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メイヴィス・ステイプルズ(Mavis Staples)、ウィルコ(Wilco)のジェフ・トゥイーディ(Jeff Tweedy)と完成させた最新アルバム『IF ALL I WAS WAS BLACK』

Mavis Staples

ステイプル・シンガーズの一員であり、R&B/ソウル界のレジェンドであるメイヴィス・ステイプルズ。彼女が三度ウィルコのジェフ・トゥイーディと組み、ニュー・アルバムを完成させた。前作から1年という短いスパンでリリースされた本作『IF I WAS WAS BLACK』は、過去の亡霊に憑りつかれたまま、様々な問題であふれかえる現代アメリカに向けた10曲が収録された、“今聴くべき1枚”である。

昨年末からアメリカ各地で巻き起っている人種攻撃や排斥主義を目の当たりにしてきたメイヴィスとジェフ・トゥイーディは、分断されつつある自分たちの国に対して声を上げたいと感じるようになったという。「私たちは今、お互いのことを、本来そうあるべき形で愛し合うことができていないと思う」彼女は、まるで幸せになる秘訣を分かち合うようにかたりこう続ける。「世界を素晴らしいものにしたいと言っている人たちもいますが、私たちが素晴らしさを無くしたことはこれまでに一度もありません。私たちはただ、分裂してしまっているだけです」 一方のジェフも、現在のアメリカの状況を取り上げたいと思った理由についてこう説明している:「俺はずっと、芸術は、一つの政治的声明だと考えていた――破壊ではなく創造の側に立っていようという程度にね。でも、現在この国に起きていることと真正面に向き合わないのは、何かに加担しているような感じがするんだ」 “分断の時代に対して声を上げよう”という共通した意識のもと、ここに人種と世代を超えたコラボレーションが再び生まれたのだ。

2010年の『YOU ARE NOT ALONE』、2013年の『ONE TRUE VINE』で既にメイヴィスとアルバムを2枚作ってきたジェフは、これまでの仕事での経験を元に、彼女が歌いたい歌詞を考え、彼女のバックバンドを念頭に入れながら曲作りを行った。アルバムに収録されている10曲には、時折怒りを露わにした歌詞や、現実に起こった出来事を思い起こさせる表現があったりもするが、具体的な固有名詞が出てくることはない。最近起きた事件をはっきりとテーマにしなかった理由について、ジェフは、実際「Little Bit」を作っていた時、暴力事件や不当な扱いなどを受けて亡くなった人たちの名前を上げていこうと考えたが、あまりにも入れるべき人たちの名前が多すぎたため、全員の名前を入れるのは不可能だった。そこで、彼はより普遍的なアプローチをとることにした。「私たちは、特定の人物に向けた曲を作ったわけではなかったのです」そうメイヴィスは説明する。「歌詞を追えば、これが過去と今日、両方についての曲だと分かるでしょう」

それでも怒りが歌詞のあちこちに表れている。例えば「Try Harder」は“悪は世界にあり、私の中にもある”で始まり、この現状を受けいることに反対を唱えるアンセム「Who Told You That」では、”彼らは嘘をつき、それを恥じる様子のない”と厳しい言葉を放つ。そんな彼女の歌に呼応するように、「Try Harder」のギター・ディストーションや「Little Bit」の危険を知らせるようなベース・ラインなど、音楽もまた落ち着かない不安なサウンドを奏でている。

現在のアメリカに対しての怒りを表しながらも、2017年のメイヴィスは、怒りと絶望の中にもながれ、それを覆ってしまうほどの愛を現していこうと考えている。実際に彼女の歌は、叩き付けるようなものというよりは、潮の満ち引きのような印象がある。それはきっと彼女が変化をもたら作品に目を向けることで、怒りに立ち向かっているからだろう。本作『ALL I WAS WAS BLACK』は、黒人が道端で射殺されてしまうようなアメリカの一面から目を逸らすことなない。しかし、我々一人一人が、自分たちの悪い部分を克服することで、この国がより良いものになれるという考えを表している。そしてメイヴィスは、それを実現するためのアイディアを持っているのだ。「我々全員をただの人間同士として1つにする――それが私の願うことなのです。誰も私を止めることは出来ない。誰も私を挫くこともできない。私は愛しすぎるぐらいの人間だから」そう語り、彼女はこう続ける。「ここにある歌は世界を変えるでしょう」

タグ : ソウル/R&B

掲載: 2017年10月30日 11:25