トロンボーンの天才、スヴォボダによるケージ、シュトックハウゼンらの作品集

『Da Lontano - G.Scelsi, J.Cage, K.Stockhausen, L.Nono』
トロンボーンの天才、スヴォボダによるケージ、シュトックハウゼンらの作品集
SACDハイブリッド仕様盤による高音質オーディオがまた楽しい!
トロンボーンのスヴォボダといえば、抱腹絶倒のワーグナーパロディCD「ワーグナーはお好き?」など楽しいプログラムで魅せてくれますが、今回はシェルシ、ケージ、シュトックハウゼン、ノーノという4名に焦点をあて、アヴァン=ギャルドを真正面から聴かせてくれます。SACD層にはサラウンドでも音源が収録されており、音楽だけでなく、音響的にも大変たのしめる充実の内容です。
シェルシは、ブレス、息、楽器の音色を使って、Mantramを、スピーチ風の作品に仕立て上げました。始まり、中間、終りのない、時間を感じさせないような「surrounding sound」的作品となっています。トロンボーンかと思うとスヴォボダの肉声、それらがホーミーのように雄大に響き渡ります。スヴォボダの妙技にご注目ください!
ケージ作品は、ピアノとオーケストラのための協奏曲「1957-58」からのある部分を抜き取って、それを様々なテンポで演奏、多重録音で8本のトロンボーンのための作品に仕上げたもの。それぞれの録音はわかりづらいですがカノンのようになっています。スヴォボダが発する様々な音色に驚かされ、そして時折訪れる無音の状態に、ふっと自分という存在を思い出したりする不思議な作品です。サラウンドで是非お楽しみいただきたい1曲です。
シュトックハウゼンの「Invasion」(侵略)は歌劇「リヒト」の「火曜日」の部分からのもので、原曲では「ミカエル(トランペット/善)」、と「ルシフェル(トロンボーン/悪)」が音楽的闘争を繰り広げます。シュトックハウゼンがこの「火曜日」を書いたのはスヴォボダがいたから。さらに、この抜粋ソロ版「Invasion」が生まれたのも「スヴォボダならできるから」とシュトックハウゼンは述べています。オペラ「リヒト」の特徴は、演者の身体の動きも様々に楽譜に指示されていること。このディスクからも、スヴォボダが前後左右に動いたりジャンプしたりしているのがおわかりいただけることと思われます。
ノーノの作品は、「前」奏曲であると同時に「後」奏曲でもある曲で、前後に動きながら進む作品。不安定な要素の多い作品ですが、突然電子楽器とトロンボーンによる低音域でのトーンクラスター的な部分が現われるなど、意表をつかれる瞬間が何度もある不思議な作品です。

【アーティスト・プロフィール】
マイク・スヴォボダは1960年グアム生まれのトロンボーン奏者、作曲家。1984-95にかけて、シュトックハウゼンと音楽活動を展開。その後も室内楽やジャズグループ、また、世界的オーケストラとも共演多数。彼が手がけた初演作品は300を超えます。
『da lontano~彼方から』
【曲目】
(1)ジャチント・シェルシ(1905-1988):Mantram-Canto anonimo
(2)ジョン・ケージ(1912-1992):スライディング・トロンボーンのための「ソロ」
(3)シュトックハウゼン(1928-2007):signale zur invasion,I
(4)ルイジ・ノーノ(1924-1990):ポスト・プレリュード第1番~ドナウのための/チューバ、ライヴ電子楽器のための(1987)
【演奏】
マイク・スヴォボダ(トロンボーン、チューバ)
ホルガー・シュテンシュケ(電子楽器((4)))
【録音】
2011年11月