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JAZZ NEXT BREAKERS 2013

公開
2013/05/17   19:25
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

若手の台頭著しい国内のジャズ・シーンにおいて、存在感を増すのがここに紹介する3組のミュージシャンたち。『from here to there』が大きな評判を呼んだai kuwabara trio project 。菊地成孔に「ジャズの未来」と言わしめたものんくる。そして、弱冠20歳の日本で最もヤバいドラマー石若駿。今年は彼らに大いに注目してください!!

ものんくる

ギル・エヴァンスから脈々と受け継がれ、現代ではマリア・シュナイダー・オーケストラがその主流となるジャズ・オーケストレーションを擁するJポップ。と言ってみたところで、全然物足りない。加えて、子どもの頃に初めてみた映画『風の谷のナウシカ』の衝撃と、20代前半で出会ったキリンジのインディーズデビュー作で感じた違和感と衝撃と圧倒的な魅力が、ものんくるという凄い才能を真ん中にして手をつないでいる感じ。としても伝えきれていない。

ハイクオリティかつデリケートな作詞/作曲/アレンジと、音選びのセンスが抜群のウッド・ベースを聴かせる中心人物、角田隆太と、その難易度の高いアレンジを実現するバンドメンバーの高い演奏能力、そこに吉田沙良のグレッチェン・パーラーを彷彿させる難しいメロディとリズムをさらりと聴かせる歌唱力が加わるのだが、驚く事にメンバーの平均年齢が25歳以下という。プロデュースを務める菊地成孔に「ジャズの未来だよね」と言わしめた驚異のバンド。ブラジル音楽を内包した現代ジャズと宮崎駿の世界観が交わり、ときおり吉田美和や原田郁子にも通ずるJポップの魅力も垣間みえる。これがものんくる…んー、まだ消化しきれていないな。
(タワーレコード本社  押塚岳大)

ai kuwabara trio project 

ライヴ会場で販売していた自主制作盤に2曲を加えた実質的なファーストアルバム『from here to there』は、ミシェル・ペトルチアーニ、エスビョルン・スヴェンソン、アンソニー・ジャクソン、そして上原ひろみからの影響を公言する1991年生まれのピアニスト、桑原あいにとって名刺代わりの一枚だったのかもしれない。半年後の4月10日にリリースされた『THE SIXTH SENSE』からは、今作こそが実質的なファーストアルバムであるとでも言いたげな、彼女の気合いが伝わってくる。

トリオは『from here〜』で桑原と共同でプロデュースも務めた盟友、森田悠介(b)、ドラムは今作での加入となる今村慎太郎。アルバムのコンセプトはタイトルにある通り「第六感」。そのコンセプトを裏付けるように、CDJやシンセによるサウンドを挿入するなど、トリオの演奏にプラスアルファを加わえることで、自身によるコンポジションを発展させていこうとする意志が全編にみなぎる。『from here〜』が多くの人の心を掴んだのは、当時21歳の桑原あいの等身大のピアニズムの魅力ゆえだったろう。今作で彼女は成長した姿をみせてもくれるが、等身大の彼女はまだそこにいて、変わらぬ魅力を放つ。
(intoxicate編集部)

石若駿

ニューヨークではなく南青山でこんな鮮烈な演奏が繰り広げられていようとは! 複雑に絡み合いながらもグイグイ身体を揺さぶる波動を繰り出すピアノ・トリオのサウンド、そしてその中心にいるのはとんでもない存在感を放つドラム……彼こそが、弱冠20歳にして今日本で最も注目すべきドラマー、石若駿なのです! 日野皓正ら大物ジャズマンとの共演を重ね、TOKUや東京ザヴィヌルバッハのライヴでもプレイ。さらに人気アニメ『坂道のアポロン』においてドラマー千太郎の音と動きを担当し、もはやジャズシーンにとどまらないアーティストとして活躍しています。

東京南青山のジャズクラブ、ボディ&ソウルで収録されたこのライヴ盤は彼の多彩なテクニックとアイデアが散りめられたドラム演奏の真髄を見事に捉えております。音色は変幻自在に、推進力はパワフルに。そして彼とともに深くて濃い音楽を形づくるのは、片倉真由子の切れ味抜群ながら風格を感じさせるピアノに、ニューヨーク仕込みの腕利き境野慎一郎の揺るぎないベース。若き日本の精鋭達がシビれるほどカッコ良い音楽を創造して、ジャズシーンの最先端に立つ……これは聴き逃せるわけない!
(梅田NU茶屋町店   谷本真吾)