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インタビュー

KLOOZ 『DECORATION』



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ここ数年で一回りも二回りも大きくなったジャパニーズ・ヒップホップ・シーン。その大海を悠々と泳ぐ一人の新星が、このKLOOZだ。「デモCDをクラブに置くだけだと広がり方に限界もあるし、クラブの現場は純粋に音楽だけが評価される場でもなくて違和感を感じていた」ことから、2010年に自身初の音源となるミックステープ『No Gravity』をフリー配信。すると、ラッパーとしての環境が一変する。その後も数々の客演仕事に加え、映像作家の大月壮とのプロジェクト〈KLOOZ MOVIE DAY(KMD)〉を立ち上げて定期的に映像付きで新曲を配信するなど、革新的な活動で話題を広めてきた。そんなKLOOZがファースト・アルバムの発表の場に選んだのは、彼の活動を初期から支えてきたKEN THE 390主宰のレーベル、DREAM BOYだ。

「メジャーのレコード会社とも話したんですが、スピード感が合わなくて。〈まずは4枚シングルを出してから、2年後にアルバムね〉なんて言われて、〈えっ!〉みたいな。DREAM BOYはライヴ・イヴェントもすごくしっかりしてるし、自分のスタンスに合うなと。あと、レーベルがいかに自分に対して愛を持って接してくれるか、やっぱりそこが大切だなと思って、KENさんに相談したんです」。

こうして、アルバム『DECORATION』の制作がスタートする。なかでも、昨年先行でリリースした〈Dr.K〉ことKREVAのプロデュースによるシングル“It's My Turn”は、本作のハイライトだ。

「(KREVAとのレコーディングは)やっぱり勉強になった。あれだけのキャリアを積んでるプロの先輩だから、ビートの捉え方だったりレコーディングに対する姿勢を学びましたね。あの曲を録ってから、アルバム制作は完全に“It's My Turn”が中心になったし、クレさんとの作業を経て音楽に対しての意識も上がりました」。

KREVAの他にも、ゲストMCにはKEN THE 390やAKLO、SKY-HI(AAA)、BAN(HOOLIGANS)らかねてより親交の厚い面々の名前が連なる。

「仲間と共に作った感じですね。初めは自分の友達と作りたいなという思いがあって。フッド(地元)感じゃないですけど、そういうのがすごくヒップホップだなと思ってるんです」。

そして、アルバムを聴いて何より目立つのは、KLOOZのリズミカルなラップ・スキル。幅広く好まれるであろうキャッチーさがありながら、もちろんコアなヒップホップ・ファンも納得させるものだ。

「キャッチーさのバランスをどう取るか、という点はすごく大事にしました。例えば“Ride On Me”にはビッグ・ショーンとか固有名詞も出して、普段USのヒップホップを聴いているリスナーも楽しめるようにしたし、“Blossom”はヒップホップらしさにこだわるよりも、爽やかさを出すようにした。でもライミングはしっかり、というこだわりはあります。(キャッチーさを出すために)曲によっては歌っているフックもあるし、そこは自分にとって大きなチャレンジでした」。

タイトル通りに彼のラップを〈デコレート〉するプロデューサー陣もまた多彩だ。Otowa(LBとOtowa)にLil'諭吉、HABANERO POSSE、Yasterizeら、KLOOZ同様にここ数年で頭角を現してきたフレッシュなビートの作り手が参加。各々に楽曲のテーマを伝えたうえで作られているというだけあり、「自分の表現したい色がしっかりと反映された」トラックになったとか。

「ゲストやプロデューサーを呼んで色付け=デコレーションしていった作品。ネガティヴな言葉は極力避けて、ポジティヴな気持ちが伝わるようにしました。ヒップホップへの入り口としてもキャッチーな作品に仕上がってるから、普段ヒップホップを聴かない人にも聴いてもらいたいですね」。



PROFILE/KLOOZ


84年生まれ、埼玉出身のラッパー。2005年にサイコロ一家の一員として本格的に活動を開始。2009年頃からソロでの動きが目立ちはじめ、同年の『CONCRETE GREEN 10』などへ参加。2010年にミックステープ『No Gravity』をフリー配信。その後、映像作家・大月壮と立ち上げた〈KLOOZ MOVIE DAY〉も注目を集める。以降の客演仕事はAKLOやDIORI a.k.a. D-ORIGINU、SKY-HIらの作品に加え、2012年のKREVA“OH YEAH”の特典CDに収められた“PROPS”へフィーチャーされる。これをきっかけに、同年の初シングル“It's My Turn”をKREVAがプロデュースしたことも話題となるなか、ファースト・アルバム『DECORATION』(DREAM BOY)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年02月21日 19:00

更新: 2013年02月21日 19:00

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/渡辺志保