こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

FINLAND FEST 2010

カテゴリ
EXTRA-PICK UP
公開
2010/05/12   20:19
更新
2010/05/13   11:39
ソース
intoxicate vol.85 (2010年4月20日発行)
テキスト
五十嵐正/大久保輝代

フィンランドのミュージック・シーンを世界に向け発信する「フィンランド・フェスト・イン・東京 2010」が今年も5月28日から都内各所で開催されます。フィンランドで注目されている旬な話題のアーティストのライヴをお楽しみください!

□WORLD MUSIC

フィンランドという国の名前を聞くことが増えた。最近では教育世界一の国とされて、ニュースにもよく登場するが、さらにこれからは音楽についても頻繁に耳にすることになるはず。今年は5月の「フィンランド・フェスト・イン・東京」参加の3組をはじめ、伝統音楽系の大物の来日が目白押しなのである。

まず4月末にやってくるのは、今や欧州を代表するアコーディオン奏者のマリア・カラニエミだ。06年作『ベロー・ポエトリー』は民族叙事詩『カレワラ』の世界にインスパイアされた曲をほぼ全編一人で録音した意欲作で、彼女らしいデリケートな演奏で、古い歌唱スタイルをアコーディオンでの表現に置き換えている。(*マリア・カラニエミの来日公演はアイスランドの火山灰によるヨーロッパの空港閉鎖の影響を受け、9月に延期)

マリアは名門シベリアン・アカデミーが83年に開講した民俗音楽科の第一期生だが、アカデミーの存在が伝統音楽界の隆盛の基盤となっている。60年代後半のフォーク・リヴァイヴァルが若い世代を育てられずに終わってしまった反省もあるのだろう。80年代後半以降はアカデミーが若い優秀な人材を次々に送り出すことで、音楽界を活気続けている。

この学校は古い音楽の研究と同時に音楽的冒険を奨励している。ハーモニカの4人組でジプシー音楽から日本のアニメ主題歌まで、あらゆる種類の音楽に楽しげに取り組むスヴェングのようなユニークなグループが出てくるのも、そういった校風ゆえに違いない。最近のスヴェングはショパンにまで挑んでいるそうだが、5月の「フィンランド・フェスト」での再々来日ではそれも聞けるだろうか。

ペリマンニとも呼ばれる伝統のダンス音楽がある。17世紀に中央ヨーロッパからスカンジナヴィア経由で伝わったものだ。北欧最大規模のフォーク・フェスティヴァルの開催地カウスティネンは元々伝統音楽の盛んな地域だが、20世紀前半にここでペリマンニの改革を試みる人たちが現れた。その中心がヤルヴェラ家である。その代々のフィドル一家のアルト・ヤルヴェラを中心に80年代初頭に結成されたのが、JPPだ。伝統のフィドル演奏に軽やかなスウィング感を加えたサウンドで、伝統音楽界を30年間牽引してきた。

そのJPPが11月に遂に日本にやってくる。真打登場にそれだけでファンは狂喜だが、実はそのうえダブルヘッダーなのだ。JPPの中核、アルトとティモ・アラコティッラがスウェーデン人フィドラー、ハンス・ケンネマルクとやっているノルディック・トゥリーもJPPに先駆けて10月末に再来日する。近く新作も届くが、ティモのハーモニウムの演奏を生で体験しないわけにはいくまい。

そして、そのヤルヴェラ一族の次世代を中心にノルウェーからも加わった注目のバンド、フリッグも「フィンランド・フェスト」でやってくる。 フィドル4本にドブロやマンドリンも聞こえてくる、ブルーグラスやアイリッシュの要素も積極的に取り入れた勢いあるサウンドが売りものだ。

スヴェングとフリッグに加え、「フィンランド・フェスト」に出演するもう1組は、ヴァルティナの黄金期を支えたアコーディオンとベースのデュオ、レピスト&レティ。彼らのジャンルを超えた自在な演奏も楽しみだ。
(五十嵐正)

FINLAND FEST2010-WORLD MUSIC SHOW CASE
5/28(fri)17:30open 19:30start
出演:スヴェング/レピスト&レティ/フリッグ
会場:JZ Brat
http://www.jzbrat.com/

 

 

 

□THE FIVE CORNERS QUINTET INTERVIEW

北欧を代表するクラブ・ジャズ・バンド、ファイヴ・コーナーズ・クインテットの司令塔トーマス・カリオにインタヴュー! 5月に発売となる初のライヴ盤『ジャズ・ヒート, ボンゴ・ビート!』や母国のジャズ・シーンについて語ってもらった。

──5月に「フィンランド・フェスト2010」の一環として来日されるにあたり、フィンランド・ジャズの現状についてお聞かせ下さい。

「フィンランドのジャズ・シーンは今とても元気だ。多くのミュージシャン達がダンス・フロア向きのものやハード・バップに影響された音楽をやっているよ。新しい流れとしてはダリンデオのValtteri Poyhonenが40年代のエリントン楽団を彷彿とさせるビッグバンドをやっているね」

──今回発売となるライヴ盤は、そんなフィンランドの熱い空気が伝わってきそうですね!

「このライヴ盤は古い映画館だった場所で録音したんだ。結果的に驚くほど素晴らしいものが出来上がったよ。全公演がソールド・アウトで、特に最終日は特に観客も熱狂的だったね。ほとんどのトラックはその日に録音した。皆のテンションが上がったのは、実は僕らが今年5月の日本公演以降は本国でライヴを行わないことになっているからだろう…」

── 本国でライヴを行わない!? 何やら意味深な発言が出てきたので、彼らの今後の動きに突っ込んでみた。

「ファイヴ・コーナーズQに関しては少しブレイクをとるよ。また次のオリジナルな音楽に向けてね。メンバー達も私も皆各々の計画がある。ユッカ・エスコラとティモ・ラッシーはそれぞれ強力なプロジェクトを始動しているし、テッポ・マキネンはJo Stance& The SBsと言うソウル/ファンク系のバンドをやるんだ」

──最近では須永辰緒の『クラブ・ジャズ・ディグス・ルパン三世』にも参加されましたね。

「須永氏からのアプローチでアイデアを聞いて気に入ったんだ。オリジナルのルパン3世の音楽から選んだメロディから作ったシンプルなアレンジだよ。とてもうまくいったと思う。私の新しいスタジオで録音してミックスした最初の曲だよ」

──それでは最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

「デビュー時から熱心にサポートしてくれて本当にありがとう。日本は僕らやRicky Tickレーベル・ファミリーにとってワン・アンド・オンリーかつ最高の場所だと思っています」

(大久保輝代)

FINLAND FEST2010 LIVE
5/29(sat),30(sun),31(mon)
出演:THE FIVE CORNERS QUINTET
会場:ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp