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“ニューフォーク”の旗手、見田村千晴メジャー・デビュー

見田村千晴

欧米のミュージックシーンにおいて、スピード感はないが、ゆったりと流行り出し、じんわり定着してきているアコースティックサウンドのムーヴメント、いわばニュー・フォーク。全米で人気のTV番組『アメリカン・アイドル』から出て来たPhillip Phillips、イギリスからのニューカマーEd Sheeran、全米で注目のバンドThe Lumineersもそんなアーティストのひとつであろう。

そんな中、日本のミュージックシーンにおいても、ギター一本持って弾き語る女性シンガーソングライター見田村千晴が登場した。キレイゴトだけではなく人間の弱さや醜さに向き合い書かれた歌詞。シンプルな楽器編成だが深みのあるサウンド。その中心にある歌声は、時に強く、時に優しく響いてくる。

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『ビギナーズ・ラック』セルフ・ライナーノーツ

1. ラブソング
この曲をかいたのは2008年頃。私は大学生をしながら弾き語りでライブをしていました。当時、ギターを弾くのもままならず、曲作りもまだおぼつかない自分のかいた曲に、正直全く自信が持てなかった私が、『ラブソング』ができたときに初めて、胸を張ってステージに立つことができました。そのままの自分をちゃんと投影できたんだと思います。
今作をプロデュースして下さったのは、 Bonnie Pinkさん、アンジェラ・アキさんやSuperflyなどを手がけ、ポップスのプロデュース第一人者である松岡モトキさん。松岡さんに、ストックしていた楽曲の弾き語りデモを聴いて頂いたところ、「これをまずレコーディングしてみよう」ということになり、そこからアルバム制作がスタートしました。
新しい環境での初めてのレコーディング作業。この曲にはとても時間をかけました。音楽の話だけでなく、私の生い立ちや、好きな映画の話、ラジオの話、食べ物の話などもたくさんしました。私は岐阜県出身なので、愛知県出身の松岡さんとは地元の話で数時間盛り上がったりもしました。それもこれも、アルバム全体の方向性を定めていくためでもあるのだけれど、今思い返せば、人見知りの私が早く打ち解けられるようにと、松岡さんとディレクターさんが配慮して下さったんだと思います。
そんななか、今作の大きなテーマとなったのが、【シンプル】でした。編成は極力シンプルに、音数も減らしていくことで、歌声の生々しさ、人間臭いエネルギーをダイレクトに届けたいという気持ちが一番にありました。なのでこの曲は、アコギ、打楽器、エレピという編成。・・・と、こうやって字面だけで見ると、(タイトルも相まって)いかにもしっとりとしたバラードかと思いきや、躍動感たっぷりの力強い作品になりました。その躍動感の肝となったのは、 ブラジルの打楽器で、Pandeiro(パンデイロ)、Alfaia(アウファイア)という楽器。GANGA ZUMBAで活躍されている宮川剛さんが演奏して下さいました。
アカペラから始まり、破天荒な構成で叫び、またアカペラで終わる。21歳の頃の私、恐るべしです。

2. 悲しくなることばかりだ
一転、この曲はアルバムのなかで一番最後に、レコーディング中に出来た曲です。とは言っても、Aメロの、早口にまくしたてているところの歌詞の原型はかなり前からありました。歌詞、というより、日々の愚痴やハッとしたこと、覚えておきたい心象風景をそれっぽく書き留めているノートがあって、そこに書きなぐっていた言葉から広げていきました。
 「人は一人じゃ生きられない」のは確かだけれど、他者と関わろうとすればするほど、分かり合えないこと、伝わらないこと、納得できないことが浮き彫りになってきます。それを怒りとして相手にぶつけられるならまだ生産性がある、だけどそれを通り越して、悲しくなることが日常には溢れています。それでも、他者と関わることから逃げないで、逆にその自分との違いを楽しんで、面白味を感じて生きよう、と考えたら少しは楽になれるんじゃないか。まさに私が内に籠りがちな人間なので、自分に言い聞かせるつもりでかきました。この曲が、私と同じような孤立感を抱えた人の支えになれたら、それ以上に嬉しいことはありません。
  ドラムは、現在、PLASTIC ONO BANDのあらきゆうこさん、ベースは、Syrup16gや数々のセッションでご活躍のキタダマキさん、ピアノとキーボードは、シンガーでありプロデューサーの小林建樹さんに演奏して頂きました。

3. 秘密
この曲も今年に入ってからかいた曲です。終電間近の踏み切りの脇で、一緒に暮らそう、と大好きな人に言われて、泣き出す女の子。それは単純に嬉しいだけの涙じゃないかも知れません。幸せだからこそ怖くなったり、相手を尊敬するほどに自分がつまらなく思えたり。そんな、あらゆる色の絵の具が少しずつ混ぜ合わさったような複雑な心の揺れを、聴いてくれる人と共有したいなと思いながら言葉選びをしました。出来上がった色は、とても温かくて幸せな色です。
ベースを弾いて下さったのは、この曲を含めて4曲に参加して下さった阿部光一郎さんです。阿部さんにはいつも、エレキベースとアップライトベースを両方弾いて頂いて選ぶ、という贅沢なことをさせて頂きました。

