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インタビュー

Buffalo Daughter(2)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月16日 13:00

更新: 2003年03月06日 20:25

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/村松 タカヒロ

I??

 僕らはロックを聴く。

ニュー・アルバムを心待ちにするアーティストさえある、もちろん。贔屓のロック・バンド。Buffalo Daughterを、僕たちは3年以上待ってた。

「達成感ですか。それは(別のインタヴューでも)何度も訊かれたね……。でも、そんなのはないですよ。3年もかかってるし。足並みが揃わなかったんだよね、3人の。それが今年の春くらいになって、やっと」(シュガー吉永、ギター/ヴォーカル/TB-303)。

彼女たち(ひとりはもちろん彼、だ)は、93年、Buffalo Daughterという名前でやって来た。このバンドは僕たちを面喰らわせた。平原を、ビッグ・マフで歪ませた砂ぼこりをたてて疾駆する牝バッファロー。エレクトロニクスにつながれた尻尾(シールド)はもうもうと湯気を立てる。キング・タビーを援用したアシッド・ボックスのシークエンス上でコラージュされるターンテーブル、ギグの呼びものだったシルヴァー・アップルズやESGのカヴァー。

Buffalo Daughterはいつもアヘッドしてた。新しいキーワード……音楽を聴くたび耳をまっさらに更新しようと思って手ぐすねひいて待ってる聴き手に共有されていくそれ、センス(キラキラしてる!)を、いつでも小節にのせてきた。僕は、Buffaloはそれさえあれば、ばんばん新作をリリースできるバンドだって思ってた。

「『New Rock』のときってね、それがジャーマン・ロックだったりしたんですけど、今回はなかったんだよね。前はスタジオでリハーサルとかしてると〈このレコード聴いた?〉っていうような話になったんだけど……(この3年の間には)ちょうど世の中がいろいろと動いてたこともあって、〈あのニュース観た?〉とか〈あの政治家の発言どうよ!?〉だとか、そんな話ばかりするようになったのね。そういったことが最終的には、『I』の音楽に結びついてるかもしれない」(ムーグ山本、ターンテーブル)。

そうして、Buffalo Daughterの『I』がリリースされる。

「重たい思いをすることも以前に増してすごく多くなったし……最近ではテロのこともあったしさ。重たいままだったらたぶんアルバムは出せなかったんだけど、でも、そこでちょっとこう、光が差し込んだような感じがみえたんで、それで収束した」(シュガー)。

『I』は、賞賛されるべき、すばらしいアルバムだ。『I』にはロックさせられる。『I』は、僕たちを力強く鼓舞し、それに夢見心地にもさせてくれる。

『I』は、Buffaloのファンなら皆承知してる、シュガーと大野の美しいコーラス(まったく、どれだけ待ち焦がれた?)に先導され、始まる(“Ivory”)。そして、アルバン・ベルクのようなストリングスを経て、僕たちは電子音に模したコミュニケーションの網を渡り(“I Know”)、レッド・ツェッペリンに会う(“Earth Punk Rockers”)。おなじく、オールド・ロックのリフを伴った“Volcanic Girl”のウインクにウキウキさせられているのも束の間、“Five Minutes”のテクノ・ファンクに懐柔させられる。それから、〈半熟卵と塩いれ容器の載った朝食テーブルでフランク・シナトラきどりのロボットが歌う〉のを、耳にする(“Robot Sings”)。“I”は恋人と枕を並べて聴くべきだ。僕が鈍感だからだろう、こんなふうにとろけるラヴソングを聴いたのはプリンスの“Do Me Baby”以来だ。“Mirror Ball”は!“Mirror Ball”はなんていったらいい? それは、降ってくる。地球がね、このガタピシいってる地球がミラーボールだったらっていう……それはとんちんかんな夢。でも、僕たちはこの曲を聴いている間、その夢を見る。〈完璧な球が/宙に舞う……〉。

付け加えなくちゃいけない。『I』には、シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハー(!)、マニー・マーク、ジョン・マッケンタイア、チボ・マットも参加してる。

そして、Buffaloはハートの大きな音楽(? だって、そうだもの)をやっている。

「言葉は大きいけど、『I』はユニヴァーサルな気持ちで作ったの。結局、世の中の動きにつれての心境の変化みたいなものって私たちだけのものではないと思うし、世界に共通してると思う」(シュガー)。

このところ、ポップ・ミュージック(の話し方)はますますせせ細くなってきてるように思う。細部で、ディテールで競い、スタイルに寄りかかっているものがやたらと多い。でも、今年のアルバムの何枚か……ASA-CHANGの、パードン木村の、砂原良徳の、コーネリアスの……(これらがリリースされたことで僕は2001年を祝福したいと思う)、それにBuffalo Daughterの『I』。そうしたアーティストたちは、また別のことを言ってるし、きっと変化してきてる。

「そうだよね。そのへんみんな、共通に感じてることなんだよね。コーネリアスの『POINT』を聴いても〈やっぱり小山田君もこういう感じなんだ〉って思ったし」(シュガー)。

どこが変化、してる?

「ひとつにはみんな、すごくレコードを買って……どんどん買って買って、みたいなことがなくなったじゃない?」(大野由美子、ベース/ヴォーカル/プログラミング)。

「買って買って、サンプルして貼ってっていう、そういうのはね」(シュガー)。

「いまは価値の忘れられたものもそれなりにカテゴライズされてるし、ソフトはぜんぶ情報化してて、ほんとにちっちゃな〈5.7〉から〈5.7.1〉ぐらいのところでヴァージョンの差異を聴き分けるっていうことに陥ってる。なんなんだろう、無理してレコードからなにかを得ようとするのは、ちょっともう不自然だなってすごく感じる」(ムーグ)。

「前は、消費が楽しかったんだよね。消費し尽くしちゃったんだよ」(大野)。

Buffaloは、消費と情報のオーヴァー・フロウを、もう、くぐり抜けた。

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