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インタビュー

元ちとせ(2)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年06月27日 15:00

更新: 2005年05月10日 20:36

ソース: 『bounce』 233号(2002/6/25)

文/大石ハジメ,内田暁男

唄姫が〈ハイヌミカゼ〉を吹かせるまで

 元ちとせが奄美大島を離れて上京してきたのは98年の10月。初秋の東京に降り立ったひとりの女の子は、それから4年弱の歳月を経て日本中の注目をもっとも集めるシンガーに成長した。順調なサクセス・ストーリー? いやいや。その神秘的なたたずまいと声にどこか浮き世離れしたイメージを持つ人もいるだろうけど、素顔はあくまでもごく普通の女の子。以下の上京に関する述懐は、それを証明する。

「たぶん人はずーっといっしょに過ごしてきた人たちが大好きなはずで。その場所もすごく心に残っていて。やっぱりそこを離れるとなるとすごい決心をするというか、勇気を振り絞って出てくるわけですから。その人たちもいない、その町もない、その空気も流れない、いろんな言葉が通じないかもしれないとかすごく不安で不安で。東京でできる自信がなかったと言えばなかったと思う、その時は。売れたとか1位になったとかそういう数字じゃなくて、自分の時間を使って私のライヴを観にきてくれる人たちとか、そんなあったかさに触れ合えるとは本当に思ってなくて」。

“ワダツミの木”に続くセカンド・シングル“君ヲ想フ”や、インディーでのミニ・アルバム『コトノハ』に収録の“三八月”でも当時の心境が歌われてるけど、そこには頼ってきた人たちの手を離れる不安感と未知の地へと向かう勇壮さが見事なまでに表現されている。

東京へ出てきた元ちとせは、彼女のサウンドを形作る最良のパートナーであるプロデューサー、間宮工や前述の“三八月”を作曲したハシケン、のちに“ワダツミの木”を書く上田現などとの運命的な出会いを果たしていく。そしてインディーにて2作のミニ・アルバムをリリースしたのちメジャーへ進出、ご存じのとおり大旋風を巻き起こすことになるけれど、だからといって彼女は浮かれたりしない。それは、そうやって出会ってきた一人一人に彼女が絶大な信頼をおいているから。ファースト・フル・アルバム『ハイヌミカゼ』のレコーディングを振り返る彼女に、好況に対するプレッシャーはない。

「レコーディングに関しては、私は全く苦労してなくて。間宮さんもハシケンさんも上田さんもずーっといっしょにやってきてくれますから。本当に繋がりがあって繋がって繋がってできていった。生活するなかで出会った人たちと作り上げてきて。すべてにおいて楽しかった。周りの曲を作る人にしろ音を考える間宮さんにしろ、すごく苦労しているんだと思いますけど、一切そういうところを私には見せない。だから本当に唄を歌うというところに集中させてもらって」。

奄美大島で培われた島唄の滋養をたっぷりと吸収した喉。そして放たれる圧倒的な唄。それは『ハイヌミカゼ』のあらゆるメロディーやリズムに深いドラマツルギーを宿らせている。そのドラマツルギーを成す要素のひとつは、もちろん奄美大島の情景。とくに、〈八月踊り〉という夏のお祭りはアルバム全編に色濃い影を落とす。南風の方言であるという〈ハイヌミカゼ〉はそんな夏のお祭りに吹きぬける。

「八月踊りは夏の十五夜にある盆踊りみたいな行事。奄美って〈拝むぃぶさ〉とか〈拝むぃぶしゃた〉って〈ハロー〉みたいに使うんですね。八月踊りが始まるときや人が集まってくるときには必ず〈こんにちは〉とか〈こんばんわ〉とかの挨拶があるし、やっぱり聴く人に最初に会いたかったという意味もこめて(そうした言葉が歌われる)“サンゴ十五夜”という曲をいちばんに並べました。で、曲を並べていくと八月踊りの流れに似ているなと思って。八月踊りって年に一度魂といっしょに過ごすという意味もあったりして。そういうことを踏まえてハイヌミカゼっていうのを感じてほしかったので」。

奄美大島からやって来た唄姫が吹かせるハイヌミカゼは時代を揺るがす。夏の宴に参加するときは挨拶を忘れずに。拝むぃぶしゃた!

『ハイヌミカゼ』に関わったアーティストの作品を紹介。左から、上田現『夕焼けロック』(eLe/BELO)

元ちとせのこれまでの作品を紹介。左から、2001年にインディーズ盤としてリリースされた2枚のミニ・アルバム『Hajime Chitose』『コトノハ』(共にAUGUSTA)、メジャー・デビュー・シングル“ワダツミの木”(エピック)

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