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インタビュー

Thee Michelle Gun Elephant(2)

ぜんぜん普通。いつもどおり

 ミッシェル・ガン・エレファント。フォームの美しさ、腕の振り、スタミナ、経験、モチベーション、支持者、そして球種。どれをとっても球界……おっとロックンロール界にあって、超一流のピッチャー……おっとバンドのひとつ。

「とにかく、いまある曲を全部録る、つって録ったんだわ。で、1枚に全部入んないし、2枚組にすんのもヤだなと思って、振り分けようかって。したら、いまのツアーが終わってから違うのを出すのがいいんじゃないかっていう話をして」。

 ツアーの合間を縫ってインタヴューに応じてくれたチバユウスケ。ミッシェル・ガン・エレファントの声と言葉を担う男。片手にはビール。もちろんこちらの片手にもビール――彼らによる最新のレコーディング・セッションは、3つの作品に結実した。ひとつは『SABRINA HEAVEN』と題された7枚目のオリジナル・アルバム。ひとつはライヴ会場で先行リリースされた限定シングル“Girl Friend”。そしてもうひとつは『SABRINA NO HEAVEN』と題されたミニ……アルバムでいいのかな? これは。

  「〈ミニ〉とは思ってないんだわ……ただ、曲が少ないっていうだけ。それはそれで完結してるから。そうそう、さっきの取材でも言われたんだけど……〈なんで45分/45分にしなかったんですか? バランス悪いですね〉って(苦笑)。ドンピシャのバランスだと思ってたからさ!……言われてみればそうなのかな?と思ったけど」。

 ミッシェルは、その、オーソドックスでありながらも独自な演奏と言葉とで綴られたロックンロールでもって、非常に色彩豊かな風景を見せてくれる(そう、音なのに、見える!)バンドだ。それこそ、映画というメディアに拮抗するほどの、風景を。

「毎回言われる、〈ロード・ムーヴィー〉って。映画的、映像的ってのはどうしても言われる……しょうがないよ、ロードやってんだもん(ニヤリ)。今回、ずっとリハ入ってたよ。コンセプトとかではなく、もっと演奏の感じっちゅうか……それができるまで、ずっと延々、リハやってた。(以前と)スタジオは変えたんだけどね。いいスタジオだった。〈いい〉っていうのは、俺たちにとって、今回のアルバムにとって〈いい〉ってだけ。あとはもう、ぜんぜん普通。いつもどおり。飲みながらやったりとかね(笑)」。

〈普通〉の度合いがぜんぜん違う。と思う。喉という肉体の存在を強烈に聴き手に感じさせるチバのヴォーカリゼーションも含め、いままで以上に演奏者に非常なタフさを要求するような楽曲がずらりと並ぶのが、今回の作品なのだし。

「今回のツアーね、そうなんだよ……けっこうキツいんだよね(ニヤッ)。ここ何年か、そういうのぜんぜんなかったんだけど、初日やったあとにね……アレ? これかなりイカねえとヤバいな!と思って……乗り遅れたらもう、アウト。ま、危ういのがよかったりもするんだろうけど……大変だよ!(シミジミ)」。

 楽曲のタフさは、その尺にまで及ぶ。彼らの語り口の豊かさを饒舌に示すロックンロール・ソングとしても、これまでのミッシェル・ソングとしても、長尺な楽曲群。

  「まあ、そういう感じのときだったんじゃないのかなあ。〈もう一回、いまのフレーズ聴きたいね〉とか、そういうふうに演ってて……延々演っちゃうからね。ドアーズの“Light My Fire”とかさ、延々続くじゃない? でもあれ、長いと思わないじゃん。テレヴィジョンとかさ……そういやビートルズも最近聴いてたな……『Anthology 2』!(笑)。すっげえハマってたんだよな。なんか、気分的にハマってたっていうか……デヴィッド・ボウイの〈Ziggy Stardust〉とか、さ。昨日も聴いてた。〈Ziggy Stardust〉ってさ……あ! それこそ『Marquee Moon』(テレヴィジョン)とかドアーズとかもさ、1個1個の音の輪郭がすっごいきれいで……たぶんね、それに近いことをやりたかったと思うんだよ。なんでこんなにバリーン!!って聴こえるんだ?っていうかさ……だから最近、そういうの聴いてるのかもしれない。それに近いものがある気がしたんだわ」。

 それ、気のせいじゃない。音ひとつひとつのエッジのシャープさは、結果、生々しいドキュメント感と、ロックンロールには不可欠な演奏の艶かしいセクシーさに結実しているのだからして。それにしてもやはり、それを可能にしているのはこのバンドのアレンジ能力の高さのように思う。ヴィジョンを音像化するのに、ストリングスによるオーケストレーションなどの発想は……ない?

「やっぱりね、基本的に4人でやってるから、オーケストラとかそういう考えに行く前に、もう完結してるときのほうが多いんだと思うんだよね。そういうのって、たとえば4人で録り終わったあとに、そこにストリングスが見えたとか、もっと景色を広げたいからとか、そういうのでたぶんやってくもんだと思うんだわ。そうじゃないとありえない。まあ、そう思ったらやるだろうし。実はヴァイオリンやってたんだけどね、俺。いまは弾けないけど。小学校2年くらいまでやってたのかな?……でもあれがなかったら、たぶん音楽やってなかったんじゃないかなって気がするけどね」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年06月26日 17:00

更新: 2009年07月23日 23:34

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/フミ・ヤマウチ