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インタビュー

ロング・レヴュー:PSG 『DAVID インスト』

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般若『HANNYA』やSEEDA『SEEDA』など、2009年の日本のヒップホップ・シーンでは気負いを感じさせない傑作が多く生まれたように思うが、なかでもPSG『David』はその意味において突出していたのではないか? 予想外にハミ出しまくる三者三様のラップ・スタイル、ヘタウマな歌声がやたらと耳を惹くフック、マンネリという言葉とは無縁のヴァリエーション豊かなトラック――既成のフォームや価値観に捉われることなく、自然な所作でヒップホップというオモチャと戯れるその姿は、あまりにも自由で、創造的で、彼らが心から楽しんで音楽を作っていることが伝わってくる。

そんな名品をトラックの側から紐解くことができるのが『DAVID インスト』だ。PUNPEEとS.L.A.C.K.の兄弟がサンプリングの素材として俎上に乗せるのは、ロックやソウル、レゲエから民族音楽まで、実に広範で彩り豊かなサウンド。それらを声ネタやSEなどの小ワザをスパイスにしながら無手勝流に組み上げていくわけだから、完成したトラックが既出の括りからはおよそかけ離れたオリジナリティーを獲得するのは当然だ。そうした音楽的なおもしろさをじっくりと堪能できるのはもちろん、ラップをより効果的に聴かせるアイデアや仕掛けがふんだんに盛り込まれていることもよくわかり、ちょっとした種明かしを覗いたような気分も味わえる一枚となっている。

また、本作には新曲も3曲収録。〈PSGがいないほうが世界は平和かも?〉とうそぶくラインも痛快なアンチ派へのアンサー・ソング“Without you”、睡眠不足の苛立ちをコミカルなリリックに落とし込んだPSG版“I'm Only Sleeping”(?)な“寝れない!!!”、常にも増して熱のこもった言葉と共に〈テキトー〉の美学を説く名曲“いいんじゃない”と、いずれも独自の視点とユーモアが光る秀作に仕上がっている。『David』に収録されている唯一のラヴソング“愛してます”で〈やっぱり音楽のほうが裏切らなくて〉なんて強がってみせる彼らに、音楽の女神が微笑まないはずはないのだ。

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年01月20日 18:00

更新: 2010年02月10日 19:00

文/北野創

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