【Ricercar】ヴィーラント・クイケン~ヨハン・シェンク:作品集

ヴィーラント・クイケン、フランソワ・ジュベール=カイエ
シェンク(1660~1716以降):『ライン川のニンフたち』
~二つのヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ集~
【曲目】
ヨハン・シェンク(1656年頃~1716年以降):
ライン川のニンフたち~二つのヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ集 (1702)
(1) 第3ソナタ ニ長調
(2) 第7ソナタ ロ短調
(3) 第2ソナタ イ短調
(4) 第11ソナタ ト長調
(5) 第8ソナタ ハ短調
(6) 第12ソナタ ニ短調
【演奏】
ヴィーラント・クイケン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
フランソワ・ジュベール=カイエ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
巨匠ヴィーラント・クイケン、電撃最新録音!
ガンバという楽器の深淵を極めた弾き手が、フランス・ドイツ・イタリアのさまざまな音楽文化のはざまで綴られた超・重要作曲家と向き合う。
かそけき美音、雄弁なメロディ、たくましくも繊細な対話がうつくしい、羊腸弦芸術の至宝…、ヴィオラ・ダ・ガンバ演奏芸術の頂点に立つ、並ぶ者なき名匠。
およそ古楽というものが盛んになりはじめて以来、私たちはジョルディ・サヴァール、フィリップ・ピエルロ、パオロ・パンドルフォ、ジョナサン・ダンフォード、ファミ・アルカイ…と、数々のとてつもないガンバ奏者たちと出会ってきたわけですが、そうした人々の源流となって20世紀におけるガンバ芸術復興の屋台骨をつくっただけでなく、自ら第一線の凄腕プレイヤーでありつづけて今にいたる伝説的巨匠ヴィーラント・クイケンの存在感は、今でもやはり、ひとつ頭飛びぬけていると言わなくてはならないでしょう。
30年以上にわたって欧州古楽界屈指の良心的レーベルでありつづけてきたベルギーの“Ricercar”から、そんな“ガンバの導師”たる人物の最新録音がリリースされたとあっては、どうして心動かされずにおれましょう。
しかも、演目はバロック・ガンバ芸術のなかでとてつもなく重要な存在意義を誇る、諸様式の要にいた作曲家・ヨハン・シェンクの傑作曲集とは!チェロに似て足で挟んで弾く古い弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバは、もともとイタリアや英国で合奏用楽器として、あるいは無伴奏などの独奏楽器としてルネサンス末期に大活躍をみせたあと、17世紀にはその人気がドイツにも及んだほか、フランスでは独奏楽器として、あるいは二つのガンバによる二重奏で、独自の音楽芸術がはぐくまれたことで知られています。とくに有名なのが、映画『めぐり逢う朝』でも有名になった“天使のように弾く”マラン・マレの曲集5冊…、シェンクは17世紀半ばにアムステルダムで生まれたドイツ人作曲家で、諸民族の行き交うこの国際都市で何冊もの作品集を発表したあと、1696年には当時デュッセルドルフ(つまり、フランスとドイツの間を流れるライン川のそば!)にあったライン選帝侯の宮廷に雇われ、さらなる傑作を続々生みました。
彼の曲集だけでなく、イタリア人作曲家たちの最新の傑作を続々楽譜出版していたE.ロジェとの親交、フランスに近い場所で欧州中の最新文化に敏感だった選帝侯の宮廷といった環境ゆえのことか、シェンクはセンスのよいドイツ人作曲家ならではの柔軟さで、当時のイタリア様式とフランス様式のよいところをあざやかに融合させてみせ、同世代のフランス人マレのガンバ芸術やイタリア人コレッリのソナタ芸術のかたわら、ガンバ音楽史上に見過ごしがたい混合様式の名品群を送り出していたわけです。デュッセルドルフの宮廷に来てからまとめられた「ライン川のニンフたち」という題のこのソナタ集も、コレッリ流儀のイタリア風ソナタ様式をベースにしていながら、演奏編成は通奏低音なしのガンバ二重奏という、明らかにフランス様式を意識したセッティング――玄妙な装飾音を重ねながら、どこまでも深い呼吸で、あるいはドラマティックなコントラストを打ち出しながら、ヴィーラント・クイケンは新世代の経験豊かな名手ジュベール=カイエ(Ricercarの数々の名盤で通奏低音を支えてきた超・実力派!“導師”が見込んだパートナーだけあり、紡ぎ出される室内楽の呼吸はまさに至高そのもの…)とともに、この作曲家の音世界がいかに多元的で聴き深めるに足る内容だったかを、ありありと印象づけてやみません。20世紀以来喧伝されてきた巨匠奏者の最新録音だけに、注目度の高まりは必至です。[マーキュリー]