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鼓童

公開
2010/11/18   20:28
更新
2010/11/22   12:34
ソース
intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)
テキスト
text : 渡部晋也

© Karl Bergin

鼓童を聴かずして、和太鼓を語るなかれ!

和太鼓はとても説得力のある楽器であり芸能だ。木と革でできた身の丈ほどもある太鼓を打ち鳴らせば、居合わせた聴衆のほとんどに〈日本の伝統文化〉を感じさせてしまう。だからこそ、子供から大人まで数多の太鼓チームが、祭装束に身を包んで歌舞伎張りの見栄を切る、そんな不思議な真似をしてしまうわけだ。さらにその力に頼っているだけの、プロ気取りの演奏者が多いのもこの世界の特徴だ。馬脚はすぐ露になるから、しっかりした耳と見識を持つ聴衆はそんなものにだまされないはずだが、それ以前に、普段は体験しない音圧のおかげで、説得されてしまうことが多いわけだ。

鼓童は、佐渡島を拠点に世界的に活動するグループで、和太鼓に関しては名実ともに我が国を代表するといって差し支えない。その演目にはいくつかのスタイルがあり、一つは日本各地に伝承されている太鼓の芸能をベースに創り上げたもの。12月に行われる秩父夜祭りで、屋台の内部で演奏される囃子からの《屋台囃子》や、東京都三宅島の祭礼に伝わる太鼓をもとにした《三宅》といった演目がそれだ。もう一つは現代邦楽の一部としての作品。今回は藤舎呂悦の《千里馬(ちょんりま)》が演奏されるようだが、その他にも、石井眞木の《モノクローム》《モノプリズム》などがある。鼓童の前身である鬼太鼓座が生まれたのが1970年代であり、現代音楽の作曲家達が精力的に活動していた時期に重なっている。彼らを支えてきたのがそんな時代の力だったことを伝える演目とも言えるだろう。

そのほかにメンバーによるオリジナル楽曲があるが、よく聴いているとこれがなかなか面白い。1年の3分の1を過ごす国外ツアーの中で出会った文化や芸能に影響されたものや、メンバーが鼓童に参加する以前に指向していた音楽にルーツを持つものであったりと、彼らそれぞれの〈素性〉を感じる作品群がここだ。これらの演目は、メンバーが成長するにつれて入れ替わるので、長年演り続けられることが非常に少ないのだが、鼓童にとっても重要な部分だといえるだろう。

さて、その鼓童も2011年に結成30周年を迎える。活動開始当初から舞台に立つメンバーはほんの数名。これまでも数多くのメンバーが入れ替わり、その度に若手たちが参加する、いわば新陳代謝を続けて現在に至っている。彼ら若手が舞台に立てるだけの修練を積んでいることは言うまでもないが、鼓童のステージには、完成された舞台作品としての楽しみだけでなく、演奏の中で成長する彼らを見守る楽しみもある。そして一年の集大成とも言える12月公演は、この1年、彼らが旅の中でどんな出会いをして、どれだけ成長したかを感じることができる絶好の機会だろう。いずれにしても、鼓童の演奏は現代の和太鼓の中でひとつの代表格。言い換えれば日本のイメージのひとつでもある。そう、鼓童を聴かずして、和太鼓を語るなかれ、なのだ。

『鼓童十二月公演2010』

12/1(水)アミューズメント佐渡
4(土)5(日)新潟県民会館 大ホール
7(火)愛知県芸術劇場 コンサートホール
8(水)9(木)大阪・サンケイホールブリーゼ
11日(土)足利市民会館
14(火)東京エレクトロンホール宮城
15(水)神奈川県民ホール 大ホール
17(金)〜19(日)文京シビックホール 大ホール
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