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インタビュー

INTERVIEW(3)――デフォルメされたエアー感

 

デフォルメされたエアー感

 

――なるほど。ということは、今回の“アタマカラダ”のような曲調だと、あらかじめ音響までもを視野に入れて作ったということになる?

「はい、それはもう今回は特に。まあ、言ってみれば、エアー感ですよね。そのエアー感は前の“悪魔の子供”よりもハッキリ今回のほうが出てると思います。そういう意味ではこのシングルの3曲はかなり音響面でデフォルメされてるかもしれないですね」

――例えば録音時にどういう工夫を?

「やっぱりマイクの位置とか立て方とかですよね。そこらへんはエンジニアの方と各メンバーが何度も何度も調整して話し合って決めました。マイクをどこらへんに立てるかとか、そういう工夫に時間がかかりましたね。特にドラムでエアー感を出したかったんで。もちろん、このあと3月に出す予定のアルバムにはエアー感を出さずにオン・マイクで録った曲もあります。でも、この“アタマカラダ”のような、言ってみればユルい曲はエアー感をかなり強く出してますね。そうすることで、音の塊からは逃れることができるんです。少なくともドラムがハッキリ聴こえないと、他のパートが混ざってしまうんですよ。そういう意味で、特にベードラ(バスドラム)の録音にはこだわりましたね。“アタマカラダ”の後半部分はマイ・ブラディ・ヴァレンタインだったりして(笑)、展開は複雑なんですけど、全般的にエアー感はもたせるようにしました。ただ、そういうのって全部オケに関しての話で、俺のヴォーカルに関してはまた別なんですけどね」

――なるほどね。つまり、『グッバイ、ガールフレンド』以降、バンドの一員としての目線以上に、プロデューサー的目線、エンジニア的目線が強まってきたってことでもあるのかな。

「あ、それはありますね。曲は絶対的にいいものを作る自信があるんで、あとはそれをどうやって聴かせるか?というか、どうやって届けるのか?だったんでね。となると、録音で工夫をしていくことになるんですよ。ただその割に、俺はレコーディングではほとんど口出ししないんです。みんなの演奏にも音にも。そういう意味では、バンド内の信頼関係ができ上がって来ていることの証というか、だからこそ、いま、こういうほうにいけたのかなという気もしますね」

 

踊ってばかりの国
写真/岡村直昭

 

――今年の4月で結成3年。ようやく、音の質感の指向にも一つ明確な方向性が見えてきたのかもしれないと。

「そうですね。そうそう、バンドでいつでも使えるスタジオを東京で借りてるんですけど、それも大きかったですね。だから、メンバー同士で話し合うというより、スタジオにこもる時間は間違いなく増えましたね。東京に出てきて初めてちゃんとした環境が整って、初めてレコーディングした作品が“悪魔の子供”であり今回の“アタマカラダ”であり。いつも本気は本気だったんですけど、自分としてはかなり満足のいく状況でやれるようになってきたんです。この状況を持続させていきたいですね」

――作った曲をすぐメンバーで合わせて形にしていけることでバンドの成長もおのずと速くなるよね。実際、この1年ほどの間で、踊ってばかりの国ってすごく変わったと思う。ライヴ・パフォーマンスでの表現力も楽曲のアレンジなども。

「ライヴでやる曲も変わってきましたよね。例えば、『グッバイ、ガールフレンド』に入ってる“バケツの中でも”とか、もちろん、いまでもやったりしてますけど、あの曲を作った時の熱とはいまはもう全然違いますからね。いまはあの曲の歌詞の感覚ってもうちょっと違うっていうか。それに、うちのバンドは新曲をどんどんやるのが好きなんです。リハとかも結構マメにやってるんですよ。基本、週2で3~4時間ずつはリハスタに入ってますね。新曲をやったり、既存の曲でも同じ曲を何度も何度も繰り返しやるんです。すっごい体育会系ですよ、俺らって(笑)」

――繰り返し同じ曲をリハで何時間もやる、その狙いはどこにあるの?

「曲に一人歩きしてほしいんですよ。さっきも似たような話を少ししましたけど、曲は出来上がったら、早く自分たちの手から離れていってほしいんですね。それがバンドにとっていちばんの成長に繋がるって思うんです。曲は俺が作っているから、出来上がった時点で俺の手はもう離れているんです。でも、他のメンバーにとってはまだ距離がある。だから、何度も何度もリハで繰り返し演奏することでメンバーの手も離れていくでしょ? そうすることでバンド自体が成長していくと思うんです。そういう狙いがありますね。俺ら、そもそもライヴのセットリストって最初からメッチャちゃんと決めてるんですよ。その場で変わることってないんですよね」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年01月19日 18:01

更新: 2011年01月19日 20:41

インタヴュー・文/岡村詩野