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インタビュー

Heavenstamp 『HEAVENSTAMP』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年06月27日 18:00

更新: 2012年06月27日 18:00

ソース: bounce 345号(2012年6月25日発行)

インタヴュー・文/土田真弓

 

ディスコ・パンクとシューゲイザーに魅せられ、海外勢とも交わりながら自身の音楽性を追求し続けてきた3人から、いよいよフル・アルバムが到着! さあ、泣きながら踊る準備はできている?

 

Heavenstamp

掛け合わせで別のものが生まれる

時は遡って2008年。〈フジロック〉で目撃したマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのライヴに感銘を受けたことがHeavenstampの出発点だという。とはいえ、彼らの音楽性は轟音のフィードバック・ノイズのみに特化したものではない。MySpaceで公開していた楽曲をブロック・パーティのラッセル・リサックが絶賛するという追い風を受け、バンドはその後、〈ディスコ・パンクやシューゲイザーをシンフォニックに鳴らす〉という身上を映したオリジナル曲と、人選にバンドのルーツが窺えるリミックス曲から成る4枚のEPを発表。そしていよいよ完成したのが、初のフル・アルバム『HEAVENSTAMP』だ。

「今回は14曲あるんですけど、“Magic”を起点として8曲目の“Hype”で折り返してますね。“Hype”は一見アッパー系ですけど、ディスコではないなと。これはもっとシンフォニックな印象のほうが強い。1曲目から7曲目の“Stop!”はクラブ・サウンド寄り、“Hype”以降はオーケストラ寄りになってますね」(Tomoya.S、ギター)。

冒頭を飾る“Magic”では、日向秀和(ストレイテナー/killing Boyなど)がベースを担当。挑発的にうねるグルーヴと、「迷いのなかで〈わーっ!〉ってなってる(笑)」(Sally#Cinnamon、ヴォーカル/ギター)という詞世界をキレッキレに体現する歌がリードするこの曲を筆頭に、序盤は聴き手の身体を反射的に揺らす4つ打ち曲が多い。そのなかで、新味として耳が留まるのは“Loose”と“Stop!”だ。共にほぼラップの如きSallyのヴォーカリゼーションを中心に据えたディスコ・パンク調だが、太いビートと退廃的なアンビエンスが交錯する前者と軽快なギターに合わせてビートルズやクラッシュにまつわる言葉がコケティッシュに躍る後者では、印象がかなり異なる。

「“Loose”はキルズとリリー・アレンが合体したイメージで、Sallyにはメロディーを追うのも面倒臭いぐらいの気怠さをリクエストして。あと地下室みたいな、クラブっぽい要素も欲しいってところでキルズって言ったのかな。〈これとこれを掛け合わせたら〉っていうアイデアを消化すると別のものが生まれる。それっておもしろいなって思うんです。“Stop!”のほうは、ディスコ・パンクとファンクを掛け合わせたかったっていう。レッチリから筋肉を削ぎ落としたらこうなりました(笑)」(Tomoya.S)。

 

好きなものが全部入ったアルバム

そして“Hype”からは〈オーケストラ寄り〉の後半へスライド。そのほとんどの楽曲では、シューゲイザーに対するHeavenstampなりの回答を確認することができる。

「ギターで、ヴァイオリンのようにメロディーを演奏する。ストリングス隊が10人いて、それにディストーションやディレイをかけてノイズを乗せてるみたいな、そういうサウンドですね。特に“Hype”以降はそういう方法を使ってます」(Tomoya.S)。

そんな重層的なサウンドが並ぶなかには、「無駄や雑味は極力なくしたい」という美学を露わにした楽曲も。そうした意味でTomoya.Sが共感を覚えるのはXXだそうだが、センシティヴな揺らぎを持つ“Ghost”はその極みだろう。

「とても無機質で、ミニマルで、美しいものっていうイメージがあって、そこからはみ出るものを排除していった感じですね。ギターはひとつの押さえ方で頭からずっといっしょなんですけど、そのなかで徐々に変化していくものはドラムで。肉体的になりすぎないように、〈カッ〉って鳴ってる音と、〈ドン〉って叩いてる人が別でいて、混ざっているような雰囲気にしたくて……」(Tomoya.S)。

「そういうイメージを受けて、全部の音をバラバラに叩いて。バスドラの音を聴きながらリム(・ショット)を重ねて、フロア・タムを重ねて……淡々と、感情をあまり込めずにやりましたね」(Mika、ドラムス)。

「この曲は歌詞も気に入ってるんです。ここまで内にこもった人って、これまで書いたことがなかったような気がして。出るに出られない小部屋のようなイメージなんですけど……あと、いま気付いたことを言っていいですか?“Ghost”と最後の“Ω”の主人公は同じ人ですね。“Ω”を聴いたとき、浮かんだのが宇宙と桜吹雪で。私の歌詞ってだいたい諦めてるんですけど(笑)、諦めながらも頭のなかの小宇宙を回転させて、ようやく夢を見てみようと思う気力が湧いたっていう感じですかね。冬から春になって、“Ghost”の主人公が“Ω”の主人公になってるんです」(Sally)。

その、本作のエンディングを担う“Ω”は、マイブラ『Loveless』をまさに想起させるシューゲイザー・ナンバー。ここにきてこうも直球の試みに踏み切ったのは、なぜなのか?

「これは、14曲っていう長いストーリーを思い出しながら酔えるような長さのアウトロが欲しくて、最後に作った曲で。あとは、Twitterとかで〈マイブラがバンド結成のきっかけってわりにはシューゲイズじゃないよね〉って言われたりもしたから、じゃあこれでも喰らいやがれ!っていう気持ちもありました(笑)。去年のツアーでヴェルヴェッツの“Sunday Morning”をカヴァーしたんですけど、そのときに出来たHevenstamp流のシューゲイズのアレンジがすごく格好良かったので、“Ω”にはそれをそのまま持ってきてますね」(Tomoya.S)。

経験を積み重ねることでこそ戻ることができた原点。今作は、ディスコ・パンクとシューゲイザーに多角的なアプローチを施してきた彼らの、現時点における集大成と言っていいだろう。

「ディスコ・パンクでスタートしてるけど、最後は根っこに帰って……それでこれだけ良い曲ができるよっていうのは示したかった。これまで真っ向からのシューゲイザーはあえてやってこなかったんですけど、結局は、それが最後のピースだったんだなと。今回のアルバムは、まさに自分たちの好きなものが全部入った作品になったなって思います」(Tomoya.S)。

 

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

左から、ストレイテナーの2012年作『SOFT』(EMI Music Japan)、キルズの2011年作『Blood Pressures』(Domino)、リリー・アレンの2009年作『It's Not Me, It's You』(Regal)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの2011年作『I'm with You』(Warner Bros.)、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの91年作『Loveless』(Creation)、XXの2009年作『XX』(Young Turks)

 

 

 

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