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ヨハン・ヨハンソン

公開
2010/02/22   20:36
更新
2010/02/22   20:42
ソース
intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)
テキスト
text : 池田敏弘(新宿店)

アイスランドの、〈ポスト・クラシカル〉をテーマに音楽を体現する最重要音楽家、ヨハン・ヨハンソン。アイスランドはムーム、シガーロス、ビョークなど非常に独創的なアーティストを多く生んでいるが、ヨハン・ヨハンソンは現在もっともその動向を注目される音楽家である。彼は英の老舗音響レーベル【Touch】よりデビュー。そのスタイルはエレクトロニカからオーケストラを用いたポスト・クラシカルまで非常に広範に及び、他ジャンルとのコラボレーションも数多い。('07年には霧の彫刻家、中谷芙二子とのコラボレーションの為来日)また、アイスランドに於ける重要な活動をフォローするレーベル【キッチンモーターズ】の創設、運営に携わる一方、彼の出自のパンクな一面も見てとれる、4人のオルガン+ドラムという独創的アンサンブル、アパラットオルガンカルテットでも活動する。

彼の最新作が4月に【Type】レーベルよりリリースとなる(元々は2009年アメリカツアーでのみ販売されていた作品)。本作はイギリスのアニメーション作家Marc Crasteの『Varmints』(第4回札幌国際短編映画祭作品部門グランプリ)のサウンドトラックで、オーケストラの非常に美しいアンビエンスに、エレクトロニクスやコーラス、ピアノの朴訥とした単音でのフレーズなどが織り合わされ、印象的な主題が展開されていく。

ビル建設、騒音などによって脅かされていく、動物たちが暮らす自然を守ろうとする動物たちの姿が非常に印象深い作品だ。その無垢な表情と、ヨハンの静謐で美しいオーケストラアンサンブルの対比がこの作品の独創性をさらに強めている。尚、YoutubeではMarc Craste監督所属のSTUDIO AKAがチャンネルを持っておりそこで作品の断片を見ることが出来る。

ヨハン・ヨハンソンの委嘱作品世界初演を含むコンサートが2月27日に行われるので、こちらもご紹介しておきたい。自身でレーベルを運営し、自己プロデュースに非常に長けているピアニスト、矢沢朋子による現代音楽を中心としたのソロピアノ公演だが、ジョン・アダムス、平石博一、レディオヘッドのピアノアレンジなど、矢沢ならではというか他ではありえないプログラムだ。

現在、〈ポスト・クラシカル〉のタームは先鋭的かつ柔軟な耳を持つ音楽家に無意識的に内包され、それは今、全世界的なシンクロニシティとして捉え得る状況である。それは例えば、アコースティックとエレクトロニクスの主従の尺度(またはバイオリズムとして)若しくはエレクトロニカ以降の耳で捉えるアコースティックのフェティシズムとしてそれは認識され得るが、何故今、〈ポスト・クラシカル〉なのか? このプログラムはその共時的動向を解き明かすひとつの明確な道標となり得るだろう。

 

『Absolute-MIX 矢沢朋子ピアノ・ソロ(〜現代音楽への誘い〜)』
2/27(土)19:30開演 会場:杉並公会堂小ホール
演奏曲目:ジョン・アダムス《チャイナ・ゲイト》/アルヴォ・ペルト《大都会への賛歌》/ルイジ・ノーノ《ソッフェルト・オンデ・セレーネ》/権代敦彦《無常の鐘》/トリスタン・ミュライユ《マンドラゴール》/レディオヘッド*arr.矢沢朋子《キッドA》/平石博一《ウォークマン》/キャロリン・ヤーネル〜世界初演《ラブ・ゴッド》/ヨハン・ヨハンソン《委嘱新作世界初演》【http://www.geishafarm.net