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連載/コラム

第1回:童貞ゾンビ編

連載: アイドルのいる暮らし

掲載: 2012年05月28日 13:00

更新: 2012年05月28日 13:00

文/岡田康宏(サポティスタ)



平日のライブ会場やショッピングモールで行われるイベントで、いつも見かける大人の姿がある。けっこういい歳してるけど、この人たちはいったいどんな生活をしているのだろう?

大人のアイドルファンは、アイドルファンであるだけではなく日常を生きる社会人でもある。お金も暇もある大人のオタクには、元気なだけの若者にはない深みと趣きがある。ライフスタイルとしての現場系アイドルファン、大人のオタクの遊び方とは?



今回お話を伺ったのは童貞ゾンビさん(仮名)だ。30代後半。会社員。世田谷区内に買ったマンションで同い年の妻、3人の子供と暮らしている。90年代のはじめ、ribbon(1989-1994 永作博美、松野有里巳、佐藤愛子の3人組)をきっかけにしてアイドルにハマった彼は、制服向上委員会で一推しのメンバーが卒業したのと同時に一度はアイドルから離れ家庭を持ったが、05年12月にAKB48を見て再びアイドルの世界に戻ってきた。

AKBファンとしては劇場オープン直後の05年12月から参戦。半年で100MVP(*1)を達成し、現在も現役で活躍するオリジナルメンバーの初年度の生誕祭企画にも深く関わるなどなど、初期AKBの劇場の空気をよく知る人物でもある。第三子が生まれたことで時間的な余裕がなくなり、今はJK21などを中心に月に1度イベントに足を運べるかどうかという状態(本人曰く「現役を退いた身」)だと言う彼に、これまでのアイドル遍歴や応援スタイル、家庭との両立などについて話を聞いた。
注*1 劇場に100回入場すると「MVP」として、Tシャツ(メンバーのサイン入り)、当日公演メンバー全員との写真撮影、優先入場)などの特典が得られる。200回入場で好きなメンバーとチェキ10枚を撮影できる200MVPもある。



自分がアイドルにはまるとはまったく思っていなかった



中学までは電車が2両編成、1時間に1本くるか来ないかみたいなすごい田舎に住んでいて。俺は地元に残りたかったんだけど、親の転勤で高校は東京の有名私大の付属高校に進学することになったんだ。みんな地元の学校にいくのに1人だけ東京の学校に出てきて、世界が違いすぎて。

鬱屈した高校生活を送っていたときに偶然テレビでribbonを見た。なんかすごいはまっちゃって、すぐにチケットを買ってコンサートを見に行って。昼の部を見たらすごく良かったから、その日のうちにダフ屋から買って夜の部も入って。高校生で初コンサートで初ダフ屋という。今、考えるとすごいよね。コンサートの会場は中野サンプラザ。アイドルのコンサートはその頃からサンプラザか厚生年金会館(2010年に閉鎖)か日本青年館かという感じだったから。

世代的にはおニャン子にはまった最後の世代くらいなんだけど、俺はおニャン子には全然興味がなかった。性的なものが強すぎて、あまりそういうのは好きじゃなかったから。だからribbonを見るまで自分がアイドルにはまるとはまったく思っていなかった。



アイドルが絶滅の危機に瀕していた時代



そのまま内部進学で大学に進んで、歌謡曲研究会に顔を出したら変な人ばっかりでしっくり来てさ。書き物は好きだったから、CDを聴いて感想を書いて同人誌を作ってというのをやっていた。俺自身はそれまでオタク的な趣味が全然なかったから自分のなかでは異常な世界に来たなって感覚はあったけれど、おかげで偏見もなかったから抵抗はなかった。クイックジャパンとか創刊号から買ってたし、今で言うサブカルとして見ていたのかもしれない。染まりやすい年頃にそういうのに触れて、それがずっと続いているみたいな。

制服向上委員会(SKi)に出会ってから、現場のおもしろみにはまっていったんだよね。90年代後半は現場以外の場所がなかったから、そうならざるを得ないんだ。当時はアイドル冬の時代。俺が大学3年か4年のころまで乙女塾の番組(週刊スタミナ天国)があったけれど、アイドルシーンというのがほとんど成立していなくて、もうほんとに絶滅の危機に瀕していた時期。おニャン子の反動でアイドルファンは気持ち悪いみたいなのが一番強かった時期だから。SPEEDとかはあったけれど、あれは別世界だし、おニャン子からモーニング娘。までぽっかり穴が空いていて、グループアイドルはTPD(東京パフォーマンスドール)とかSKiとか、そういう形でしか存在し得なかった。