4. 妄想と現実とチョコレート
2010年4月から月イチでパーソナリティをやらせて頂いている、FMヨコハマ『YOKOHAMA MUSIC AWARD』内、『YMA ANNEX 見田村千晴の妄想と現実とチョコレート』という番組名から、この曲が産まれました。
タイトルから曲を作ったのはこの曲が初めてだった上に、なかなかに個性的なタイトルなので最初は悩んだのですが、振り切ってファンタジックな世界にしよう、と決めて歌詞を書きました。
歌入れでは、おとぎ話のような非現実感が出たらいいなと思い、あまり感情的に歌わないようにしました。歌のそのテンションとは対照的に、アグレッシブで情熱的なパーカッションと、途中から登場して熱く華麗に踊るようなバイオリン。その絶妙なバランスをぜひ楽しんで頂きたいです。パーカッションは、米米CLUBやその他多数のセッションで活躍されている三沢またろうさん。曲中のグルーヴがあまりにもかっこよかったので、急遽、イントロ前にもソロで演奏して頂きました。バイオリンは、GANGA ZUMBAのメンバーで、絢香さんのバックでも演奏されている土屋玲子さんに弾いて頂きました。

5. 私の良いとこ
この曲も、デモ音源を聴いた松岡さんに「いいね!」と言って頂いて、収録が決まりました。「私」と「あなた」は出てくるけれど2人の関係についての曲ではなく、本質的には「私」1人の、最も閉じた世界の曲。ということで、今作のなかで最もシンプルに、私のアコギと歌のみで録音しました。眠りに落ちる直前のような、まどろんだ作品になったと思います。

6. 明日天気になりますように
これは2年ほど前にかいた曲で、自分でもとても好きな曲のひとつだったのですが、ライブでやるタイミングを逃し続けて眠っていました。ディレクターさんがサビの言葉のリズムを面白がってくれて拾い上げられました。『私の良いとこ』から一転して、ピースフルな温かみのあるアレンジです。
アコーディオンが印象的ですが、演奏して下さったのは、Mr.Children、ゆずのサポート等で活躍のSUNNYさん。ドラムは、プロデューサー松岡さんの盟友、小西昭次郎さんです。そしてエンディングのコーラスには、シンガー仲間の斉藤麻里さん、郁彩さんに参加してもらいました。ワイワイと騒ぎながらのレコーディングでとても楽しかったです。また、エンディングには私が吹いたリコーダーの音も入っています。小学生の頃には得意だったリコーダー、いざ真剣に吹くのは意外と緊張しました。

7. 普通
この曲は、歌入れの直前まで歌詞を何度も書き直して完成させました。「普通」に生きていくことの難しさや尊さについて、私はおそらく人一倍考えていると思います。皆みたいに上手くできない、と感じることが多いからかもしれません。でも、そもそも「普通」という言葉自体がものすごく曖昧で、幻想のようなもの。幻想だからこそ厄介で、それに囚われ続けてしまいます。そんな日々のなかで、自分なりに「普通」を、曲として手に取れる作品にして安心したかったんだと思います。
自分で書くのも変ですが、この曲が一番、じわじわと、レコーディング中から今にかけて「好き度」が上がっています。曲をかいた当初はリズムも違って、ギターもアルペジオでバラードのような感じだったのですが、松岡さんのアレンジでハネたリズムになって、切なさと強さとどこか爽やかさが感じられる作品になりました。鬱屈した歌詞ですが、サウンドにそれを打破しようとするエネルギーがあると思います。それはまさにこのアルバム全体を示しているようで、アルバムの最後の曲にしようと決めました。

■タイトル『ビギナーズ・ラック』について
ビギナーズ‐ラック 【beginner's luck】 


初心者が往々にして得る幸運。賭け事などにいう。

アルバム制作が始まった頃から、なんとなく頭の中に「ビギナーズ・ラック」という言葉がありました。メジャーという新しい環境に足を踏み入れるにあたって、漠然とした不安に包まれることもあるのですが、そこで構え過ぎてしまいがちな自分に対して「ビギナーズ・ラックがきっと起きる、楽しいことがたくさん訪れる」と言い聞かせて肩の力を抜いていたのかもしれません。
今回、こんなに素敵な作品が出来たこともビギナーズ・ラックですが、この幸運は神様がくれたものではなく、関わって下さった素晴らしい方々が与えて下さったものです。本当にありがとうございました。
この感謝の気持ちと興奮をエネルギーに、音楽と 向き合い、成長していきたいと思っています。よろしくお願い致します。   

掲載: 2013年08月21日 15:11

更新: 2013年08月21日 15:12