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インタビュー

桑田佳祐(3)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月03日 17:00

更新: 2003年02月13日 10:56

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/長谷川誠

あらゆる世代に向けた作品

『ROCK AND ROLL HERO』は、等身大の桑田佳祐が浮かび上がってくると同時に、いまの時代を生きる人々に強く響く普遍性を備えた作品になった。

「今回、みんなでセッションしたことがいちばん重要なんですよ。歌詞を入れて、歌入れをすると、最後は自分のものになるんだけど、自分だけの世界じゃなくて、エンジニアも含めて、バンドのメンバーと共有できるものにしたいなと。いい意味でセッション・ワークの着地点に今回の歌があったという感じですね」。

 シニカルでありながら、同時にエネルギッシュな歌の世界が展開されるタイトル曲をはじめ、歌詞はシャープで、かつ深い。

「当時はビートルズ、ツェッペリンみたいな大型台風的存在もいたけれど、もっと中型小型の存在もたくさんいて。スレイドとかゲイリー・グリッターとか、ああいう微妙なフェイク・スターみたいな存在も好きだったんですよ。一発屋とか、B級の二番煎じのロックンロール・ヒーローとか。そういう人たちのいかがわしさも好きで」。

 いかがわしさ。ばかばかしさ。ふてぶてしさ。このアルバムはそんな要素も呑み込んだ人間臭いアルバムだ。最終的なところで人間が本来もっている生命力のたくましさが浮かび上がってくる。徹底的に嘆いたり、哀しんだりする歌“どん底のブルース”も、振り子が思いっきりネガティヴな方向に振れたからには次はポジティヴな方向にいくだろうという予感を孕ませている。ラストの“ありがとう”も、すべての歌を受けとめていく懐の大きさを備えたナンバーだ。

「最後にそういう言葉があったらいいかな?救われるかな?って思ったんですよ。今回、バンドのメンバー、スタッフといっしょにレコーディングしてきて、肯定的でいちばんいい言葉は〈ありがとう〉だなと素直に思えたので、入れてみようかなと。ただ、この曲の前後で落差は激しいですけどね。いきなり学校の講堂でピアノ伴奏をバックに歌っている小学生のころに戻っちゃうみたいな。黒澤明監督の〈夢〉じゃないけど、現実なのか非現実なのかっていう。音楽やってると、必ず裏返しがありますから」。

 裏返しと言うと、アルバム・タイトルの『ROCK AND ROLL HERO』も彼らしいひねったセンスが感じとれる言葉だ。

「『ROCK AND ROLL HERO』という曲ができたので、タイトルにしたってことなんですけど。字面もいいかなと。〈ROCK'N ROLL〉じゃかっこよすぎるけど。自分自身、ロックンローラーでもヒーローでもなんでもないし、すべてが裏返しにあるんだという暗喩にもなってるところがいいかなと思ってます。きっと僕みたいなフェイク・スター的キャラがつけるから、いいんじゃないかと思うんですよ」。

 そういう姿勢こそが〈ロック〉なのかもしれない。大胆で柔軟で自由自在でタフな作品。そしてまたこれはあらゆる世代に向かって拓かれた作品でもある。

「自分より上の世代もだけど、下の世代ともちゃんとコミュニケーションをとってなかったんじゃないかという思いがあったんですよ。もっと腹を割って、等身大で話していかなきゃいけないんじゃないかなって。そういうトラウマ、取り返さなくちゃいけないという思いが、こういうシンプルなアルバムを作らせてるんだと思うんですよ。等身大の自分を見ていただくしかないなって。で、物足りないって思われたら、しょうがないってあきらめるしかないなって」。

 最後もこんな彼の等身大発言で締めたい。

「ライヴがやりたいやりたい、ってみんなで言いながら作ってきたので、ドーム・ツアー、楽しみですね。でも最近になって、そう言えばドームってデカいよな、と気づいて、ちょっと眠れなくなってきてるんですけどね(笑)」。

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