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インタビュー

Rie fu “For You”

 

大切なのは、思いをきちんと伝えること……自分発信のアグレッシヴな活動を経て、より前向きな気持ちで編まれたニュー・ソング“For You”

 

 

 

Rie fuの最新シングル“For You”が完成した。昨年は自宅兼アトリエに友人のシンガーやミュージシャンを呼んで、楽しみながらアルバム『at Rie sessions』を録音/制作。また、単身でNYヘ渡り、みずから直接クラブに連絡してライヴを行うなど、自分発信のアグレッシヴな活動を展開してきた。一方、自分を取り巻くスタッフがガラリと変わるなど、仕事環境の変化もあったという。

「NYでのライヴはすべて自分でブッキングしたので、日本では当たり前だった〈いろいろな方々のサポート〉に気づかされました。NYが良かったのは、(以前住んでいた)ロンドンと比べて全然オープンな感じで、イギリス人が持つ内輪意識のようなものがなく、国籍とかの壁が薄い感じがしましたね」。

“For You”という曲は、自分の在り方を振り返るなかで生まれたという。

「仕事でも何でも、人のためと思っても、どうしても独りよがりになってしまって、そのことがいちばん、コミュニケーションを図ることを難しくしているんじゃないかなって思って。それに、考え方がいくら違っても、人の思いをきちんと伝えることがコミュニケーションを始めるきっかけになるんじゃないかな、と思ったんです」。

歌詞では「よりわかりやすい言葉で何度も書き直し、どんどん掘り下げて具体的な言葉にしていくこと」、音楽的にも「言葉と一緒で、前向きな印象が伝わるようなもの」を心掛けたという。それゆえ、これまでの楽曲のなかでもっともメジャー感の強いポップ・ソングに仕上がった。

「そうですね。外に向かってどんどん発信していくというか、より多くの人に届けたいっていう気持ちがいちばんこれまでのシングルの中では大きいですね」。

だからといって、単純なポップスにはなっていない。ロンドンの美術大学を卒業し、アーティストとしても活動しているRie fuのこと、作品に対するポリシーがきちんと確立されている。

「絵でも音楽でも思っているのは、対極にある物というのを同じ場所に表現したいということ。一見矛盾というか、“For You”もまさに〈人のためと思っていることは、結局自分のためでもある〉というような相反するもので構成されているという。どうしてもひとつの面だけ見る人が多いし、自分自身も人に対してそういう風に見てしまう。ただ、その一面だけを見ていると理解できないことがたくさんあるんですけど、相反するものがいろいろと共存してることでひとつの物のバランスが成り立っていると思うんですよね」。

カップリングの“Come on Come on ~りえふーの英会話講座~”は、〈どうしたら英語がしゃべれるようになるの?〉とよく訊かれる彼女が、「〈セサミストリート〉のように歌で楽しく学べたら」というイメージで作ったという曲。もう一曲の“One-Bite”は、一昨年の夏に出来上がり、ライヴでもよく歌っていたものだが、今回、歌の世界をよりわかりやすく伝えるために、「世界観を掘り下げて、肌とか匂いとか五感に触れる様子を歌詞に加えていった」と説明する。しっとりした質感がきめ細やかに伝わる、Rie fuらしい美しいナンバーになっている。

「1枚のシングルとはいえ、いろいろな曲を入れて濃度を高めたいと思ったので、すごく大事にしていたこの曲を入れました。ライヴで演奏していた時は半分ぐらい英語の歌詞だったんですけど、お客さんから日本語のほうがわかりやすいという意見があったので、日本語に書き換えたり……。この3曲が収録されて、自分のなかでは、ちょっとミニ・アルバムぐらいの幅広さが出たかなって気がするんです」。

油絵に加え、ブログで公開している写真の評判も良く、音楽、アートと多彩に自身の世界観を表現しているRie fu。才能豊かな彼女の活躍をぜひチェックしてみて。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年04月08日 13:20

更新: 2011年04月08日 13:20

ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)

インタヴュー・文/伊藤なつみ