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インタビュー

PRINCESS SUPERSTAR

エレクトロを纏った話題の妖女が、ついに全貌を露わに……姫さま、そんな格好で外に出てはなりませぬ!


  「セレブな雰囲気で、ちっちゃい女の子が憧れるような職業を合わせただけよ(笑)」。

 このように自身のネーミングの由来を明かしてくれるプリンセス・スーパースター。NY出身で、年齢は……そう若くはないみたいよ。両親はヒッピーで、クラシカルなロックやニューウェイヴ、ヒップホップを聴いて育ち、「小さい頃から友達を笑わせるためにラップしていた」延長で96年に『Strictly Platinum』をリリース。自主レーベルを設立した97年には『CEO』、2000年には『Last Of The Great 20th Century Composers』……と、タイトルがいちいちおもしろい通算5枚のアルバムを発表し、膨大な客演を繰り広げてきたMCだ。エロティシズムを露悪的に弄ぶかのようなヴィジュアルや、ユーモラスだがフリーキーでパンキッシュなラップを吐き出しまくる様子から、姫のことはずっと芸術家肌のアングラな人だと思っていた。が、プロディジーやジゴロ作品などへの客演で華々しいダンス・ミュージック方面へグイグイ進出しはじめた彼女は、今年に入ってからメイソンとのマッシュアップ・チューン“Perfect(Exceeder)”を大ヒットさせ、ジゴロのミックスCDを手掛けるなどして、すっかりエレクトロ姫としての認知を広めている。以前からアーマンド・ヴァン・ヘルデンやアーサー・ベイカーをプロデューサーに起用してきた姫には、昨今のエレクトロ好景気が以前から肌で感じ取れていたのかもしれない。

「2001年頃は、ヨーロッパに行ってエレクトロに触れる機会が多かったのね。マッシュアップみたいな手法とか、ダンスやファッションとかが私には凄く新しくて、クリエイティヴで活発で楽しいと思った! パーティーはクレイジーだし、そんな雰囲気を見て〈このほうが何となく私っぽいわ!〉って思ったの。同時に私自身がDJをする機会も凄く増えたのよね」。

  そのような現在の志向もあって、姫の支持基盤は本国USよりもヨーロッパにあるようだが、それに関しては「例えばヨーロッパで人気だった初期のジミ・ヘンドリックスもUSではそんなに人気がなかったのよ(笑)」とのこと。何にせよ、今回登場した初のベスト盤『Best Of Princess Superstar』はそんな好況の産物でもある。ベスト盤とはいえ、先述の“Perfect(Exceeder)”のようなシングル曲や、「素晴らしいDJで、人としても最高だった」という故ディスコDとの“Fuck Me On The Dancefloor”のような外部客演曲など、今回がアルバム初収録となるものも多い。エレクトロなダンス・トラックからエクスペリメンタルなヒップホップまで曲調は多彩ながら、一括りにし難いそれらの曲に共通するのは何とも猥雑なヴァイブだ。それはキッチュでセクシーな姫のヴィジュアル表現にも通じる部分ではある。

「私の魅力はルールに従わないこと。それに、自分の音楽で楽しみ、遊んでいることかな。そのなかで少しディープなメッセージも伝えている。私のメインは音楽で、ちゃんとした音楽じゃなければ人は心から興味を持ってはくれないしね。もちろん、ドレスアップするのもセクシーでいるのも好きだから、ヴィジュアル的な部分はいちばん楽しい仕事よ(笑)。ただ、特に最新の流行とかそういうのには興味ないんだけど」。

 まあ、マントロニクスのキャップに着エロ風の衣装なんてのが最新の流行だったら困ってしまうからね……。

▼プリンセス・スーパースターの参加作品を一部紹介。


クローヴァーの2005年作『Pleasure & Romance』(International Deejay Gigolo)

▼プリンセス・スーパースターの作品を一部紹介。


2000年作『Last Of The Great 20th Century Composers』(Rapster)


2002年作『Princess Superstar Is』(Rapster)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月29日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/出嶌 孝次