【RCO Live】ヤンソンス&ロイヤル・コンセルトヘボウ管による最新盤

ヤンソンス&コンセルトへボウ
あの第7番「レニングラード」以来ふたたび極上の美感で描かれる
ショスタコーヴィチの交響曲第10番
マリス・ヤンソンスが首席指揮者を務めるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)を指揮して、
ショスタコーヴィチの交響曲第10番を演奏したアルバムが“RCO LIVE”より登場!
【曲目】
ショスタコーヴィチ: 交響曲第10番ホ短調op.93
【演奏】
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
【録音】
2009年1月29日、2月1日&4日 アムステルダム、コンセルトへボウ(ライヴ)
※「DSD5.0 マルチチャンネル」ステレオ
トータル・タイム…53’17”
【集中的に取り組んでいた時期のレコーディング】
このたびの演奏は2009年1月29日、2月1日と4日にコンセルトヘボウで行われた定期公演の模様をライヴ収録したものです。
ヤンソンスとRCOは本拠を皮切りに、2008/09年のシーズンを通じて交響曲第10番を実演で取り上げており、1月30日にブリュッセルのパレ・ド・ボーザール、2月9日にバーゼルのシュタットカジノ、2月10日にウィーンのムジークフェラインでも演奏していたほか、さらに8月22日にコンセルトヘボウで再演したのちに、29日のザルツブルク祝祭大劇場、9月1日のロイヤル・アルバートホール、9月4日のルツェルン・カルチャー&コンヴェンション・センター内コンサート・ホール、9月5日のベルリン・フィルハーモニー、9月8日のフランクフルト・アルテオーパーでも演奏して大成功を収めています。ヤンソンスが首席指揮者就任より5シーズン目に入り、RCOとの関係をさらに深めていたのがこの時期であり、この収録直後の2月5日、6日にはヤンソンスはドヴォルザークの「レクィエム」(RCO10001)を演奏して高い評価を獲得していました。
【ヤンソンスが得意とするショスタコーヴィチの交響曲】
豊富な録音点数が端的に示す通り、ロシア音楽を得意とするヤンソンスがチャイコフスキーとならびもっとも力を傾けてきたレパートリーが、ショスタコーヴィチの交響曲。
2005年に完結した全集シリーズで、ヤンソンスは交響曲第10番を1994年にフィラデルフィア管とセッション録音していたので、このたびは15年ぶり2種目の録音ということになります。
【RCOによるショスタコーヴィチの交響曲録音】
1970年代後半に、ショスタコーヴィチの交響曲をRCOの重要なレパートリーとして定着させたのは、常任客演指揮者キリル・コンドラシンと第5代首席指揮者ベルナルド・ハイティンクであり、その功績はディスコグラフィから辿ることが可能です。
モスクワ・フィルと「世界初のショスタコーヴィチの交響曲全集」を完成したコンドラシンは、RCOを指揮して1968年に第6番、1971年に第4番、1980年に第9番をいずれもライヴ録音で残し、エキスパートとしての存在感を十分に刻印していました。
RCOが第5番、第6番、第8番と第11番から第14番までの7曲を演奏したハイティンクによる全集録音は、輝かしい響きでショスタコーヴィチのあらたな魅力を強く印象付けていましたし、のちにハイティンクとは2010年3月に第15番もライヴ録音しています。
そうしたなかでRCOは、第10番を1985年にハイティンク指揮でライヴ録音、1990年にクラウス・ペーター・フロール指揮でセッション録音しており、前回より19年ぶり3種目の録音となります。
【交響曲第10番初演者ムラヴィンスキーとヤンソンス】
ヤンソンスは1971年、カラヤン国際指揮者コンクール第2位に輝き、同じ年にはレニングラード・フィルを指揮してプロ・デビューを果たし、1973年よりレニングラード・フィルの副指揮者を務めています。
「ムラヴィンスキーの助手として間近で多くを吸収した」と述懐しているように、ショスタコーヴィチについてもこの時期にヤンソンスはムラヴィンスキーから多くのことを学んだのでしょう。
そのムラヴィンスキーによって初演された交響曲第10番は、スターリンの死の直後に着手されほどなく書き上げられたことなどから、その内容についてさまざまな憶測を呼び、作品が成立した時代背景および政治的な文脈のなかで長らく語られてきた作品でもあります。
ムラヴィンスキーがレニングラード・フィルを指揮した演奏には、張り詰めた空気や異常なまでに研ぎ澄まされたアンサンブルに、作曲家と同時代を生きた初演者の自負にも似た迫真の説得力が備わり、長らくこの曲の決定盤に挙げられてきました。
【ヤンソンス&RCOによる交響曲第10番】
ヤンソンスとRCOにかかると、スターリンの肖像を音で描写したといわれる第2楽章アレグロも近代オーケストラの機能美全開、優雅な気品さえ漂うのはまさしく当コンビならでは。従来のロシア勢による演奏モデルを特徴づけていた、ささくれ立った弦、悲鳴にも似た木管、粗暴なブラスに替えて、ここでは磨き抜かれた美の表現にこそその真骨頂があるといってよいでしょう。
荒々しい場面や目まぐるしいパッセージでも響きはけっして混濁することなく、あくまで美感を損なうことがないというところは、やはり2006年に収録された前作「レニングラード」とも重なるばかりか、格段の洗練をみせている面も。
緻密な精度を誇るRCOを得てヤンソンスは純器楽的なアプローチにより、かつてない美感で全曲を染め上げ、作品に流れる痛ましいまでの抒情美をみごとに表現し尽くしています。これには、演奏の傾向を踏まえたポリヒムニアのチームによるすぐれた録音がまた大きく貢献して、すばらしい効果を生んでいるといえます。
ショスタコーヴィチは「この作品のなかで、わたしは人間の感情と情熱を描きたかったのだ」とも述べていますが、ヤンソンスがあらたにRCOと取り組んだ交響曲第10番のレコーディングは、抑圧やあらゆる非人道的行為に対するプロテストがこれほどまでに壮絶なる美しさを備え得ることを提示したもので、作曲から60年目を迎える2013年に、この傑作の普遍的な真価をあらためて問いかける内容といえるでしょう。