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commmons: schola vol.8 Eiichi Ohtaki Selections: The Road to Rock

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/05/13   17:09
更新
2011/05/18   20:34
ソース
intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)
テキスト
text:桑原シロー

坂本龍一総合監修による『音楽の学校(=schola)』
第8巻のテーマは、「ロックへの道」

坂本龍一総合監修による『commmons: schola』シリーズ。本+CDがいっしょになったこの音楽の百科事典を手に取れば、古典文学全集のような装丁、ズシリとした重さにまずは心を奪われてしまう。全30巻(2018年まで発売を予定)を揃えたらきっと壮観だろうと思いながら、本棚に並んだこれまで集めた分の背表紙を眺めている方もきっと多いことだろう。次世代へ世界中の音楽を継承してゆくアーカイブなわけだから、これはやはりお子さんがいらっしゃる方こそ手にすべきアイテム。奥さんを説得するためのセリフを一生懸命にひねり出したお父さんたちの苦労する姿が思わず目に浮かんでくる。

さてこのたび、『Beethoven』に次ぐ『commmons: schola vol.8』が届けられることになった。今回のテーマは〈ロックへの道(The Road to Rock)〉。そう、ロックンロールの回だ。山下洋輔による『Jazz』、細野晴臣&高橋幸宏による『Drums & Bass』に続いて、非クラシックの第3弾であり、待ち望んでいた人も少なくないと思う。軽音楽寄りということで、ジェイムス・ブラウンやモータウン・サウンドなど、ブラック・ミュージックやロック&ポップスのさまざまな歴史やエピソードなどを詰め込んだ〈Drums & Bass〉と比較しうる内容だが、今回の講師も豪華だ。選曲・執筆を担当するのは、かの大滝詠一である。先日、日本ポップス史に燦然と輝く名作『A LONG VACATION』の30周年アニヴァーサリー・エディションと、70年代のナイアガラ・レーベル作品にリマスターを施して集大成したボックス・セット『NIAGARA CD BOOK I』をリリースしたばかりのポップス・マエストロ。この2セットに収められているディスクの枚数は、計14枚。日夜、大滝研究にいそしんでいるナイアガラーにとってこの春はじっくりと読むべき作品がありすぎて嬉しい悲鳴を上げているに違いないが、そこにこの分厚い内容の書物も加わるわけだ。ステキなタイミングである。

大滝詠一は、わが国のミュージシャンのなかでも屈指の理論家として知られている。ユニークな発想を駆使してまとめられた論考には定評があり、ラジオ番組という形が取られた〈大滝詠一の日本ポップス伝〉をはじめ、画期的な仕事を多く残している。彼の研究対象は音楽だけでない。先ごろは某誌において成瀬巳喜男作品のロケ地探検を行ってまとめられたレポートが発表されていたが、鋭い分析力によって発見された事項は多くの映画ファンを唸らせたものだった。映画だけでなく、野球やお笑いなどにも精通している彼だが、やはり音楽に関しての論考がすこぶるおもしろい。そんな彼の仕事のひとつに、2003年、坂本龍一のラジオで披露されたロックンロール史がある。本書は、その内容をベースにしてまとめられたものだ。ロックンロール誕生の1曲とされるジャッキー・ブレストンの《Rocket 88》に始まり、チャック・ベリーやレイ・チャールズ、リトル・リチャードにビルへイリー&コメッツといったロックンロール創世記に活躍した面々の名曲を詰め込んだCD。レイヴンズやルイ・ジョーダン、それにロバート・ジョンソンまで入ったこの〈コンピ〉だけでもまずは素晴らしい内容といえよう。何よりも楽しいナンバーが目白押しだし、当然次世代を担う子供たちも大喜びするだろうから、お父さんたちも嬉しいだろう。活字面ではロックンロールという魅力的な発明品を世界中に広めた最功労者であるエルヴィス・プレスリーを中心にロックの源流が語られていくわけだが、ロック好きを公言する人でも、かなり目からウロコものだと思う。ますます充実した授業が続く音楽の学校。今回も欠席は厳禁。もちろん遅刻も。

commmons: schola vol.8
Eiichi Ohtaki Selections: The Road to Rock

総合監修・執筆:坂本龍一
選曲・執筆:大瀧詠一 選曲補・執筆:北中正和
編集:後藤繁雄/門松宏明
アート・ディレクション:中島英樹

【選曲:大瀧詠一選曲:大瀧詠一】
1. Jackie Brenston / Rocket 88
2. The Dominoes / Sixty Minute Man
3. The Ravens / Count Every Star
4. Clyde McPhatter / Such A Night
5. Elvis Presley / Heartbreak Hotel
6. Lonnie Donegan / Rock Island Line
7. Johnny Burnette / The Train Kept A-Rollin’
8. Tiny Bradshaw / The Train Kept A-Rollin’
9. Little Richard / Keep A-Knockin’
10. Louis Jordan / Keep A-Knockin'
     (But You Can't Come In)
11. Robert Johnson / Crossroads Blues
12. Bill Haley & His Comets / Rock Around The Clock

13. Arthur Big Boy Crudup / That's All Right
14. Carl Perkins / Blue Suede Shoes
15. Ray Charles / I Got A Woman
16. Chuck Berry / Johnny B. Goode

【選曲:北中正和】
17.(Now And Then, There’s)
        A Fool Such As I / Hank Snow
18. Blue Moon / Mel Torme
19. Mardi Gras In New Orleans / Fats Domino
20. Big Texas #2 / Papa Cairo & His Boys
21. Man Smart(Woman Smarter) / Harry Belafonte
22. Wimoweh / The Weavers
23. Misirlou / Dick Dale & His Del-Tones