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インタビュー

QN from SIMI LAB 『Dead Man Walking 1.9.9.0』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年12月28日 17:59

更新: 2011年12月28日 17:59

ソース: bounce 339号(2011年12月25日発行号)

インタヴュー・文/出嶌孝次



1.9.9.0から急ぎ足で歩んできた21歳の、メランコリックで、ダークで、バッドな告白——ざわめきのうちに沈む2.0.1.1を締め括れるのはやはりこの男しかいない!



QN_A



前置きは要らないだろう。前号で紹介したSIMI LABのインタヴューで予告されていた通り、QN名義での2作目『Dead Man Walking 1.9.9.0』がリリースされた。SIMI LAB本隊のアルバムは言わずもがな、自身のEarth No Mad名義作や、プロデュースを手掛けたDyyPRIDEのソロ作、JTFのミックステープ……と話題作で2011年のカレンダーを埋め尽くしてきた彼。よく考えると初作『THE SHELL』を出したのも17か月前なのだから、「クセというか習慣みたいなもんですね。歯を磨かないと気持ち悪いのと同じくらいの感じ」で日々ビートやラップに向き合ってきたQNの2011年を締め括るのに相応しい成果とも言えそうだが、今回はサウンドにも2011年の作品らしい空気を纏っている。

「これまでは90年代っぽい音もやって、特別に〈いまの音〉とか考えてなかったんですけど、今回は2011年っぽい音を意識してて。あんまり言葉にしたくないけど、アブストラクトな感じとか。30年後に聴いても〈2011年のあの時の雰囲気だ〉と思える音を考えてました」。

不気味なジャケが示唆するように、トラックの質感はダークでどことなく邪悪でミザリー。QNのスムースなラップもセンティメントを帯びて響く。SD JUNKSTAのKYNを迎えた序盤の“Dead Man Walking”なんかは例えるならマキャヴェリが4ADで録ったような感触でもあるし、そうでなくてもこれまでの諸作と異なるトーンなのは間違いないだろう。

「今年に入って改めて高校生の頃から遊んでたロックに詳しい人たち、(OKAMOTO'Sのオカモト)レイジ君とかと遊ぶ機会がまた多くなったのも関係してるかもしれないけど、そもそも今回はネタを掘る段階でオルタナティヴとかニューウェイヴとか、ドイツとかUKのロックを掘ってて、ロック・サンプリングで作ろうっていう流れだったんです。UKの寂しい、病んでる感じがマインド的にいまの自分と近いような感じもしてて。XXやトロ・イ・モワ、ディア・ハンターとかを聴いて、〈ああ、こういうテンションで音楽ってできるんだな〉って思ったり。ただ、そこを突き詰めようとしてたくせに、急にミッシー・エリオットとか昔のキャッシュ・マネーとか聴きはじめたり、制作スパンが長かったから方向性が逸れたりして、それをまとめるのが大変でした(笑)」。

本隊のアルバムと並行して制作されていたという今作には、OMSB'Eatsのビートもあるし、要所でMARIAやUSOWAらメンバーらの声も聴ける。ソロ作ならではのエゴのようなもの以前に、「SIMI LABのアルバムがいいと思ってくれた人の期待に応える部分と、QNメインだとこんな感じなんだっていう裏切りを出したかった」というバランスも持ち込まれているのだ。が、クレヴァーな客観性で全体を俯瞰してきた(ように思える)彼は、いままで以上に主観的な視点をもって取り組んだと語る。

「確かに、いままで何に対しても客観的になる部分があって、そこはコンプレックスというか……2年ぐらい前に自分がそういう感じだって気付いちゃったんですけど。でも、今年の6月ぐらいに、頭のネジが4本ぐらい一気に取れる感覚があって(笑)、次の日にMPC触ったら自分のできることが全然変わってた。それで自分の見た景色とか自分が一発目に受けた感覚をそのまま音にして、そのほうが自分のやりたいことだって単純に気付いたし、その引き出し方をやっと理解した感じですね。だからこの『Dead Man Walking 1.9.9.0』は、そこに辿り着くまでと辿り着いてからの感覚が混じってる、ゴチャゴチャなアルバムかもしれないです(笑)」。

本人はそう語るが、アルバムの特に前半は、映像的なトラックが混沌を触媒にしてトロリと溶け合った組曲のようで圧倒される。そんなひとつながりの不穏な心地良さを通過して訪れるハイライトは、OMSB製のビートもシャープな“B.A.D”、そしてDyyPRIDEとJUMA、GIVEN(LOWPASS)を迎えた名曲“Zing Zang Zong(In The Lain)”。それに続く“Dead Man Dub”もアルバム全体のトーンを象徴するものだろう。他にも高校の頃からの仲だという雄志、さらにRiki Hidakaといった世田谷の面々が名を連ね、諭吉からのリリースという繋がりもあって、「高校の時から相模原のスター」だと語るNORIKIYOも客演している。

新しい年が来ればまた新しい展望が開けるはずだし、次なる作品の制作はこうしている間にも進んでいるのだろう。「ヒップホップってラップやビートがどうこうじゃなく、前に出たものより良いものを作ろうというエネルギーで新しくしていくものだと思ってる」という意識が貫かれていく限り、次の1年も彼と彼らは新しい刺激を届けてくれるに違いない。



▼SIMI LABの関連作。

左から、SIMI LABの2011年作『Page 1: ANATOMY OF INSANE』、DyyPRIDEの2011年作『In The Dyyp Shadow』(共にSUMMIT)、QNの2010年作『THE SHELL』(ファイル)、Earth No Madの2011年作『Mud Day』、同作のインスト盤『Mud Day Instrumentals』(共にSUMMIT)

 

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