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インタビュー

Q-ILL

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月28日 16:00

更新: 2005年04月28日 16:58

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/高橋 荒太郎

ウェルカム・バック!! リリカルなラップと生音のグルーヴで早耳なリスナーを魅了したQ-ILLの帰還だ。待望の新作は鮮烈極まりない傑作に仕上がっているぞ!!


「ビートと質感が圧倒的に違う。最初にdiy Tokionにインスト集みたいなのを渡されたら、ドラムやベースの感じとか、全然質感が違ってて。結果として、diyとの曲はより難解に、アルバム全体としては前回よりは難解じゃないものになったかな」。

 本人が「出たとこ勝負」や「短期間」で作ったと話すわりに、前作『Out of cosmos in the brain』からさらなる質の高さを感じさせる、約3年ぶりのセカンド・アルバム『東京AVANT-GARDE』。今作にある具体的な匂いや質感の変化についてQ-ILL自身が説明すると、冒頭の言葉になる。ジャズをベースにしたバンド、diy Tokionとのコラボ作品ともいえる前作は、言葉とサウンドの有機的な結合の果てに、ひとつの明確な世界観を構築した素晴らしい作品であったが、一聴してわかるはっきりとした違いがある。進化、前進、成長――外枠だけの変化を見てもdiy Tokion以外にもプロデューサーを多数起用し、客演アーティストも増えた。例えばFUNKYMIC(韻シスト)との“路上”や、ウッドベースを操るタカツキとHisomi-TNPとの疾走感溢れる“RHYME WIRE”、スタイルの異なるSD JUNKSTAと合体した“Tokyo Avantgarde”、さらにはSpinna B-illのヴォーカルが何とも心地良い“NOAH”などを筆頭に、今作に並ぶ楽曲群は従来のQ-ILLの持ち味を維持したまま、その新たな魅力を伝えている。

「人が入ることで自分にないミラクルが起きたと思う。ネットワーク上で人との意思疎通ができたり……あくまで仮想現実だとしても、お互い会ったこともある人間がそこで親密な意思疎通をするのなら、凄く便利なツールとしてそれが活かせるわけで。今回はそれを意識して、通常はアクセスできない秘密の場所に1ヴァース目まで出来てる音源をアップしておいて、それをゲストが勝手にダウンロードして自分のパートを考えてもらう、っていう無機質なやり方も試みた。レコーディング当日まで何が出てくるかわからないままなんだけど、最終的には直接出会ってコミュニケーションをとる形で作り上げてるから、すごく有機質になっておもしろかったですね。僕、廃墟……軍艦島とか好きなんですけど、朽ちた階段とか無機質なものが、全体像にまとまると意思を持ちはじめるような……そういう感覚にゾクゾクするのと似ている。時間というものに囚われていないようでも、時間が起こしたミラクル、みたいな」。

 思慮深い独特のリリック世界も変わらず、宮沢賢治の詩をQ-ILL独自の解釈で現代訳した“カーバイト倉庫”も彼らしい視点だといえるだろう。感情や感覚を言葉にし、その集合体となった数々の楽曲がさらに集合してひとつの作品となる。そうやって構築されたQ-ILLの世界は、普遍性を伴って魅力的に響き続けているのだ。

「自分のなかで変わったのは、生きている現代のタイム感。前は〈あ、自分はこの瞬間を知ってる〉っていう、現在の時間軸から見た過去にいるのが気持ち良かったりしたけど、いまは自分にとっての現在という時間が未来だというか……現在が過去になる事実を知ってるから、いろんなことを楽しめる。自分自身で5年くらい前に作った曲とかを聴いて、感化されたりすることもあるんですけど、自分のその瞬間には嘘をつかずにやってるから、久しぶりに昔の写真を見たりした時にフワリとしたりする感覚みたいな……」。

 彼は初めてラップした人の1小節目に特に注目するのだという。やがて失われてしまうことの多い初期衝動や、その人がそもそも保持しているフレッシュさをそこに見つけることができるからだそうだ。それは歳を重ね、経験を蓄積し、ポジティヴな意味で変わっていくQ-ILLが、変わらない自身の本質を確認していく作業のひとつなのかもしれない。だからこそ、Q-ILLの作り出す言葉と音楽にタイムレスな普遍性を感じ取ることができるのだろう。

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