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インタビュー

福原美穂

歌うことが大好き! 歌える場所さえあればどこでも構わない――そんな生粋のシンガーによる溌剌とした歌の数々が、虹色に輝いている!


 「最初に好きになったのはアレサ・フランクリンなんです」と言いつつも、「コリーヌ・ベイリー・レイとかサンディ・トムのように、いろんな間口を持ったシンガーが好きなんです」と屈託なく話す。これだ。この開かれた姿勢が彼女を自然といまのこの地点に導いたのだろう。

 すでにリリースされている福原美穂のファースト・アルバム『RAINBOW』が順調なセールスを上げていると聞いて、やっぱりな~と思った。確かに歌唱力はある。だが、例えば90年代に多く見られた、ただ張り上げるだけのディーヴァ(死語か)とは違う、どこかナチュラルで未完成な雰囲気。あるいはブラック・ミュージックは好きだけど、それだけに固執しない柔軟性。折衷と言うと抵抗があるかもしれないが、どことでも繋がっていける、どんな音楽にもジョイントできる大らかさが、実際にこのアルバムにはある。

「家族がみんな音楽好きで。ビートルズやストーンズなど何でもあったんですけど、唯一家になかったのがブラック・ミュージックのアルバムで。それで興味を持ってアレサのCDを買いました。いちばん衝撃を受けたのがソウルだったんです」。

 10代の頃からとにかく歌いたいという思いが強かったという福原。昨年2月にLAの黒人教会でパフォーマンスを披露したというエピソードは、そんな彼女の長年の夢が叶った瞬間だったようだが、それとて彼女にとってはひとつの通過点に過ぎないのだろう。「日曜のミサの場で歌わせてもらったんです。100人くらいの方がいたんですけど、向こうの人って良くても悪くても顔に出るから最初は不安でした。でも歌い終わったら、〈もう一曲ミホに歌わせようよ!〉って黒人のクワイアのオバちゃんに言ってもらって。結局2曲歌わせてもらいました」と無邪気に喜ぶ横顔は、本当に歌うことが好きなあどけない少女のよう。しかし、いまの彼女が見据えているのはもっと先にある未来の自分だ。このアルバムには先述のコリーヌ・ベイリー・レイやサンディ・トムの書き下ろしナンバーもあれば、プロダクション・チームである2SOULや山口寛雄(100s)、川村結花ら多くのクリエイターたちが関わった曲もある。じっくりと歌を馴染ませてからじゃないと歌えない曲にも挑戦したというし、逆にスタジオに入ってからノリ一発で録音した曲もあるという。それが結果、まだまだ未完成な彼女の歌い手としての可能性を引き出すことになった。さまざまな曲を歌うことによって道を見つけていく、福原美穂とはそういうシンガーなのだろう。

「どんな曲も自分のモノにできるようになりたいんです。自分のこの声で押し通していきたいんですよね(笑)。例えば、今回のアルバムだと“雪の光”なんかは自分にとって歌いやすい、自分らしい曲。逆に“ICE&FIRE”とか“ドリーマー”は新たに挑戦した曲っていう実感があるんです。そういう意味では、曲を作ったり歌詞を書いたりすることも大事ですけど、いまは歌うこと自体に力を入れたいというか、そうやっていろんな歌を歌っていく自分を見てみたいんです」。

 アマチュア時代には、地元の小さなライヴハウスやデパートのエスカレーター横に作られた特設ステージなんかでも楽しんで歌ってきたという。そこに〈場所〉を問わない、歌えるところがあればどこにでも行くという晴れやかな笑顔こそが、きっといまも彼女のいちばんの武器だ。

「たぶん、女性としても魅力的な人に憧れているんでしょうね。アレサもそうですし、セリーヌ・ディオンもそうですし、コリーヌもサンディもそういうタイプ。私自身もそういうヴォーカリストでありたいですね」。

▼『RAINBOW』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年02月26日 13:00

更新: 2009年02月26日 17:38

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/岡村 詩野

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