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インタビュー

LONG REVIEW――LUNKHEAD 『ENTRANCE 2 BEST OF LUNKHEAD 2009~2012』



じたばたし続けるバンドの歩み



LUNKHEAD

このアルバムのなかにははっきりとした分水嶺がある。11曲目“WORLD IS MINE”と12曲目“螺旋”の間で、つまりドラマーが石川龍から桜井雄一へと交代した時期のことだ。それはリズムの変化からもあきらかで、ひたすらナマの情熱を叩き付けてバンドをけしかけ、同時にダンサブルなリズムやポップな感覚も併せ持っていた龍のドラムと、ヘヴィーでエモーショナルなギター・ロックに必要なスピード、パワー、テクニックを兼ね備え、バンドをグイグイと後押ししてゆく桜井のドラムとでは、楽曲における役割がかなり違う。サウンドのアプローチとしても、ピアノ、エフェクティヴなギター、打ち込みなどを駆使していた時期と、シンプルでタイトなアンサンブルに回帰した時期とにはっきり分けることができる。

にも関わらず、全体を通して聴くと〈やっぱりLUNKHEADだな〉という変わらなさが強く印象に残るのが不思議なところで、それがつまりオリジナリティーということなのだろう。独特の粘っこい情熱的な歌い回しと、よく聴くと意外なほど端正で豊かなメロディー、そして〈いま、ここで生きている実感〉を執拗に検証し続ける歌詞の世界。“素晴らしい世界”では喪失感を、“ぐるぐる”では自問自答の奈落を、“スモールワールド”では2人が出会えた奇跡を、“果てしなく白に近づきたい青”では〈心のままに生きていけるように〉という願いを。常にその時のリアルを歌にし、じたばたし続けながらも必死で生きてきたLUNKHEADの歩みが、この19曲のなかにはしっかりと刻み込まれている。

〈自分はなぜ生きているんだろう?〉というような、青臭いことを歌うアーティストは〈いつまでそんなこと歌ってるんだ?〉といった揶揄にさらされることもあるが、LUNKHEADならば〈死ぬまでだよ〉と答えるだろう。たぶん、ジタバタし続けることのなかにしか生きる実感はない――昔もいまも、そして未来においても、彼らの放つメッセージは明確だ。


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掲載: 2013年01月23日 18:00

更新: 2013年01月23日 18:00

文/宮本英夫