼むフリー・コンサート〈自転車にのって~ありがとう、渡~〉が東京・小金井市公会堂で開かれ、全国から1,000人以上ものファンが来場。発起人である中川イサトらのほか、杉田二郎や柄本明ら親交のあった30組以上のアーティストが故人の代表曲を7時間に渡って歌い継いだ。ご冥福をお祈りします。

掲載: 2005年05月26日 18:00

更新: 2005年05月26日 18:55