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インタビュー

4HERO

未来はどこにある? 独特の折衷性を深化させてきたマーク・マックとディーゴが向かう先には、あらゆる音楽遺産が輪廻を繰り返す芳醇な地平が広がっている!!


「俺にとってはもっとも重要なプロジェクトだし、いちばん思い入れも大きいよ」とマーク・マック。「4ヒーローは俺にとっていつでもスペシャルなんだ」。

 マークとディーゴは、ジャングル/ドラムンベース周辺でその名を轟かせた90年代から現在まで、さまざまなプロジェクトを通じて溢れ出るアイデアを送り出してきた。例えばマークならヴィジョニアーズが記憶に新しいが、それらが4ヒーローと直接結び付くことはないという。

「4ヒーローの音楽は、4ヒーロー独自の時間と場所に生きているって感じがするんだ」。

約6年ぶりに届けられた通算5枚目のアルバム『Play With The Changes』は、4ヒーローの音楽に対する姿勢を物語っているかのようだ。

「このアルバムにテーマがあるとしたら、それはやっぱり〈変化〉なんじゃないかな。音楽的な変化、それから個人的な変化、そういうすべてがこのアルバムに表れてると思うよ。俺たちが影響を受けてきたソウルやジャズに加えて、ジャングルっぽいトラック、フューチャリスティックなニュー・ジャズやブロークン・ビーツ……それらすべてが混ざった曲だってある」。

エクレクティックな音楽性は4ヒーローの個性だが、新作での彼らは特にアルバム全体をしなやかに包み込むバランス感覚に長けた印象がある。

「最初にこのアルバムについてのプランを練っていた時に俺たちが感じていたのは、もっとソングライティングに力を入れたい、4ヒーローのサウンドを1レヴェル上へと持っていきたい、ってことだった。4ヒーローの最高傑作は『Two Pages』だという人が多いけれど、今回はそれに負けないくらいのバランス感覚を持ったアルバムを作ろうっていう意識があったんだ」。

 2人のブラック・ミュージックに対する限りない愛情がナチュラルに伝わってくる『Play With The Changes』は、〈21st Century Soul〉をリアルに体験できるアルバムだ。新人のテリー・ディーヴォスがまるでマナーごとカヴァーしたかのように歌う“Superwoman”には、スティーヴィー・ワンダーの原曲を知らなくても耳を奪われるはず。

「俺らはいつでも特別なカヴァーをやってきた。パトリース・ラッシェン“Wishful Thinking”、ロイ・エアーズ“2000 Black”、ミニー・リパートン“Les Fleur”……そのコレクションにスティーヴィーも加えたかったんだ」。

今回はお馴染みの顔ぶれに加え、かねてから熱望していたジョディ・ワトリーとも共演。シンフォニックな“Give In”には、ホール・オブ・ジャスタスからダリアン・ブロッキントンとフォンテ(リトル・ブラザー)が参加している。

「ダリアンとフォンテの声が4ヒーローのサウンドと見事にブレンドしたトラックだと思う。フォンテとは、リトル・ブラザーが〈Jazz Cafe〉でのショウのためにロンドンを訪れたときに会ったんだ。いっしょに遊んだり、話したりしているうちに、彼が数年来の4ヒーロー・ファンで、俺たちのプロダクションにも詳しいってことがわかってね」。

さらには以前から噂されていたラリー・マイゼルとの共演曲もお目見え。70年代にジャズやR&Bのフィールドで数々のハイブリッドな名作を残したヒーローの参加が実現した。

「ディーゴがアメリカでラリーと出会って制作したんだ。ラリーは俺のフェイヴァリット・プロデューサーでもあるから、彼が参加してくれたことは本当に嬉しいし、興奮してるよ」。

ドナルド・バードでもゲイリー・バーツでもいい。初めて聴く人に新曲だと説明したら信じるかもしれないと大袈裟に例えたくなるほど、ラリーとフォンスのマイゼル兄弟が手掛けてきた作品は普遍的な魅力に溢れている。そのように、過去の記憶を未来の新たな記憶へと導く『Play With The Changes』――これから何度も再生ボタンを押すことになりそうだ。
▼4ヒーローの近作を紹介。

▼『Play With The Changes』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月01日 17:00

更新: 2007年03月01日 19:54

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/栗原 聰