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インタビュー

GOING UNDER GROUND 『Roots & Routes』



4人それぞれのエネルギーとポテンシャルを増し、バンドの根っこにある魅力=自分たちらしさをカラフルに映し出したニュー・アルバム!



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ヒダカトオルをプロデューサーに迎え、きらめくポップセンスをスピード感溢れるサウンドに乗せて開花させたアルバム『稲川くん』が1年7か月前。バンドはそのまま快調に突っ走る……と思いきや、その後に完成させたニュー・アルバムをゼロから作り直すという緊急事態に直面していた。GOING UNDER GROUNDにいったい何があったのか?

「出来は悪くはなかったんだけど、これがいまオレたちのやるべきことなのか?と思っちゃったんですよ。GOING UNDER GROUNDの本質をすべて伝えるには、あと10年ぐらいやらないとみんなに伝わらないなと思ってるんですけど、結論を急ぎすぎたというか、これでは賞味期限が短い気がしたんですよね」(松本素生、ヴォーカル/ギター:以下同)。

かくして、予定されていた収録曲の3分の2を入れ替え、コンセプトも新たに作り上げたのが『Roots & Routes』。タイトルはドラムスの丈さんこと河野丈洋の命名で、彼の作詞作曲ナンバーが半数を占めるのもバンド史上初めてのことだ。

「パッと聴き、僕か丈さんかどっちの曲かわからないでしょ? 前は〈丈さんの曲だから〉という心構えで丈さんの曲を歌ってたんだけど、今回は〈これを歌わずにはいられない〉と思わされて。肩の荷が下りたというか、もう僕だけが看板を背負わなくていい、本当の意味でバンドになったと思いましたね」。

タイトルを意訳すれば〈これまで辿ってきた過去とこれから進んで行く未来への道〉になる。メジャー・レーベルからのリリースではあるが、バンドのマネージメントはみずからが管理する、いわばインディペンデント。オリジナル・メンバーの伊藤洋一が脱退した3年前に「一回バンドが終わった感覚がある」と言うなかで、残った4人はバンドのアイデンティティーを探し続けてきた。『稲川くん』→幻のアルバム→『Roots & Routes』という流れのなかには、そうした切実な動機が色濃く漂っているのだ。

「〈オレたちは未来も大事にするけど、同じくらい過去にも拘るバンドじゃん?〉って丈さんが言ったとき、〈なるほど!〉と思ったんですよ。このアルバムからが本当のスタートだという気持ちが、たぶんみんなのなかにあったんですよね。外側よりも内面の芯の部分を伝えるという意味で、すごくいいタイトルだと思います」。

4人がそれぞれの役割をより果たすことで、バンドのカラーはさらに鮮明になる。個とバンド、そしてリスナーとの微妙なバランスの上に、GOING UNDER GROUNDは自身のアイデンティティーを見つけ出したようだ。

「最近は〈圧〉がすごいものを聴けなくなったんですよ。僕が大人になっちゃったこともあるけど、子供もいて、1日に2時間ぐらい音楽を聴く時間が超貴重ななかでは、もっと余白のある音楽がいいから。自分のアルバムもそういうものがいいし、なるだけ客観的に聴けるようにしたかったんですよね。例えば“稲川くん”は僕の超パーソナルな歌で、近すぎて距離感がわからなかったから前作では完成できなかったんだけど、プロデュースを丈さんに託すことでやっと完成したんですよ。いまは〈自分が感動すればOK〉というだけじゃないものを作りたいし、だからといってみんなに良いと言われればいいっていうわけでもない。微妙なところなんですよ。〈10年やらないと伝わらない〉というのは、そういうことなんですけど」。

中学生の頃に買ったCDを、ふと引っ張り出して聴いてみる。するとあの時にはわからなかった、深いテーマがあることに気付くーー最近あった自身の出来事を例に挙げながら「自分たちの音楽もそうでありたい」とも彼は言う。


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年12月21日 19:05

更新: 2012年12月21日 19:05

ソース: bounce 350号(2012年11月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫

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