こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

La Petite Bande

公開
2011/04/21   19:22
更新
2011/04/21   19:46
ソース
intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)
テキスト
text : 松下健司(梅田NU茶屋町店)

6月来日公演は、オール・バッハ・プログラム

昨年ベルギー政府からの援助が打ち切られ、その存続が危ぶまれたラ・プティット・バンドが今年再来日することはファンにとってはまさに福音である。6月25日の愛知を皮切りに東京と大阪で公演が予定されている。是非、ひとりでも多くの方が会場に足を運ばれることを願うばかりである。

プログラムはブランデンブルク協奏曲をメインとしたオール・バッハ・プログラムだ。昨年リリースされたブランデンブルク協奏曲の再録音盤は使用楽器などの面でクイケンのあくなき探求心を突き詰めたものになっており、それが今年実演で確認できることは大いに楽しみなことである。それはプログラム1曲目の第2番から始まる。旧録音ではホルンに代用されたトランペットパートが〈指孔などのシステムがない完全なF管ナチュラル・トランペット〉の登場により見事に解決されている。新録音では名手マドゥーフの至芸を明確に聴くことができる。特に第3楽章の細かいトリルをピストンなど何もない楽器であっさりと、しかもごく自然にやり遂げてしまうのは驚異と言うほかない。また、第2楽章はテンポをぐっと落としてヴァイオリン、オーボエ、リコーダーの独奏楽器はより表情豊かに歌っている。オーボエのボージロー以外はCDと奏者が異なるので実演が楽しみだ。ちなみにリコーダーはバルトルドが演奏する予定だ。クイケンが永年探し求めたブランデンブルク協奏曲の〈オーセンティック〉な姿がこの第2番で明らかになるのだ。

そして膝ではさむチェロではなく肩から提げる格好の〈スパッラ〉をほぼ全ての曲でシギスヴァルトが演奏する。アンサンブル全体を支える重要なパートだけに是非とも傾聴していただきたいところである。プログラム最後の第3番では3人の奏者がスパラを演奏する。この曲を新旧録音で比較すると、ヴァイオリンのシギスヴァルト、ヴィオラの寺神戸亮そしてチェロの鈴木秀美など錚々たる演奏家が闊達な名人芸を存分に披露している旧録音に対して新録音はテンポをやや落とし、安定したアンサンブルを構築している。ヴァイオリン3部、ヴィオラ3部、チェロ3部そして通奏低音という編成になっているので、チェロ3人が〈スパッラ〉を演奏することにより3つのグループの音色がより均質になり、緊迫した駆け引きがより鮮明に浮かび上がっている。それは舞台上においては視覚的に迫力あるものとして見ることができるにちがいない。

4つのブランデンブルク協奏曲の他に演奏される管弦楽組曲第2番ではバルトルドのトラヴェルソを存分に堪能できる。東京オペラシティ(7/2)のみ組曲ではなく三重協奏曲が予定されていて、第5番同様バルトルドとシギスヴァルト(ヴァイオリン)の独奏が披露される注目の1曲だ。第2楽章ではトラヴェルソ、ヴァイオリン、チェンバロの独奏楽器群が美しいアダージョを奏で、協奏フーガの体を成す第3楽章の古雅な楽想も魅力的。いずれのプログラムも聴きのがせないものばかりだ。

『ラ・プティット・バンド』 音楽監督:シギスヴァルト・クイケン
6/25(土)会場:愛知県芸術劇場 『第34回 名古屋国際音楽祭』
6/29(水)18:30開演 会場:かつしかシンフォニーヒルズ
7/2(土)15:00開演 会場:東京オペラシティ コンサートホール
7/3(日)14:00開演 会場:大阪 ザ・シンフォニーホール
http://www.camerata.co.jp/J/concert/f_LPB.html