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インタビュー

OGRE YOU ASSHOLE 『homely』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年08月24日 17:54

更新: 2011年08月24日 18:00

ソース: bounce 335号 (2011年8月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

 

アルバムを追うごとにその方向性を変化し続け、自身の形を更新することをめざしている彼ら。長らく活動を共にしてきたベーシストの脱退という大きな転機もチャンスに変え、OGRE史に残るであろう傑作が生まれた!

 

OGRE YOU ASSHOLE_A

居心地が良くて悲惨な場所

ささくれ立ったノイズを敷いたインスト“明るい部屋”からクラウト・ロックのミニマリズムを持ち込んだ“ロープ”へ――冒頭からしてかつてない不穏な空気が充満している。なにげない佇まいで大胆な音の冒険を繰り広げ、日本語ロックの可能性を拡張し続けてきたOGRE YOU ASSHOLEだが、ここにきていよいよとんでもないことになってきた。「過去の自分たちの手法は禁じ手。知ってることはやらない」(出戸学、ギター/ヴォーカル:以下同)という厳しいルールを課して作り上げたニュー・アルバム『homely』は、堂々たるコンセプト・アルバム。鮮烈なサウンドを振りかざしながら寓話を思わせるシュールレアリスティックな物語を、アルバム一枚を通して紡いでいる。

「前作の『浮かれてる人』は一曲一曲がバラバラの方向を向いたアルバムだったんですが、あれを作り終えた時にメンバーと〈次はコンセプト・アルバムがいいね〉っていう話になったんです。それで出てきたのが、〈居心地が良くて悲惨な場所〉というテーマでした。とにかくテーマありきで、それに見合った曲を選んで。サウンドやタイトル、歌詞、ジャケット、PVも含めて、ひとつのものを表現することに惹かれたんです。それくらいやって初めてモノを作った気がすると言うか」。

プロデューサーに石原洋を、エンジニアに中村宗一郎を迎え、メンバーの住む長野で楽曲制作するというスタイルは前作と同じ。だが、レコーディングが始まってすぐに平出規人(ベース)が脱退することとなり、替わりに馬渕啓(ギター)がベースを兼任することでアルバムは完成したという。

「馬渕はベーシストじゃないんですが、ずっといっしょにやってきたってところが大切だったんです。ベースが違うだけでこんなに変わるのかと思いましたね。まるで違ったグルーヴ感になりました。これまで平出以外のベースが入ったことがなかったので、そういうことに初めて気付いたんです」。

そうして作られたアルバムのサウンド面を特徴付けているのが、随所に立ち現れるAORのエッセンスだ。管楽器をフィーチャーしたメロウなアンサンブルはすこぶる気持ち良い……のだが、そのアーバン過多なラグジュアリー・サウンドが、ビジネス・ホテルのパンフレットでも眺めているかのような、何とも言えない空虚な感覚を醸し出す。甘美でありながら不気味、日常の光景をグニャリと捻じ曲げる、持ち前のサイケデリック趣味がここでも遺憾なく発揮されているのだ。

「〈居心地が良くて悲惨な場所〉ってテーマに向けて作っていたら、AORのメロウな感じとか、サックスの音色に行き着いたんです。制作中はスティーリー・ダンとかネッド・ドヒニー、吉田美奈子さんなんかをよく聴いてましたし。とは言ってもAORを真っ当にやるんじゃなくて、要素だけを僕らの演奏のなかに入れ込む。そうすることで単なるイージー・リスニングじゃない、ちぐはぐなものが出来上がる。それがおもしろかったんですよね」。

例えば“フェンスのある家”は聴き手の虚を突くように女声のナレーションで幕を開け、太いベースラインが蠢くファンキーなセッションが始まる。中盤には割れまくった音像でパーカッションだけが轟き、やがてトランペットが鳴り響く壮大なパートへと突入する。自由なアイデアを投入し、緻密なスタジオワークで楽曲を構築していく手付きは実に鮮やかだ。

「今回は僕と馬渕がすべて作曲しました。僕らが持ち寄ったままに録る場合もあるんですけど、語りを入れたのはプロデューサーの石原さんのアイデアですね。そうやって最初のイメージからは考えられない破天荒なアイデアをポツンと出してくれて、それがいつの間にか楽曲の核になってたりする。スタジオには石原さんと中村さんが常にいますし、全員で作り上げている感覚ですね。この布陣でアルバムを作るのももう4枚目ですけど、ようやく2人とも打ち解けて、メンバーみたいな空気になったかも(笑)」。


本当に狂ったものはできない!?

「曲を成立させえるうえでバンド・サウンド以外の要素が必要だったら、躊躇なくバンドを捨てる」と出戸は語る。しかし、アルバムを通じて徹底的なバンド解体作業が行われているかというとそんなことはなく、むしろ“作り物”“同じ考えの4人”といった曲で聴くことができる、70年代ロック調のレイドバックしたグルーヴが耳に残ったりする。適材適所で実験的なサウンドを挿し込みつつも、前面に出しているのはフィジカルで有機的なバンド・アンサンブル。聴き手を寄せ付ける本作の強い吸引力は、そんなところに端を発しているのかもしれない。デビュー当初からUSインディーと共振するような活動を展開してきた彼らだが、チルウェイヴと呼ばれるような打ち込みのシンセ・ポップが幅を利かせている昨今のシーンの状況について尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「いまは、僕らがバンドを始めた頃のUSインディーとはまったく違うものになってきてますよね。チルウェイヴのふわっとした感じは好きなんだけど、打ち込みものは微妙にしっくりこない。やっぱりバンドでやってるものが好きだし、自分たちなりの肉体感が欲しいんですよ。トロ・イ・モワは今年出した新作でバンド・サウンドに変わったじゃないですか。ああいう方向性のほうが共感できますね」。

「どの年代に、何歳くらいの人が作ったのかわからないもの」をめざしたという彼ら。そんなギラついた野心が込められた新作『homely』は、確かにカテゴライズしにくい掴みどころのない作品だし、だからこそ新しい。それでいて親しみやすい歌モノとして成立していることにも驚かされるのだが、そこがやはり、彼らのOGRE YOU ASSHOLEたる所以なのだろう。

「制作中は、〈これ、アルバムとして成立するのかな?〉って不安になるし、かなりギリギリな地点をめざしているつもりなんですけど、最終的に出来上がってみると〈意外と普通に聴けるな〉って。本当に狂ったことはできないんだなあと思ってしまいますね……残念ながら(笑)」。

そう出戸は笑うが、狙わずとも自然に生まれてくるポップセンスを持っているからこそ、OGRE YOU ASSHOLEは先鋭的でありながら日本のロック・シーンにおいて確固たる人気を獲得しているのかもしれない。さて、この異形の充実作を経て、彼らはどこに向かうのか? 確実にハードルが上がったぶん、リスナーの期待もこれまで以上に膨れ上がるに違いない。

「今回のアルバムは、デビューからいままでにちょっとづつ積み重ねてきたところからポンと飛び降りたような作品なんですね。飛んじゃった以上、今後はこれまでのバンド像を捨てていくように作っていくしかないのかなと思うんです。でもそうするとどんどんやれることが少なくなっていく。そういう意味では大変ですけど(笑)、でも、それくらいやらないとおもしろいものはできないですから」。

 

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