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Yellow Magic Orchestra『Live in San Francisco 2011 YMO』

カテゴリ
o-cha-no-ma ACTIVIST
公開
2012/03/28   12:48
ソース
intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)
テキスト
文/畠中実

エキゾティシズムを超えて31年ぶりの米公演

YMOのデビュー作はA&M傘下のホライズン・レコードより全米リリースされ、79年にはチューブスのフロント・アクトとしてロサンゼルス公演が行なわれている。YMOが音楽のみならず、あらゆる意匠にエキゾティシズムやオリエンタリズムを、ある意味意識的かつ戦略的に打ち出していた時期とは、彼らがアメリカをマーケットとして意識していた時期と対応している。一方、ファースト以降の音楽性の変化は、YMOの脱アメリカの過程ともいえる。81年には、『BGM』『テクノデリック』といった意欲的な問題作を続けて発表し、そこでは、まさにYMOに影響を受けたであろうヨーロッパのニュー・ウェーヴと同調するような作風や、アイロニカルでさえあったエキゾティシズムとは異なるアジアへの眼差しなどが見受けられるようになっている。歌謡曲路線も入った『浮気なぼくら』以降は日本語で歌われる曲も多くなっている。また、80年ワールド・ツアー以降は、そもそも、ライヴへの関心がだんだんと薄らいでいったということから、ワールド・ツアーも行なわれなくなっている。もともと卓抜した演奏技術を持つミュージシャンである3人であるが、80年代というさまざまな音楽スタイルが新しいテクノロジーとともに急速に変化していく時代にあって、ステージでの演奏よりもスタジオでの音楽創作に関心を移行させていた時期でもあるだろう。それゆえ、YMOとアメリカは疎遠になっていった。

YMOによるアメリカ公演は、80年のワールド・ツアー以来なんと31年ぶりのことだという。ステージは、寒色系の照明を基調にしたもので、演奏もいたってクールである。そのステージには80年ワールド・ツアーのステージと非常によく似ている。下段に細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の3人が、上段には、小山田圭吾、権藤知彦、クリスチャン・フェネスの3人のサポート・メンバーがいる。この演奏を円熟と言ってしまっていいのかわからないが。細野はヴァイオリン・ベースやマリンバも演奏し、権藤の管楽器やフェネスと小山田のギターなど生演奏の要素も多い。選曲はYMO入門篇としては非常にバランスがよいものだが、もっと通好みな曲も聴いてみたいという気にもさせる。その意味では、個人的に『テクノデリック』収録曲が続く箇所がうれしい。《TAISO》を歌う坂本は、もちろんメガホンで、そして痙攣している。