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Maria Pages

公開
2010/12/24   20:40
更新
2010/12/24   20:49
ソース
intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)
テキスト
text : 志風恭子(スペイン舞踊研究家)

©Manuel del los Galanes

舞踊団結成20周年記念作品『ミラーダ』、日本公演が世界初演!

フラメンコは面白い。感情がそのままほとばしるような、情熱的な表現や、華やかな衣装、躍動感のあるリズム、哀愁のメロディ。18世紀末、ユーラシア大陸の最南端、スペインはアンダルシアの民衆の中に生まれたものだけど、今や世界中の人たちに親しまれるユニバーサルなアートとなった。その原動力はフラメンコがもつ自由さへの憧れかもしれない。リズムなどの一定の決まりはあるもののあとは自由。即興で自らの感情を歌いあげる者もいれば、それに呼応して踊る者もいる。歌や踊りの長さもメロディも変幻自在。そんな、フラメンコの自由さをいかし、フラメンコ舞踊に新たな一ページを記したダンサーがいる。

マリア・パヘス。フラメンコのメッカ、セビージャ生まれ。アントニオ・ガデス舞踊団や『リバーダンス』などで活躍した彼女は、アンダルシア舞踊団監督をつとめていた1996年、ピアソラやトム・ウェイツをフラメンコのテクニックで踊ってしまうという『アンダルシアの犬、ブルレリアス』でセンセーションをまきおこす。アルゼンチンタンゴやロック、ジャズ、ポピュラーソングの名曲も、マリアの手にかかればフラメンコに早変わり。舞台構成や照明も、伝統的なフラメンコとはひとあじ違う映画的なセンスを取り入れ、観客を驚かせた。その振り付けが高く評価され舞踊国家賞を受賞。アンダルシア舞踊団退団後は自らの舞踊団を結成し、プラド美術館に想をえた『ラ・ティラーナ』や、生まれ故郷に捧げた『セビージャ』など、数々の作品を発表。世界を舞台に活躍する、現代フラメンコを代表するアーティストの一人だ。

そのマリアが、自らの舞踊団を率いて日本にやってくる。演目は『ミラーダ』。舞踊団結成二十周年記念の作品で、今年6月セビージャでプレミア公演されたばかりの新作で、日本公演が世界初演となる。記念作品ではあるが、過去の作品の名場面集では決してない。新しい振り付けやマリアのソロもたっぷりあり、誰もが楽しめる作品に仕上がっている。伝統的なフラメンコから、サンサーンスの『白鳥』、スペインを代表する詩人ロルカの戯曲に想をえたものなど、バラエティにとんだ場面が流れるように続いて行く。伝統を敬愛しつつ、自らの個性で、独自の、新しいフラメンコをつくりあげていくマリア。それは限られた人たちだけの楽しみではなく、広く開かれた作品だ。ベルギーのコンテンポラリーダンサーで振付家のシディ・ラルビ・シェルカウイと共演したかと思うとバレエダンサー、アンヘル・コレーラに振り付けするなど、多彩な活躍をみせるマリア。世界的なダンサーからも注目されているマリア・パヘスの新作の日本公演、見逃す訳にはいかない。

『マリア・パヘス舞踊団 設立20周年記念公演 MIRADA(世界初演)』
2011年2/19(土)2/20(日)15:00開演 
会場:Bunkamuraオーチャードホール
http://www.conversation.co.jp