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インタビュー

『オレハシナイヨ。』に見る京都の精鋭ミュージシャン

 本文にもあるように、今作『オレハシナイヨ。』には京都のオルタナティヴなロック勢が多数参加しているが、そこにはプロデュースを手掛けたLimited Express(has gone?)の飯田仁一郎によるところも大きい。飯田は国内外の精鋭バンドが集う〈ボロフェスタ〉を開催するなど、京都を拠点に独自のシーンを作り上げてきた。そんな彼の広い交流を反映した、無名ながらも濃ゆい面々が集結したのが今作であり、ドンは飯田の用意したリングに身体ひとつで飛び込んで、混沌たる異種格闘技戦を展開したわけだ。こちらではその参加ミュージシャンを紹介する。

 まずLimited Express(has gone?)は、くるりやキセルを輩出した立命館大学の音楽サークルにて結成され、BOREDOMS以降のアヴァンギャルド~ハードコア~ノイズ~エレクトロニカなど、さまざまなシーンが混在していた当時の関西の空気をダイレクトに吸収したバンドだ。今作では冒頭のヘヴィー・ファンクをはじめ、キーとなる数曲に参加している。続いて〈京都のレインコーツ〉ことni-hao!の3人娘は、ダイナミックなツイン・ベース・サウンドの上で、ドンとのシャウトの応酬をキュートに繰り広げる。爆音ブルース歌謡ロック・バンド、片山ブレイカーズ&ザ★ロケンローパーティーの東慎也によるクドいまでのギター・プレイと、宙ブラリの山口重之によるラウドなドラム・プレイも光る。

 また、秀逸なのがたまたまライヴで来京していたため参加が実現した二階堂和美+モールス。呼吸のように呟くワン・フレーズだけで延々聴かせるフォーキーな歌もので、即興のカラミはお手の物の二階堂だが、もはや二階堂節ともいえる切ないコーラスはドンの枯れたヴォーカルと予想以上のマッチングを生み出している。ママスタジヲは、飛び交うシンセ音とドンのシャウトが絡むキッチュな電脳ファンクで参加し、エクスペリメンタル・ダブ・ユニットのあらかじめ決められた恋人たちは、これまたズボンズでは考えられない叙情的なピアニカの音色で、〈ドン主演のロード・ムーヴィー〉を思わせる作品世界に不思議な奥行きを与えている。他にも凄腕ミュージシャンが多数参加した今作に、京都シーンの層の厚さを見ることができるだろう。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年01月19日 13:00

更新: 2006年01月19日 15:44

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/井口 啓子

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