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インタビュー

Chris Brown (R&B)

ポップの王位へと一直線に伸びる階段を、驚くべきスピードでまっすぐに駆け上がっていくクリス・ブラウン。待望の新作『Exclusive』を携えた恐れ知らずな若きソングスターの前に、2枚目のジンクスなど存在しない!

自分はスーパースターじゃない


 「ビルボード誌の〈The King Of Pop?〉って見出しには驚いたよ。あれは彼らが勝手に付けたもので、俺は一切関与してないんだ。ああやって紹介されること自体は本当に光栄なんだけど、俺は自分のことをスーパースターだなんて思ってない。できる限りのことをやろうとしているだけで、いままで得てきた成功は自分自身でも驚いてるぐらいなんだよ」。

〈The Next King Of Pop〉だったり、〈The Future Of R&B〉だったり。クリス・ブラウンを取り巻く数々のキャッチフレーズは、本人が戸惑いを覚えるのにも納得のいく大仰なものばかりだ。だが、これは裏を返せば、ヴァージニアの田舎町から突如現れた16歳の一挙手一投足にどれだけアメリカが熱狂したのか、その実態を生々しく伝えるドキュメントとも言える――“Run It!”で達成した男性R&Bシンガーとしては実に10年ぶりとなったデビュー・シングルの全米No.1、その“Run It!”を含めた5曲のシングルはすべてR&BチャートのTOP5圏内にランクイン、それらの楽曲を収めたファースト・アルバム『Chris Brown』のセールスはアメリカだけでも200万枚以上。さらには〈ビルボード・アワード〉における〈Artist Of The Year〉の受賞、PEOPLE誌恒例の〈Most Beautiful People〉への選出、映画「ストンプ・ザ・ヤード」での銀幕進出など、派手な話題には事欠かないクリスだが、なかでも昨年11月の〈ワールド・ミュージック・アワード〉でマイケル・ジャクソン直々に“Thriller”のトリビュート・パフォーマーに指名されたことは彼を〈次代のキング・オブ・ポップ〉とする風潮にとどめを刺したようなところがあった。ここでマイケルのお墨付きを得たことはクリスにとって格好のプロモーション材料になったが、その一方で〈次のアルバム〉に対するハードルを大きく引き上げる結果に繋がった気もした。当初8月に予定されていたアルバムのリリース日がたびたび延期されたことも手伝って、それだけがちょっと心配だった。

「セカンド・アルバムのコンセプトは、幅広い年齢層にアピールできるもの。大人すぎず、でも前のアルバムのように若すぎず、みたいなね。今回のアルバムはファンのみんなに捧げている。俺のすることすべてを見届けてきてくれたファンのために作ったアルバムなんだ」。

 ようやく届けられた注目の新作『Exclusive』。クリスのワシントンDCへの呼び掛けで幕を開け、それに応じてゴーゴーにインスパイアされたビートが飛び出してくる冒頭の“Throwed”のイントロの段階から確実に〈予感〉はあった。そして、12曲目の“Gimme Whatcha Got”が始まったあたりでそれが早計じゃなかったことを確信する。これは想定ラインを悠々上回る傑作だ。流麗なメロディーを溌剌と歌い上げる若きソングスター、という前作のムードを継承しながらも、余裕と自信と成長をスマートに見せつける会心の一撃。よく伸びるストレートが次々と的の中央に投げ込まれてくるような、そんな清々しさがアルバムの全編に漲っている。

「ゴスペルがインスピレーションの源になってる。ゴスペル・シンガーは本当の意味での歌を表現していると思うし、心の内にあるパッションをちゃんと伝えているからね。ゴスペルを聴く時はそういう部分を注意して聴いてるよ。そうすることで、彼らの痛みや喜びを感じることができるような気がするんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年12月06日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/高橋 芳朗