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インタビュー

コザック前田

夕方6時になるといつもフラリと現れるアイツ――そんな感じでヒョロリとソロ・アルバムをリリースした、ガガガSPのコザック前田。祭りの準備はできてる?


 ガガガSPってアホだよなー、特にあのヴォーカルのヤツなんて一小節に言葉を詰め込み過ぎじゃない? でも、なんでか燃えるんだよな、あのムチャな感じが良くってさー……などと昨年リリースされたガガガSPの『オラぁいちぬけた』を聴きながら思っていたのだが、結局のところ、その燃える〈なにか〉の正体はわからずじまい。だが、そのヴォーカル=コザック前田が某所で発言していた〈ガガガは農民一揆みたいなもんですから〉という言葉には深く納得させられた。そうか、だから燃えるんだ、と。

 このたびそのコザックのファースト・ソロ・アルバム『東須磨は夕方6時』がリリースされた。あの高濃度の『オラぁいちぬけた』に続くソロ作ということで、そこになんらかの意味というか深読みをどうしてもしてしまうんだけども、「深読みはしないほうがいいですね。(深読みしても)なんも出てこないし(笑)」とあっさりかわされてしまった。

「別にガガガにこだわってるわけじゃないですからね。要は虫のいい人生を送りたいんですよ。そういう軽快さ。ガガガでやってて急にソロを出したりとか、それもまた虫のいい話で(笑)」。

「もともと機会があれば作りたかった」というソロ・アルバムだが、そもそもガガガ以前にギターでの弾き語りをやっていたコザックにとってこの流れはごく自然なことだったのだろう。というわけで、「ソロでやるから世界観を変えるとか音楽性を変えるとか微塵も思わなかったですね」という言葉のとおり、このアルバムはガガガのとき
のコザックと比べても呆れるぐらいになんら変わりがない。とはいえ……。

「今回もいい意味でテンションが上がってるんですよ。前(『オラぁいちぬけた』)の躁鬱的な感じじゃなくて、徐々に上がってきてる感じ。そういう意味では毎月アルバムを出していきたいんです。まあウンコと同じですね。溜まってったら腹が膨れるじゃないですか。自分のなかのテンポを忠実に守っていかないとシンドクなるんです」。

 などと話している側から「ちょっと下痢してて、トイレに行ってきてもいいですか?」と席を立つコザック(笑)。曲を作るのが早ければウンコをするのも早い彼だが(あれ?)、1日に3曲ペースで録音/ミックスを行ってしまったという今作の制作スピードもソートー早い。だからこそ『東須磨は夕方6時』は全力疾走で駆け抜けるコザックの〈今〉をギリギリのところで掴みとっている。そんな猛ダッシュのなかで出会った彼のアイドル、泉谷しげるとの共演(シングルとしてもリリースされた“生活”)は今作の制作にあたって大きな影響を与えたようだ。

「泉谷さんとやることによって開けたところはありますね。56歳になっても22、23歳のときのキャラを貫いているのがかっこいい。人のことを考えつつも大人げなかったりとか、やっぱりアホでガキな精神を忘れてないところに、ひさびさに自分の性分を震わせられるところがあったんですよ」。

 今作にはその泉谷のほかにもYO-KINGやトータス松本、峯田和伸(銀杏BOYS)、そしてガガガの山本聡も参加。だが、なかでも全7曲に参加しているサンボマスターは、それらの楽曲にコザックを含むローパワーズ名義としてクレジットされるほど重要な存在であるようだ。

「〈サンボとやったらどうなるんやろ〉っていうのがまずあって。(ガガガでは)やりたくてもできなかったことをやった、という部分はありますけど、やってしまった以上は重要なことではないですね。そもそもこのアルバムはソロ名義やけどバンドでやってるようなもんですから。ローパワーズでライヴもやるし、作品も作りたいんですよ」。

 そのように次々と新たなるプランを口にしていくコザック。だが、そんな高いテンションが失われることは恐くないのだろうか?

「それはないですね。……震災で水道が出なくなったときに、みんなが汲んでいた山の水があったんですよ。ここ1週間ぐらい、使う水はすべてその水だけで生活してたんです。案の定いま下痢してるんですけど(笑)。でも、そうやって自分を盛り上げていくのが楽しいんですよ。僕はそういうリズムで生きてるので、音楽もいっしょなんです」。

 最高の言葉だ。これ以上なにを書き足す必要があるのだろうか。

▼コザック前田およびガガガSPの作品

▼『東須磨は夕方6時』に参加したアーティストの作品(の一部)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年03月25日 14:00

更新: 2004年03月25日 16:50

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/大石 始