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インタビュー

Ovall 『Heart Fever』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年10月24日 21:00

更新: 2011年10月24日 21:00

ソース: bounce 337号 (2011年10月25日発行号)

インタヴュー・文/山田祥子

 

 

Ovall_A

写真/山田貴輝

 

重力に引かれて楕円を描きながらループするグルーヴ。バンド名がそのまま彼らの音楽でもある。ループ・ミュージックのビートを生演奏で体現するスタイルは世界中に存在するが、海外アーティストとも手合わせし、そのポテンシャルの高さを見せてくれたファースト・アルバム『DON'T CARE WHO KNOWS THAT』は、日本人の琴線に触れるメロウネスを内包しつつも国籍不明の名盤だった。あれから1年半余り。メンバー個々がソロやプロデューサー/リミキサーとして活躍、〈フジロック〉などの大型フェスに出演してバンドとしても強度を増したOvallが、リーダーのShingo Suzukiを中心に、自作自演に徹したミニ・アルバム『Heart Fever』を完成させた。

「世の中の閉塞した空気感を抜けて外に出たいというのがあって。クサいけど、真実とか愛とかを表現したかった。フェスへの出演やライヴを重ねて自分たちのグルーヴやリズムは進化したから、バンドとしての色をより強く出したかったんです。作り込まず、編集で切り貼りもしないで、シンプルな音作りをめざしました。第4のメンバーとして、ライヴ・サポートしてくれている佐久間淳(キーボード)君も参加しています」(Shingo Suzuki:以下同)。

ジャケットにポートレイトを使って堂々と届けられた『Heart Fever』は、前作を良い意味で裏切る、ミニマムでコンセプチュアルな仕上がりとなっている。

「EPでもフル・アルバムでもなく、いまのOvallの音を詰め込んだミニ・アルバムにしたかったんです。曲順はこだわったというより、これしかないという感じ。アルバムを通してひとつのストーリーとして聴いてほしいですね」。

都会のざわめきや車のエンジン音をコラージュした“Water Dream”から一気に引き込まれるOvallワールド。それは真骨頂の重いビートが躍動するリード・トラック“Feverish Imagination”へと誘う伏線でもある。ネオ・ソウルの進化型といった風情の“Beautiful Love”は、mabanuaのジェントルで官能的な歌声が心地良い。歌モノも彼らの十八番だ。

「ドラムスのmabanuaには、彼にしか出せないグルーヴがある。あの声も魅力的です。リリックとメロディーは僕がピアノの弾き語りで作っていて、自分の気持ちを素直に表現した僕の等身大かもしれない。いわゆるR&B的なメロディーにはしたくなくて、自分から自然に出てくるメロディーを大事にしました。ポリリズム的に重なる複雑なリズムとグルーヴの上に、ポップでわかりやすいメロディーが乗る。そこにOvallらしさと新しさがあると思っています」。

続く“Moon Beams”と“Moon Beams(Reprise)”はギミック満載の2曲。フェンダーローズのソロもメランコリックな前者が深夜に浮かぶ下弦の月なら、ギターの旋律が美しい後者は光り輝く満月。対になって〈光と影〉を表現している、といったら詮索しすぎだろうか。「強力にメロディーとして残る音を弾いてくれる」という関口シンゴのドラマティックなギター・ソロがハイライトとなり、フェイドアウト後の静けさから立ち上がる“Feverish Imagination(Reconstruction)”のコーラスでは、銀幕にエンドロールが降りてくるような錯覚に捕われる。

「このラスト・トラックは自分のなかでも突き抜けていて、コード感もTR-808のドラムの音色も好きだし、いちばん気に入っています。アコギの音色も弾いてみたら即OKという感じで、とてもよく録れていると思う。すべて生演奏で制作するコンセプトは変わっていないけど、唯一このドラムだけは僕が打ち込んでいます」。

Ovallとしての新境地といえる叙情的なサウンドは、聴き終わってすぐにまた初めから繰り返したくなるような、良質な短編映画の観賞後にも似た温かな余韻を残してくれる。ジャンルを超えるグッド・ミュージック——〈I'll get the door and out to the world〉と歌う彼らは、新しい扉を開けて、もうすでに次の世界へと踏み出しているようだ。

 

PROFILE/Ovall


Shingo Suzuki(ベース/コーラス)、mabanua(ドラムス/ヴォーカル)、関口シンゴ(ギター)から成るバンド・プロジェクト。2008年のソロ・アルバム『The ABSTRACT TRUTH』で脚光を浴びたShingo Suzukiを中心に結成され、2008年に限定リリースされたコンピ『Gravity(A Song Book Of Origami Productions)』に初音源となる“Take U To Somewhere”を提供する。2009年の〈朝霧JAM〉に出演して高い評価を獲得。2010年3月にファースト・アルバム『DON'T CARE WHO KNOWS THAT』を発表し、同年の〈フジロック〉や〈RISING SUN〉などの大型フェスに多数出演。個々の活躍でも注目を集めるなか、ミニ・アルバム『Heart Fever』(origami)を10月26日にリリースする。

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