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インタビュー

DOES IT OFFEND YOU, YEAH? 『Don't Say We Didn't Warn You』

 

もう、負ける気がしねえ!! メンバー交替を経てパワーアップした5人は、溢れ出るエモーションをダイナミックで変幻自在なサウンドに磨き上げた。恐るべき完成度で迫るアグレッシヴな新作に乗り遅れるなよ!!

 

 

「生まれつき才能を持った者がトップに立つべきだ。でもいまの音楽シーンは違う。トップに浮上するのはシットな奴らばかり。このアルバムで俺らは、バンドとして成功するにはソウル・ミュージックを書かなきゃいけないと思っている奴らに両手の中指を立ててるんだ。馬鹿げた考え方だ。そんな必要性はまったくない。いまは、皆に順応し、つまらない見え透いたものを作った奴が報われる時代だ。ラジオを聴いていてもワクワクしないし、全部いっしょに聴こえるだろ。なのに何でいまだに音楽賞なんかを与え続けてるんだ。才能あるアーティストは皆ダークサイドに移りはじめている。プランBに〈1枚目のアルバムは大ヒットではなかったけど結構おもしろかったね。いまは何をやってるんだ?〉って訊いたら、気を悪くしたみたいで怒ってた。〈何で怒るんだ? 俺が言ったことが的を射てたからか?〉と思った」。

そう挑発的な言葉を並べてまくし立てるのは、バンドの中心人物であるジェイムズ・ラシェント(ヴォーカル/ベース/ギター/シンセサイザー)。とはいえ、ダズ・イット・オフェンド・ユー・ヤー?がニューレイヴの狂騒の真っ只中に登場したことから、彼らこそトレンド便乗バンドだと揶揄する人もいるだろう。しかし実際のところ、彼らはNMEが企画した〈ニューレイヴ〉のパッケージ・ツアーに参加することなく、リンキン・パークの北米ツアーにプロディジーと共に参戦、そのプロディジーの『Invaders Must Die』では、ジェイムズが“Invaders Must Die”と“Omen”のプロダクションに参加して手腕を振るうなど、流行を追っているような連中ではまず味わえない経験を、この3年の間に成し遂げている。そんな背景があるからこその発言だろうが、まさか新作リリース前に有言実行となるとは……。

「何がやりたいか、進みたい道が鮮明に見えていたから、レコード会社の多くの人と不仲になってしまったよ。彼らはRadio 1で昼間流れるような曲を求めていたんだ。〈だったら他のバンドと契約しろ。俺らはそんなバンドじゃない〉って言ったら、いろいろ脅されたよ」(ジェイムズ)。

「自分たちが納得いくものを演奏していないと、心臓がケツから飛び出るほど憂鬱になるというか、〈何やってんだろう、俺ら〉って思ってしまう。メジャーとの契約が解消されて良かった!ってことを語ってるのがこの新作なんだ」(ダン・クープ、ドラムス)。

めでたく(?)メジャーに別れを告げた喜びか、はたまた見返してやろうという気合の賜物か、サウンド面然り、楽曲のクォリティー然り、すべての面において成長の跡が鮮やかに刻み込まれたアルバムが『Don't Say We Didn't Warn You』だ。

「これは俺らのブレイクアウト・アルバムなんだ。激しい怒りを表現している曲もあれば、穏やかでメランコリックな重苦しい曲もある。全曲が同じように聴こえる作品じゃなく、手の内をすべて明かせるアルバムを作りたかったんだ」(ダン)。

アコースティック・パートとレイヴィーなシンセが同居したカオティックな“We Are The Dead”で幕を開け、ラストを飾るレディオヘッドのようにメランコリックなバラード“Broken Arms”まで、ダンのコメントがいささかも大袈裟には聞こえない攻撃性、物憂げな感情、多幸感、繊細さ、享楽性など、さまざまな音やエモーションが次々と現れては消えていく、ダイナミズムに溢れたアルバムに仕上がっている。ジェイムズが「髪を掻きむしる思いだった」という限界まで自分たちを追い込み、無限の可能性にもがき挑戦する姿は、少々不器用な気もするが、何とも清々しい。

 

▼関連盤を紹介。

左から、ダズ・イット・オフェンド・ユー・ヤー?の2008年作『You Have No Idea What You're Getting Yourself Into』(Virgin)、プロディジーの2009年作『Invaders Must Die』(Take Me To The Hospital)、ブロック・パーティーのリミックス盤『Flux』(Wichita)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年04月22日 14:07

更新: 2011年04月22日 14:07

ソース: bounce 330号 (2011年3月25日発行)

構成・文/青木正之

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