ファン層は今で言うマノフレ(真野恵里菜のファン。年齢層高め)みたいな層が中心で、若いのはオレたちくらいだった。当時でいうピンチケ(*2)だよね。おニャン子でアイドルを卒業できなかった人たちと、80年代のアイドルを好きだった人が残っています、みたいな感じで。クイックジャパンを見てきたサブカルな人とか、オレみたいにブームに乗り遅れてポロッと入っちゃった人とか、そういうのは例外的な存在で。
注*2 中高生を中心とした若いアイドルファンを指す言葉。AKB劇場の中高生向けチケットがピンク色だったことから。



初めて行ったツアーがベトナムツアー



SKiはイベントに行ってなんぼのグループだったけど、99年のベトナムツアーに参加するまではファンクラブにも入っていなかった。当時から自分の中でのアイドルは歌って踊ってというのがメインだから、トークやMCはあまり興味ないし女の子のキャラクターが前面に出てくるのもあまり興味がない。だからライブ以外のイベントもそんなには参加してないかったんだ。それなのに初めて行ったアイドルのツアーがベトナムなんだよね。

今だと娘やぱすぽ☆も海外ツアーやっているけれど、現地でのライブも込みの海外ツアーってSKiのニューヨークツアー(1995)がはじめてなんじゃないかな。ニューヨークがすごくおもしろかったという話を聞いていて、今度はベトナムに行くというから、参加する人も少ないし現地で見なきゃ意味ないなと思って。頭脳警察のPANTAさんも同行してメンバーが5人、ファンが17人。PANTAさんのファンは2人いたから、SKiのファンは15人。

枯葉剤の後遺症を持っている子供たちの養護施設を訪問して、チャリティーライブをやって、彼らとサッカーをして遊んだり。それ自体もおもしろい経験だったし、ちょうど自分の推しの子が誕生日だったからサプライズパーティーをやって。ツアー客でその子のファンが2人しかいなくて、メンバー的にも他のファンの人的にも、オレが代表だろという流れだったから、ファンを代表して花束を渡したりして。今でいうところのTO(*3)扱い。当時はそういう概念はないけれど、それがすごい気持よくて。

認知(アイドルに顔や名前を覚えてもらうこと)っていうのは、認知されないような規模になってから出てきた言葉だから。当時は知られていないというのがありえない状況だよね。誰が誰推しかファンもメンバーもわかっていて、TOという言葉はないけれど、この子ならこの人というのはあった。当時は「えらい人」って呼ばれてた。
注*3 トップオタの略。そのアイドルのファンの頂点に立つオタクのこと。何が頂点だか明確な定義はない。



アイドルを離れ、奥さんと知り合う



大学卒業後は普通の企業に就職して、今も同じ会社で働いてる。当時、一緒に同人誌を作っていた仲間だったり、歌謡研の後輩なんかでもアイドル関係の仕事について、今もそういう仕事を続けている人は多いけれど、自分自身はビジネスが絡むと気持ちの中で楽しめなくなるんじゃないかというのと、すごく好きなジャンルだから、内側に入ったときに嫌いになったら嫌だなというのがあって。自分にはクリエイティブな才能がないというのも実感していたから一般の企業に就職したんだよね。

仕事は月金で時間もそんなに遅くならずに終わる感じ。今みたいに平日からイベントがある時代じゃなかったから、就職してからも土日は普通にイベントに行っていたし、それで普通に回せていた。金銭的にもそんなに無理するようなことはしていない。その頃から握手会はあったけど、ループ(*4)の概念もまだなかったし。
注*4 握手会で同じCDを何枚も買って握手券を複数もらい、何周も回ること。複数枚をまとめ出ししてその分、長い時間握手できる場合も。

初イベントがベトナムツアーでそういう感じだったから、ちょっとおかしくなっちゃって、ドップリハマってさ。でもその年の終わりに推しの子が卒業することになって。濃い一年だよね。そこで一回、5年ほどアイドルを離れたんだ。嫁さんと知り合ったのはその時期。奥さんはアイドル趣味には全く理解がない。俺はオタク趣味のある女の子は苦手だったの。趣味の友達としてはいいけれど、女性としては見ることができなくて。アイドルにはまっている時期は彼女を作ろうという気が全然なかったから、この時期じゃなかったら彼女とも始まっていなかったかもしれない。一度付き合い始めちゃえば両立はできるけど、スタートの部分は俺は無理だね。

保守的だから家庭が欲しかったし、付き合って1年半くらいで同棲してそれから1年半くらいで結婚した。奥さんのタイプと好きなアイドルのタイプはぜんぜん違う。これまで好きになったアイドルの顔のタイプとかもバラバラだし、誰かにこの子好きそうだね、と言われてもだいたい外れるね。


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