21世紀のブラジルが生んだハイセンスな語り部=キーニョの新作

コンポーザー/ギタリスト/シンガーのキーニョは、21世紀のブラジルが生んだハイセンスな語り部である。2004年頃よりバンドを組みサンパウロで活躍。インディペンデンデントでアルバムをリリースする傍ら、アドリアーナ・カルカニョット、ルイス・メロヂア、ジャルズ・マカレー、ホジェー、マルチナリア、イルドンといったMPBやサンバ・カリオカの実力者と共演し注目を集めていく存在へと成長。そのキャリア中でも常に創作意欲を漲らせ、完成させた傑作、この「O TEMPO SOA」だ。
北東部の象徴的女性シンガー、エルバ・ハマーリョが参加したゴンザギーニャのリメイクM4を除き、すべてキーニョの楽曲。メロディーの中に独特の「溜め」を作り、より柔らかくヴィヴィッドな印象を植え付けるいずれも好旋律なのも然ることながら、その洗練されたアレンジも心躍る。シタールを意識したイントロから展開される絶品AORのオープニングから、アモーラ・ペラをフィーチュアした混声の妖艶さとエレピのメロウネスを解析させたファンク・ナンバーM2へ移行。そしてジャズ志向のブルージー・チューンM3へと至るクダリだけでも、このキーニョという才能の高さを思い知る。タイトル・トラックM5は、根底にある浮遊感とヘヴィ・ロックを交錯させ、そのテンションを中和させるようなしめやかなトラックM6、コーラスの妙でディープな世界を演出するM7の中盤も引き込まれる。そして、兼ねてより親交のあるマルチナリアをフィーチュアしたM8は、エレトロ・ボッサを基調にブレイクを効果的に配し、俄かに揺れ動くハイライト・トラック。ラストM10では、ロックに感化された自身のルーツの一端を、斜に構えたスタンスで演出し不可思議な余韻を残してくれる。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2012年03月09日 12:45