堂々の完結!スクロヴァチェフスキ~ブラームス:交響曲全曲シリーズ
掲載: 2011年07月02日 14:04
更新: 2011年07月12日 15:43

世界水準のブラームス全集、堂々の完結!
前回の第3番から2年のブランクを経て、スクロヴァチェフスキと読売日本交響楽団によるブラームス全集が、本作を持って堂々の完結を迎えました。その間にリリースされたブルックナーの後期交響曲を含む、巨匠が第8代常任指揮者時代に薫陶した読響の演奏は、それまでの日本のオーケストラの水準から大きく雄飛し、世界水準での演奏芸術の極点に到達しています。日本のオーケストラではブルックナー以上に名演を生むことが困難といわれてきたブラームスですが、老いの影など微塵もないスクロヴァチェフスキのタクトは、全パートに渡る密度の濃い響きを建材に、一瞬もたわむことのない構成感を有する大伽藍をそびえ立たせました。圧倒的な感動への昇華を、是非SACDでご体験ください。
ブラームス:
1. 交響曲 第4番 ホ短調 作品98
2. ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
【演奏】
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)
読売日本交響楽団
【録音】
1)2009年3月21日 東京芸術劇場(ライヴ)
2)2009年3月9日 サントリーホール(ライヴ)
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【関連タイトル】
「スクロヴァチェフスキと読売日響によるブラームス交響曲全集がついに完結!」
当ディスク所収の第4番をもって、スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団によるブラームスの交響曲全集が完結した。既出の3曲のうち、第1弾として登場した第2番は、2007年4月27日に行われた常任指揮者就任記念コンサートのライヴ録音であり、第2弾の第1番が同年9月29日のライヴ録音、そして、第3弾の第3番は翌08年9月10日のライヴ録音であった。上記の3曲が発売された後、スクロヴァチェフスキと読売日響のコンビによるディスクは、ブルックナーの第9番、第8番、第7番が発売され、いずれも好評を博したのは記憶に新しいところであるが、今回登場したブラームスの4番も、このコンビのすばらしさが随所に刻印された名演である。
当盤の演奏が収録された時点で、スクロヴァチェフスキは、すでに80代半ばであったわけであるが、老巨匠という言葉からイメージされる“テンポの遅さ”や“枯淡の極地”とは無縁のまま、鮮やかなリズム感としなやかな響きとを兼ね備えた演奏が繰り広げられているのが特徴だ。
第1楽章冒頭から、ヴァイオリンが提示する主題を巧みに紡ぎ上げていく一方で、チェロとヴィオラの8分音符を鮮やかに奏させ、fで記譜されている17小節のオーボエをきっちりと響かせて、次の小節でディミヌエンドさせるなど、木管陣の出し入れひとつに対しても神経が通っているのが好ましい。内声部や低弦を明瞭に打ち出しながらも、単なる透視図法的な演奏に陥ることがない点も、当演奏の特徴であり、読売日響の弦楽器セクションが発する厚みに富んだ響きもまことに見事である。この作品の第1楽章の第1主題は、アウフタクトのロ音で始まり、ト・ホ・ハ・イ・嬰ヘ・嬰ニ・ロと3度ずつ下行し、後半はホ・ト・ロ・ニ・ヘ・イ・ハと3度ずつ上がる音程関係を備えているが、全4楽章を通じて、ちょっとした音の動きに意味を持たせて、豊かなニュアンスを込めて鳴らしていくスクロヴァチェフスキの手腕が刻み込まれている点も大きな聞きどころになっている。とりわけ、展開部が終わって再現部に入り、259小節から、提示部のときとは逆に、第1主題が3度上行しなが姿をあらわす直前に、老巨匠が感極まったように声を出すあたりが印象的である。終盤のアッチェレランドも、これみよがしなところがなく、それでいて説得力に満ちている。続く第2楽章が湛えている味わいは、かつてハレ管弦楽団を指揮して吹き込んだブラームス交響曲全集の演奏[IMP、1987年10月録音]に比べて、ぐっと奥行きと深みを増しているのだが、当盤の演奏は、20年以上前の録音と比べて、所要時間が短くなっているのである。
第3楽章は、ハレ管との旧録音同様に、速めのテンポが設定されている。この楽章は、ピッコロとトライアングルが活躍することで名高いが、スクロヴァチェフスキは、きらびやかな高音域を担当する両者だけではなく、コントラファゴットのどっしりとした低音を突出させているのが耳に残ることだろう。コントラファゴットの場合、ともすれば低弦と同じ動きをしたり、ファゴットのオクターヴ下で地味に鳴っている印象が残るものの、ffzの指示がある5小節目を筆頭に、93・94、97・98小節目など、当盤に収録されている重低音は、まことに鮮烈だ。そして、この楽章では、引き締まった弦楽アンサンブルとそこに絡んでいく木管陣やホルンをはじめ、読売日響のメンバーが、老巨匠のタクトにくらいついて疾駆していく様子が鮮やかに捉えられている。作曲者がもてる技法のすべてを投入した終楽章は、シェーンベルクが“進歩主義者”と評したブラームスの一面を峻烈にえぐり出し、楽曲のプロポーションを明瞭にまとめながら、曲想を巧みに描き分けることに成功。ちょっとしたテンポの動きを通じて、音楽がみずみずしく呼吸し、ライヴ録音特有の高揚感を伴いながら、クライマックスを目指して疾走していくなど、まさにブラームスの交響曲全集の完結編にふさわしい演奏になっている。ティンパニの強奏もインパクト満点だ。併録曲の《ハイドンの主題による変奏曲》も、スクロヴァチェフスキと読売日響の信頼関係が実感できる名演である。
スクロヴァチェフスキは、2010年3月に読売日響の常任指揮者を退任したが、同響初の桂冠名誉指揮者として、今なお定期的に指揮台にのぼっていることは、あらためて明記するまでもないだろう。2010年3月26日の演奏会後に行われた退任パーティーの席上でも、きわめて元気であり、読売日響の楽員や事務局の面々、そして音楽評論家等の人々と、にこやかに歓談していた姿が目に残っている。「また来ますからね」という言葉通りに、同年10月に桂冠名誉指揮者として来演した際にライヴ収録され、2011年3月に発売されたブルックナーの交響曲第7番が、すばらしい演奏であったことを付記して、この原稿を閉じたいと思う。(ライナーノートより;満津岡信育氏)
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