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インタビュー

The Mars Volta(2)

創造の自由=マーズ・ヴォルタ

 エモーショナルなシャウトはもちろん、美しいバラードを情感たっぷりに歌い上げるセドリック(・ビクスラー・ザヴァラ)もヴォーカリストとして著しい成長を遂げていて、特に艶っぽい歌い回しには、ゾクゾクとさせられる。また、盟友ともいうべきレッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテとフリーの参加も話題だろう。

「僕たちにとって、彼らは〈レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョンとフリー〉ではなく、いっしょに外で遊んだり、家に来て音楽を聴いたりする親友なんだ。子供の頃って、親友が遊びに来ては〈僕のオモチャはもう飽きたから、君のオモチャを貸してよ〉って遊んだりしたもんだろ? 僕たちはまさにそんなノリの仲間なんだ(笑)。今回は、僕がフリーの家に遊びに行ったとき、彼にトランペットを勧めたんだ。そしてそのままスタジオまで行って、トランペット・パートを即レコーディングしたんだよ」。

 多くのアーティストが創作上の自由を勝ち取るために、さまざまな戦いを繰り広げてきた。それはマーズ・ヴォルタにとっても同じことだろう。いや、彼らだからこそ、その戦いは一層厳しいものだったに違いない、と思いきや……。

「いや、僕たちはやりたいことを自由にやっている。それが不可能だと感じたことはない。決して難しいことではないよ。自分たちにはルールなんて一つもない。ポップ・レコードを作りたいと思ったら、作ることができる。もちろん、〈ああしろこうしろ〉と言う人は常に存在するよ(笑)。〈ATDIのサウンドは好きだけど、いまやっていることは理解できない〉って言う連中もいるさ。でも、誰がなんと言おうと、僕は気にしない。周りの意見をいちいち気にしたり従ったりするのは、ハートにナイフを刺したまま生きているようなものだ。周囲の意見を聞き入れていたら、ハートは腐ってしまう。僕はこれまでずっと、自分の気持ちや直感に従って音楽を生み続けてきた。これからもそうするつもりだよ。この宇宙に存在しているという実感、その瞬間瞬間をこよなく愛していきたい。そして、そのあいだに自分が変化したり向上したりできるチャンスを心底楽しみたいんだ」。

 オマーの辞書には〈限界〉なんて言葉は、はなっから存在しないらしい。つまり、彼らの新作『Frances The Mute』を聴いて、〈限界を超えろ〉などと興奮しているかぎり、限界を超えて、向こう側に突き抜けることなどできないわけだ。もっともっと自分自身を解放できれば、自分のなかにある限界を取っ払うことはできるのだろうか? いや、いまはそう信じていたい。


2004年にリリースされたオマー・A・ロドリゲス・ロペスのソロ・アルバム『A Manual Dexterity : Soundtrack Volume One』(Gold Standard Laboratories)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年03月03日 11:00

更新: 2005年03月17日 19:03

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/山口 智男