一部熱狂的なコレクターやDJの間で注目されていた和ジャズが2006年以降さまざまな雑誌等で特集されるようになり、かなりマニアックとされる〈和ジャズ〉の作品が数多く復刻されてきました。
今音楽は完全にボーダレスで聴く時代。年代にとらわれず、いい音源が紹介されることは嬉しい。そんな作品の中にはジャズ・ファンもハッとするものも多く、確実にジャズ・ファンの裾野を広げている。
1960年以降の日本の音楽は海外のミュージシャンに影響を受けながらガラパゴス現象ともいえる独自の進化を遂げています。美空ひばり、はっぴいえんど、ティン・パン・アレー、シュガー・ベイブ、サディスティック・ミカ・バンド、YMO等偉大なアーティストが、今の音楽に多大な影響を与えてきているように、ジャズに関してもセールス的な評価は別にしてそれらのポピュラー音楽と微妙にリンクする形で個性的な作品がリリースされ、多くのミュージシャンに影響を与えています。和ジャズの魅力はスター・プレーヤーが個性をぶつけ合うというよりはオリジナル曲をグループの音として追求しているということだと感じています。そこにアメリカやヨーロッパにない独特のグルーヴが生まれています。白木秀雄は神田明神の近くで育っている。あのドラミングはまさに祭囃子のリズム。日本人が持っている究極のリズムが見事に消化されており、当然日本人リスナーの潜在的にもっている音楽細胞を直撃する。また海外のリスナーにはまったく新しいジャズとして再評価される所以ではないだろうか。今回キングレコードの1960年~80年代の膨大なライブラリーから小川充氏のセレクトされたWax Poetics ジャパンコンプリードシリーズ『Mixed Roots』キングオブJP ジャズ 70's‐80'sは究極の和ジャズ・コンピレーションになっている。感度のいいアンテナをもったリスナーは和ジャズのクオリティの高さに改めて気付くハズだ。