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インタビュー

LONG REVIEW——YUKALI 『IF THIS IS LOVE』

 

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ここ数年の日本産R&Bはものすごく充実してるしおもしろいと感じているけども、いわゆる〈泣き歌〉といったバラード群には、あまり食指が動かない。正直に言えば、ウェットで類型的なピアノのイントロが流れてきた途端、プレイヤーのスキップ・ボタンを押してしまうこともしばしば……。

とは言え、バラード自体に〈ノー〉と言いたいわけでは決してなく、むしろ筆者の魂をも救済してくれるバラードをずっと欲していたわけです。つまり俺だって泣きたい!

そんな渇望に見事に応えてくれたのが、本作のタイトル曲“If This is love”だった。センシティヴに揺らぐメロディーと、リリックに綴られた主人公の心情とがぴったりと寄り添い、もどかしくもスウィートなラヴストーリーを描き出していく。アンサンブルは打ち込み主体ながらもゴージャスな広がりを備えており、大仰になることを避けながら丁寧にドラマを盛り上げている。その演出と抑制の均衡が美しい。R&Bうんぬんを超え、普遍的なポップスとして広く受け入れられ得る名曲。大げさでなくそう思う。

普遍的なポップスと書いたが、アレンジに目をやれば、彼女がソウル・マナーをしっかりと会得したうえで曲を作り上げていることがよくわかるし、その他の作家によるアルバム収録曲も、アグレッシヴでミニマルなビートを轟かせるというよりは、洗練された空気感に重きを置いてるように感じられる。素直に身を任せることができるメロウネスと、心の琴線をビンビン震わせる歌世界が詰まったアルバム。また一人、素晴らしいR&Bシンガー・ソングライターが登場したことが嬉しい!

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年06月29日 18:00

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